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SS3 初めてのお出かけデート

前回の後日です。

高1軸。


デートの約束をした日のあと。

その次の日曜日に映画に行くことにした。


…何着ていけばいいんだ?

あまり外出をしないため、改まってデートとなると

何を着たらいいのか分からない。

…これか?こっちのほうがいいか…?


コンコンッ


「浅緋、ちょっといい?」

母さんだ。

慌てて鏡から離れて返事をする。

「どーぞ」


「あのね、明日の…あら、どしたの?こんなに洋服並べて」

「あ…その…日曜日、誠治朗と映画に行く約束して…何着ようかと思って。あんまり…出かけないから…」


「いいね、映画!私もたまにはお父さんと映画デートでもしようかしら…。誠ちゃんなら何着ても似合うねって言ってくれると思うけど、お母さんはそれと、それの組み合わせがいいと思うかな」


「これ?」

「うん、どうかな?」

「ああ、いいかも」

「ふふ、ちょっとは役に立ったかな。あ、そうそうあのね、明日お母さんちょっと職場の人とご飯行くことになったから、お母さんの分はいらないよーって言いに来たの」

「あ、そっか。わかった」

「うん、よろしくー」


なるほど、これなら気合入りすぎてないし、かと言ってラフすぎなくていいかもしれない。

人の意見も聞いてみるものだ…。


-----------------------------------------------------------------


そして迎えた日曜日。


「お待たせー!」

待ち合わせ場所に、ギリギリに着いた誠治朗。


「ごめん、何着ようか迷ってたらギリギリになっちった」

あ、誠治朗も同じこと考えてたのか。


いつもうちに来る時はだいたいゆったりとした服で来ることが多いが、今日は珍しく黒のスキニーに、淡いブルーのシャツを羽織ってる。


「似合ってると思う」

「ほんとー?悩んでよかったー!決まらないから琴音が選んでくれたんだ」

「なるほどな」

琴音が選んだなら、いつもと少し違うのも頷ける。


「浅緋…いつもよりなんかちょっとかっこいいな」


「そりゃどーも」

悩んだ甲斐があったらしい。


「よし、んじゃ行くか、浅緋」

「ん」


張り切る誠治朗に、手を差し出す。


「ん?」

「今日、デートだから」

「…!いいの?」

「嫌ならもうしない」

「する!繋ぐ…!!」


我ながらものすごく素直じゃないなと思う。

…でも、多分こういう風にしたら、喜んでくれる気がして。

…俺が、そうしたいのもあるけど。


−−−−−−−−−−−−−−−−


映画は、スパイ物のアクションにした。

誠治朗がポップコーンを買ってくる。

「映画と言えばキャラメルポップコーンだよな!」

「そうか?」

「うちはそうなの!楽しみだな」


待ち合わせ場所からここに来るまで、心なしかいつもよりテンションが高いのがわかる。

本当に楽しみにしていたんだとわかって、なんだか安心した。


映画館なんて久しぶりだ…。

座席に座って、流れている予告を観る。


「浅緋、これ面白そう」

「そうだな」

「これ公開されたらさ、また一緒に来ような」

「…そうだな」


次も一緒に来てくれるんだ。


「ポップコーン、こぼすなよ?」

「大丈夫だよ、いくつだと思ってるんだよ」

「いくつになってもこぼす時はこぼす」

「……気をつける」


しばらくして、本編が始まった。

中々引き込まれる。冒頭から、アクションが派手で面白い。

誠治朗は…

ふと、隣の誠治朗を見ると、視線はスクリーンに釘刺しで、少し口が開いている。

俺の視線に気づいたのか、誠治朗と目が合う。


「どした?」

小声で話しかけられた。


「口、開いてる」

「あ、恥ず…っ」

口を押さえて恥ずかしそうにしながら、誠治朗はまたスクリーンに視線を戻した。


…そこから、実は話があんまり入ってこなくて。

つい、隣の誠治朗を見てしまっていたから。

楽しそうに笑ったり、感動するシーンは涙ぐんだり、突然の爆発音にはビビったりして、誠治朗を観ている方が面白かった…。


終映後


「面白かったなー!」

「ああ、そうだな」

ほとんどお前をみてたなんて…ちょっと言えない。

「あ、また観る約束、忘れんなよ?」

「覚えてるよ」

「それならいいけど」


ちょっと満足そうな表情をしている。


「あ、そうだ。浅緋、ちょっと見たいものがあるんだけど付き合ってよ」

「ああ、構わないが…」


一緒に来たのは、ショッピングモールの中にある映画館だ。

まだ夕方にもなる前だ。中の店をみて回るのもデートらしくていい気がする。

誠治朗は、フロアマップをみて、目当ての店を探している。


「…あった。2Fだ。下りよう」

「ん、わかった」


2Fに下りて、少し歩くと、誠治朗はある店の前で立ち止まった。

ここは…キッチン用品の店だ。


「何を買うんだ?」

「ん?エプロン」

「…エプロン?」

「そう。いつも浅緋のとこ行くとさ、エプロン貸してくれるじゃん?浅緋の借りるのも好きだしいいんだけど、俺用のやつ、置いてもらいたいなーって思って」


…そんなことを考えてたのか。

エプロンならうちにいくつかある。

エプロンをすると、料理をする切り替えが出来る。初めのうちはまだ小さかったし、汚れないようにと母さんが用意してくれていたが、今では俺の必需品だ。


毎日何かしら料理はするので、母さんが替えがきくようにと言いながら、楽しそうに買ってくる。

そのうちの1枚、デニム生地のシンプルなものを、よく誠治朗に貸しているのだ。


「ここならあるかなって、ねーちゃんと琴音が。あとさ、浅緋キッチン用品見たら楽しいかと思って」

…俺のことも考えてくれていたのか。

「はいろ!」

「あ、うん」


中に入ると、様々な調理器具が売られていた。

あ、これ初めてみた。

これは…あったら便利そうだな…。

つい、目に入るものに見入ってしまう。


「ここにきて正解だったみたいだな」

「え、あ、ああ」

「浅緋、楽しそうにしてる」

「そ、そうか…?」

「うん、俺すごい嬉しい」


にこにこと笑う誠治朗に、思わず見惚れそうになった。

まさか、こんな風に楽しんでもらえるとは思ってなかった…。


「俺もちょっとエプロン探してくる」

そう言って、少し離れていった。

一人で見て回ってみるが、先ほどよりなぜか心が躍らない。

…あいつと見てたほうが楽しい。

そう気づいて、誠治朗を探すことにした。


「あ…いた」


真剣にエプロンを選んでいる。


「あれ、浅緋よかったの?」

「ああ、誠治朗と一緒のほうが落ち着く」

「…!そっか!」

「どれで迷ってるんだ?」

「うん、これとこれ」


誠治朗が悩んでいるのは、グリーンの生地に、茶色の結び紐がついているものと、デニムの生地のもの。

俺のより、少し明るいブルーの生地だ。


「どっちもしっくりきてるんだけど、浅緋ならどっちがいい?」


俺なら…


「…こっち」


デニムの生地のもの。


「あ、こっち?…これ着けたらさ、浅緋とおそろいだな」


…同じことを考えているらしい。


「んじゃこっちにしよ。会計してくる」


会計に向かおうとした誠治朗の腕をつかんだ。


「わ、どした浅緋。やっぱりあっちのほうが似合う?」

「いや…俺が買う。それ」

「え?なんで」

「…プレゼントさせてほしい」

「………あ、そうなの?」

「うん」

「…さんきゅ、んじゃお願いします」


嬉しそうに微笑んで、手に持っていたエプロンを渡された。


「んじゃ俺、ちょっと別の棚見てきていい?」

「あ、ああ」


レジに向かって、店員に渡す。


「あの、プレゼントにしたいのでラッピングしてもらえますか?」

「かしこまりました」


包んでもらっている間、誠治朗を目で探すと、何か手に持っている。あれは…さっき俺が見ていたものだ。


「お客様、お待たせいたしました」


手提げの袋に入れてもらい、受け取る。

あいつに渡す初めてのプレゼント。


「あ、浅緋、ちょっとこれ買ってくるから入口で待ってて!」


そう言うと、誠治朗はレジに向かった。

少し待っていると

「お待たせ!行こ!」


俺の手を取って歩き出した。


「ここの下にあるアイス屋のソフトクリームがうまいからさ、テイクアウトして食お」

「あ、ああ」


誠治朗の勧めでソフトクリームを買って、ガヤガヤしている場所から少し離れた壁際で、並んで食べる。


「あ、うまい」

「だろ?でも早く食べないと溶けるの早いんだこれ」


二人で少し急ぎながら、無言で食べた。

相変わらず、誠治朗は美味そうに食べている。


「久々に食べたけどやっぱりうまかったー!」

「よかったな」

「付き合ってくれてありがとな」


礼を言うのは俺の方なんだが…。

フードコートなら座って落ち着いて食べられただろうに。


「俺こそ、ありがとう」


先程包んでもらったエプロンを渡す。


「ありがとう!浅緋から食べ物以外で初めてのプレゼントだな。嬉しい!」


本当に嬉しそうにしてくれる。

それだけで、良かったと思った。


「これ、俺から」


誠治朗から小さな紙袋をもらった。


「さっき熱心に見てたからさ、良かったら使って。そんでまたご飯作ってよ」


「ありがとう…」


「よし、そろそろ帰るか。浅緋んちでご飯食べてもいい?」

「…いいのか?どっか食べて帰ったり…とか」

「いいよ。ちょっとずつにしようよ。それに、なんか浅緋が作ったご飯が食べたい」


誠治朗が俺の手をとって歩き出す。


「…そっか」


「今日、デート楽しかったな」


来てよかった。

こいつのこんな嬉しそうな顔が見られたから。


夕暮れの街を二人並んで、歩いた。

初めてのデートの帰り道…


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