SS4 男の子の悩み事−side誠治朗
二人が付き合って二年目。高3軸
キスよりちょっと先に進むまでのお話。
三年生になって、浅緋と誠治朗は初めて同じクラスになりました。
壮馬は風見くん、颯は村上くんです!
浅緋と付き合って、二年になる。
俺は今、受験生にもなろうという時に、別のことで悩んでいた。
……浅緋と、キスより先に進まないのだ。
いいんだよ、キスだけだって十分嬉しいし、幸せだなって思う。
だけど俺も健全な男子高校生なわけで…。
「はぁ…」
「どした尾浜。何悩んでんの?」
「ついに振られたのか?彼女に」
「いや、違う……んー…はぁ…」
「尾浜、お兄さんがこっそり聞いてやる。どうしたんだ」
「そうだ、壮馬に聞いときゃ大丈夫だ、多分!」
※壮馬は風見くんの名前
村上と風見がいつものようにテンポよく話しかけてくる。
あ、そうか。風見…!
「誰にも言わない?」
「うん」
「ものによる」
「おい、話の腰を折るなよ颯」
※颯は村上くんの名前
「ごめんごめん。で、どした」
二人をちょいちょいと近くに寄せて尋ねる。
「初めてってどこでだった?」
「………尾浜からそんなことを聞かれる日が来るとは」
「尾浜、置いていかないでくれよ…どんどん先に行くな…泣」
「やっぱり聞くんじゃなかった…」
「あ、悪い悪い!俺は、彼女の家だった」
「彼女の家…。実家?」
「そうそう。たまたま親が旅行でいないからって」
「女の子のほうが積極的…」
たまたま後ろを通った兵助が餌食になる。
「日比谷、男子だけの内緒話に参加してくれ」
「ん、なに?」
「日比谷の初体験、どこだった?」
「待って…日比谷もお相手いるの?」
「んー、そうだねぇ。初めては確か…夏祭りだったかな」
「な、夏祭りだと…?!」
「やばいぞ壮馬、ちょっとお前もう…絶対日比谷に偉そうなこというなよ」
「あれ、颯も壮馬も何をそんなに怯えてるの?」
「兵助、あんまり二人のことからかってやるな」
「初めての冷やしトマトを食べた経験の話じゃなかったの?」
兵助の発言に、目をパチクリさせる二人。
「まじで日比谷…トマトが恋人なんだもんな」
「そうだった、聞くほうが野暮だったよ」
「なんか勝手に上げられて急降下しちゃったみたいだけど。なんだったの?結局」
「いや、尾浜が初体験の場所に悩んでいるらしくて」
「そうそう、割と付き合って長いんだろ?逢瀬の君とは」
「え、何その逢瀬の君って」
「こんな尾浜のために、毎日弁当を作って密会しながら愛を語らい合ってんだろ?彼女。
なんて慎ましいんだ…。きっと背が小さくてお淑やかな可愛い子なんだろうな。」
「ただ俺らは見たことないから、勝手に逢瀬の君って呼んでるんだ、尾浜の彼女のこと」
「ああ、そういうこと。いいね、なんだか秘密めいて」
「だろだろ?昼に会いに行くときの尾浜のほうが恋する乙女って感じだけどな」
「そんなに好きな人に出会いてぇ、俺も」
脱線のしまくりのしまくりで、結局風見が彼女の家だったことしか分かんなかった。
なんだかんだ言ってたけど風見に後からこっそり、
「ゴムは絶対忘れんなよ」と念押しされた。
あ、そうだよな、うん…。
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兵助との帰り道。
「いいな、お前はトマトがあるからすっとぼけられて」
「あれ、そういうこと言っちゃう?」
「あぁ、ごめん。割と本気で悩んでるんだ。
だってさ…付き合ってもう二年だよ。
こう少しさ、その…、次があってもいいんじゃないかとか、思うじゃん」
「ずいぶん赤裸々な話だけど、俺でいいのかな、それ」
「むしろ兵助に聞いてほしいんだけど」
「どこまで進んでるの?二人は」
「手繋いで、デートして、キスして…そこまで」
「そのキスはどういう…」
「普通のちゅーだよ。毎回それはそれは幸せになる」
それを聞いた兵助は、ちょっと笑う。
「…それなら別に急がなくてもいいんじゃない?」
「そう…かなぁ…」
確かに急いではいない。タイミングだって分かってる。
だけどさ、なんかこう…実感がほしいというか…
うーん。
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その翌日。昼休み
「何悩んでるんだ、誠治朗。顔がひどいことになってるぞ」
いつものように昼飯を食べて、ちょっとだけ二人の時間。
木下先生は、なんとなく分かっているようで、前みたいにお茶を持ってきてくれるときはプレートになんかお茶のマグネットがつくようになった。
多分、お互いのためなんだと思う。ありがたい。
「浅緋がちゅーしてくれたら直る」
「はぁ…?…ちょっと下まで屈んで」
「なんでよ」
「外から見えたらまずいだろ」
「あ、そうか」
机の陰に隠れて座る。
ん、と浅緋に抱き寄せられる。
「んで、キスでなおるんだな?」
「うん、なおして」
きゅっと目を閉じて、待つ。
浅緋が近づく気配が、する。
頭を支えられて、唇が重なった。
いつもはわりとツンツンしてるくせに、この瞬間だけは、ものすごく大事にされてるのが実感出来る。
それも、ほんの数秒のこと。
もう少し…してほしかった。それが本音。
「誠治朗…足りないんですか?」
「まあ…はい」
ふっと笑って、またぎゅっと抱き寄せられる。
「お前は俺がどれだけ我慢しているか知らないんだな」
「え、しなくてもいいのに…」
「…お前はほんとに…」
突然、キスの雨が降る。
おでこに、眉間に、まぶたに、頬に、耳、鼻の頭、唇。
「ちょっと一回覚悟しろよ?」
覚悟とは…
そんな心の準備なんてする暇はくれなかった。
いつもは触れるだけの唇…のすき間から浅緋の舌が入り込んでくる。
驚いて浅緋を見る。
そのまま、俺の舌を捕まえるみたいに二人の舌が絡んだ。
口の端から唾液が、こぼれる。
「んっ。んー」
浅緋が、ギブアップした俺の口元をハンカチで拭いてくれた
肩で息をする。
「俺の本気、こんなんじゃないから」
潤む瞳で、目がかすむ。
「この先はさ、もっと、ゆっくりでもいい。
まずはこれに慣れるところからだ。誠治朗」
どうやら、兵助あたりから漏れたな。
初めての場所、なんかより
もっと前に、一歩大人のキスを覚えてしまった。
どうしよう…もっとしたい。なんていったら、怒るかな。
「…その顔で、午後の授業出られないな」
「え?」
「ちょっと落ち着いてから戻れよ、すぐは戻んな、絶対に」
そう言い残して、浅緋はさっさと片付けて教室に戻ってしまった。
午後の授業の予鈴が鳴る。
教室へ戻ると
「おかえり、尾浜」
「あれ、なんか顔赤くないか?大丈夫?」
「熱でも出たか?」
「いや、全然なんとも」
無意識のうちに、浅緋を見るとなんだか少し笑っていた。
「やっぱ熱あんじゃないのか尾浜」
「…大丈夫」
その日から、とりあえず、この悩みはなくなった。
…というより、悩んでいる暇がなくなった。
浅緋の本気に俺が追いつくまで、わりと…大変、だったから…。
ちょこっと裏話
①男子高校生っぽい会話になってますでしょうか…。
村上くんは彼女まだいません。
ので、だいたい、置いてくなよとか羨ましいとか、そういう発言してるほうが村上くんです笑
②高校生ってなにそれ…みたいなあだ名つけたりしません…?っていう発想から生まれたのが逢瀬の君です…笑
③兵助は浅緋に何も言ってません。
同じクラスなんだから、席が離れてても…ね?




