SS5 噂の彼女−side誠治朗
卒業式の時間軸です。
実は個人的にとても好きな村上くんと風見くんのやいやい担当村風コンビ。
お気に入りのSSです。
今日は、高校の卒業式。
この制服を着るのも、この教室に通うのも、最後だと思うとなんだか少し名残惜しい。
…
かしこまった式を終え、最後のHRも終えた。
さて、そろそろ種明かしといくか…!
3年間、別に浅緋とのことは、隠してもいないけど、誰かに俺たち付き合っているんだなんていう必要も感じなくて。
なんだかんだ浅緋と付き合う前からの悩み事を聞いてくれていた村上と風見に、最後に言うことにした。
浅緋の許可は取ってある。
あいつら、結局最後まで無理に知ろうともせずに、秘密の彼女だ、逢瀬の君だなんだと好きなように言っていた。
「村風、俺の彼女、紹介していい?」
結局三年間クラスも同じで席が近かったし、小学生からの付き合いだというこいつらを、二人まとめて呼ぶのに村風コンビというのがうちの学年だった。
声をかけると、キラキラと目を輝かせて二人は近づいてきた。
「え、まじで!?」
「ついに!?」
こいつらはどんな時でも、なぜかものすごい息があっている…不思議だ。
ちょちょい、と手招きして、浅緋を呼び寄せた。
「こちら、噂の彼女」
「…どーも」
ちょっと不満そうな顔で、隣に並ぶ浅緋。可愛い。
「え…なに」
「八束…?」
「うん、俺の彼女」
にこっと、二人にもう一度伝える。
固まる二人。
「俺、お前の彼女になった覚え、一度もないんだけど」
不機嫌そうに、俺の顔を覗いてくる浅緋。可愛い。
「え、あれ…?」
「なに、冗談?」
「いや、俺の中では、誠治朗のほうが彼女だ」
言い切る浅緋。可愛い。
「あ、そこなんだ」
「え、そこ…?」
呆然としながら、しっかり突っ込みを入れる二人。
「悪かったな。慎ましい健気な背の低い女子じゃなくて」
あ、そういえば、こいつらの中では、そういう設定だった。
よく好き勝手あれやこれやと同じ教室で話していた。
浅緋とは席が離れていたから、聞こえていないと思ってたのに…。聞いていたらしい。
浅緋は俺より少し背が高い。そこがいいんだけどな。
「あ、彼女の方が背が高いパターンね」
「いや、八束はわりと慎ましいと思うぞ?」
二人の謎の掛け合いが始まった。
「いや、だから俺彼女じゃ…」
浅緋は、譲れないらしい。
俺は別にどっちでもいいんだけど。
「なんだよ!!尾浜、そういうことなら、もっと早くいえよ!!今日卒業だよ!?」
「全然仲いい感じなかったし…そもそもお前ら別々に昼休み出て行ってたじゃん!!」
「知ってたら八束とも仲良くなれたのに…尾浜ぁ!!」
あれ、そっち?
なんか、俺の想像と違う所を責められる。
「はぁ…よし、八束、ちょっとこれから飲みにいこうか」
「そうだな、飲まないとやってられねぇよな」
「や、まだ飲めないだろ…」
浅緋の肩をがしっと掴んで、風見。
それに乗っかる村上。
たじろぐ浅緋。
「日比谷ー!行くぞ!やけコーラだ!!」
「そうだ!トマト小僧、付き合いやがれ!!」
「んー?なんか面白そうだね」
のほほんとそれについていく兵助。
置いて行かれる俺…。
…あ、いやまずい。浅緋、外ではあんま…っ
「あ、ちょっと待て…!浅緋は…っ!!」
荷物を持って、急いで追いかけた。
追いつくといつの間にか浅緋は解放されていて、村風コンビはまったく…とやいやい言い合っている。
兵助は、それに付き合っていて、その少し後ろを浅緋が歩いている。
「浅緋、ごめん。こういう展開になるとは思ってなくて…」
慌てて浅緋に駆け寄ると、思いのほか表情が明るい。
「ん、大丈夫。無理して食わないし…お前がいるから」
「へ…?」
「お前と一緒なら、多分平気。なんか、そんな気がする」
「あ…そう?」
わ…笑ってる…。
「まあ、最後だしな。面白そうだから、俺も混ぜてよ」
あ…これは…
「浅緋、好きです…」
思わずそういうと、浅緋が笑い出す。
「ん、知ってる」
………好き。
「おいこら、そこの二人!!いちゃついてるんじゃねぇ!!」
「そーだ!!早く来い!!」
せっかく噛みしめていたのに、ふいに前を歩く三人に呼ばれる。
「ほら、行くぞ」
浅緋に手を引かれて、みんなの元へ走った。
その後、結局みんなで仲良くなったので、もっと早くに言えばよかったと思ったのは、また別の話。
ちょこっと裏話
本編最終話と、SS1のサプライズパーティーには、ちゃんと村風コンビも誘っていたんですが、二人とも都合がつかなくて…。
風見「絶対俺らも祝いたいから、別日にもう一回やろ!!」
村上「そん時写真見して!!絶対!!」
というやり取りを、しっかりしていたのでした。




