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あなたとなら毎日-本編最終話-side誠治朗


浅緋と暮らし始めて1年が経った。

二人で暮らし始めて、大きな変化は、浅緋が以前より甘えてくれることが増えたこと。


仕事で疲れた時、前はどちらかと言うと料理を作ることで解消していた印象があるし、そういう時はありがたく一緒に過ごして沢山食べることにした。それが一番、いいと思ったから。


だけど、変わらない面もありつつ、疲れた時は「疲れた」と言ってくれる。

それだけで十分嬉しかったし、俺なりに思いっきり甘やかした。


それから、浅緋からもらったものとは別に、二人でペアリングを買いに行った。

その…いわゆる、結婚指輪として。


浅緋に提案した時は驚いていたけど、珍しく帰りに飲めない酒を飲むくらいには嬉しかったみたいだ。

料理をする時は汚したくないから、と大事にカウンターの上に置いて、時々眺めてにこにこしているのをこっそり、何度か見かけた。

浅緋が喜んでいるなら、なんだって嬉しい。


そんな、ある秋のこと。

お互い、週末は休みで、いつものように家でのんびり…と思っていたら、

「誠治朗、今日ちょっと一緒に出掛けないか」

なんて誘われた。


断る理由なんてない。二つ返事で頷いて、準備をした。

「どこ行くの?」

「ま、行ってからのお楽しみ…かな」

「え、どこだろ…」


思わず浅緋の顔を覗き見る。

これは、何か企んでいる時の顔だ。


「俺、怖い映画は無理だよ」

「え、違う違う。そういうんじゃない」

「んじゃなんだよ」

「いいから、黙ってついてこい」

「え、やだ惚れちゃう」

「…すでに惚れてると思ってたんだけど?」

「…そうでした」


そんなやり取りをしながら、浅緋についていくと、小さな写真撮影スタジオに辿り着いた。


「…ここ?」

「そう」


中へ入ると、出迎えてくれたのは、見知った顔だった。


「え…未來(みらい)?」

「や、いらっしゃい」


未來(みらい)は俺たちの大学で仲の良かった友達。

本が好きで、穏やかでとにかく優しい。写真が好きなのは知ってたけど……。


「今日は、素敵な一日になりますように、精一杯お手伝いさせてもらうよ」

「どういう…」

「じゃ、準備してもらおうかな。崇彦(たかひこ)さん、お願いします」

「はいはーい。ヘアメイクとスタイリストを担当する斉藤崇彦です!さ、こちらへどうぞ~」


浅緋を見ると、楽しそうに行って来い、と合図する。


「俺も準備してくる。あとでな」


訳が分からないまま、ドレッサーの前に座らされ、されるがまま、丁寧にヘアメイクをされる。



「あの、俺何も聞いてなくて…」

「うんうん、そうみたいだねぇ」

「これ、なんなんですかね」

「大丈夫、カッコよく決めて、浅緋くんのこと驚かしちゃおう!」



なんだか会話になっていないような…。

ヘアメイクが終わると、これを着てね、と渡されたのは白いタキシード。

なんとなく、わかったような気がする。


「それ、きっと似合うよ」


斉藤さんにそう言われて、思わず頷く。

そうして、着替え終わった俺は、スタジオに案内された。




「お、やっぱりそれよく似合ってるな」


そこで待っていたのは、シャンパンゴールドのタキシードに包まれた、浅緋だった。


「…どうしよう、俺泣きそう」


「こら、撮影の前に泣くな。もう少し我慢してくれ」




「浅緋ってば素直じゃないんだから。似合ってるよ、誠治朗!」


浅緋の後ろから、未來がカメラを持って出てくる。


「今日は二人の結婚記念日って聞いてね。ちょっと協力させてもらったんだ」


結婚記念日…。そんな風に思ってくれてたんだ。


「…まあ、無事に1年過ごせたし、記念に何か残したくて」


「どうしよう、やっぱり泣きそう」


泣きそうな俺を楽しそうに撮影しだす未來。


「笑顔のとことってくれよ、未來…」

「いいじゃない、自然なところも撮っておきたいんだよ」



「さて、そろそろいいかな。そこに並んで」


浅緋とふたり、並んで立つ。



「んー緊張しなくて大丈夫だよ。二人とも表情がかたいなあ」

「そうか?」

「そうだよ、んーそうだなあ、このまま何枚か撮って、後は普通に話してて大丈夫だよ」


そういった通り、未來は少し緊張したままの俺たちを2、3枚撮ったあと、少し画像を確認し始めた。




「お、二人ともかっこいいじゃん」

「よ!」


未來の後ろから、これまた聞きなれた声が近づいてきた。



「…!!兵助!優!!」

「お邪魔かな、と思ったんだけど、楽しそうだから来ちゃった」

「なんか…俺泣きそうになるんだけど、誠治朗」

「え、あ…え?」



さらに慌てる俺を見て、笑う浅緋。



「ふふ、呼んで正解だったね、浅緋」

「ああ、そのようだ」



後から聞いたら、浅緋もだけど、俺が絶対顔が強張ってしまうだろうと思って、緊張を解す役目として兵助と優も呼んでくれていたらしい。


「こうやってみると、お似合いだよね、二人」

「俺らも一緒に撮ってもらう?兵助」

「んー、今日は悪いから、また今度お願いしようよ」

「それもそうだな!」



二人のおかげで、緊張は解れて、わりとスムーズに撮影は済んだ。

着替えが終わり、家に帰るかと思いきや、まだ付き合ってほしいと言われる。



「未來、また」

「うん、またね」

「あ、未來、今日はありがとう!」

「うん、いい日になるよ、きっと」


確かに、すごくいい日だけど…いい日になるよ…?


兵助と優にも声をかけて、スタジオを出る。


「今度はどこに」

「誠治朗が喜ぶところだよ」

「…どこ?」

「まあ、楽しみにしてろ」


まったく行き先を教えてくれない浅緋。

分からないまま、辿り着いたのは、落ち着いた雰囲気の小さなカフェ。



「よくお世話になっている人がやってる店なんだ」

「へえ…」


浅緋に手を引かれて、中へ入る…と


「いらっしゃい!!待ってたよ!!」


中には、うちの家族と浅緋の両親。

兵助と優、未來、先ほどメイクをしてくれた斉藤さん。

それから…


「え、木下先生!?」


「おう、久しぶりだな、尾浜」


「さて、主役が到着したことだし、始めましょうか」


目をぱちくりさせて、浅緋を見る。


「みんなに協力してもらってさ、サプライズパーティーをプレゼント」


「浅緋ぃ…だから俺泣いちゃうって…」

「もう泣いてもいいぞ。まあ、それも未來に撮ってもらうけど」

「そんなぁ」


「誠ちゃん、もう泣いてんの?早すぎるよぉ!私まで泣いちゃうじゃん!!」

「兄ちゃんあんまり泣くイメージなかったのに。泣くんだね」

「誠治朗、ほらこっち来なさいよ!ねーちゃんせっかくきたんだから!」



「浅緋、まずは乾杯した方がいいんじゃないか」

「あ、そうだね。みんな飲み物決まってる?」



こうして、我が家の結婚1周年記念日のパーティーが始まった。

みんな笑顔で、すごく楽しんでいて。

いつの間にか、浅緋と父さんは仲良くなっていて楽しそうに話している。



木下先生に話しかけると

「八束から連絡をもらってな。二人とも、幸せそうでなによりだ」

少しだけしわの増えた目尻がくしゃっとなって、豪快に笑う。

変わらない、先生の笑顔。



「誠ちゃん、誠ちゃん」

ふいに琴音に呼ばれて耳打ちされる。


「琴音このまえ、じろちゃんに好きだよって言われたの」

「え、じろちゃん…ってあの宗二郎?」

「うん。なんか…ずっと好きだったんだって」


「ああ、そうだろうな…」

「え、誠ちゃん、知ってたの?」

「なんとなく、そうかなって」

「でも琴音、まだ自分も同じ気持ちかわかんないから、ちょっと待っててって言ったらね」

「うん?」

「じろちゃん、それなら毎日好きって伝えるよ、って毎日、ほんとに毎日言われるから、ちょっと困ってる」

「おお、やるな、宗二郎」

「笑い事じゃないんだけど!真剣に悩んでるのに」

「いいじゃん。いっぱい悩んで、答えてあげな」

「…うん。そうする」


そんな風に、みんなと色んな事を話して、楽しく過ごして、あっという間にパーティーはお開きとなった。


-----------------------------------------------------------------


家に向かう帰り道。


「どうだった、今日は」

「本当に、何から何まで驚く、楽しい一日だったよ。ありがとう、浅緋」

「それは良かった。考えた甲斐があったよ」

「…いつから考えてくれてたんだ?そんな準備とか…全然…」

「んー、結婚した日かな」


「…え!?」

「写真に残したいな、と思ったのはちょうど1年前。未來に相談して、スケジュール調整してもらって」

「そ、そんな前…」

「未來、あれでも売れっ子のカメラマンだからな。それから、まあ撮影だけじゃなく、楽しく食事を、と思って考えてたら、ちょうど中野先輩に会ってさ。貸切にしてくれるっていうからお言葉に甘えて」


中野先輩は、高校の先輩。先ほどのカフェのオーナーで、ずっと料理を作ってくれていた人。

バレー部のセッターで、キャプテンもしていた人だ。


「後はみんなに聞いたら喜んで参加してくれる…っていうからうまくいったわけだ」


「そう…だったんだ」


「あれ、もしかしてなんかまずかったか?」


「ううん。そんなに考えてくれてたのに、俺もらってばっかりで…」


「…そんな顔しないでくれよ。お前に笑ってほしくて考えたんだ。それに、誠治朗からは、こんなんじゃ返しきれないほど、毎日沢山もらってるからな」

「え、何を…?」


ふいに浅緋が立ち止まる。


「誠治朗、今日俺がみんなと一緒に楽しく食事をできたのは、お前のおかげだよ。10年前、出会ってなかったら、こんな風に楽しいなんて思うことはなかった」

「そんな…」


「そんなこと、ある。あの日、声をかけてくれて、一緒に過ごすようになって。家でも外でも、苦しいと思っていたものがこんなに変わった。それに、毎日、毎日、美味しそうに食べてくれる誠治朗のことが、心の底から好きなんだよ」



「浅緋…」

「結婚して、1年だけど、出会ってからは10年。これから先も、毎日、隣で笑っていてほしいし、一緒に生きていきたい。それくらい、大好きなんだ。…伝わったか?」

「うん、うん…ありがとう…浅緋」


「今日はよく泣くじゃないか。うちの奥さんは」

「え、俺が奥さんなの?」

「違ったか?」

「…そうかなあ」

「そこはうんって言っとけ。かっこつかないだろ」

「…いいじゃん。何もしなくてもかっこいいんだから」

「なっ…」

「さ、帰りましょうか、俺の旦那様」

「…はいはい」



暗がりでもよくわかるくらい真っ赤な顔した浅緋と、歩きだす。

俺も、これからも毎日、隣で笑っていたい。

ずっと、君の隣で…。


本編はここでおしまいです。

読んでいただきありがとうございます。

異世界設定ではないので、お話の中の"結婚"として言っているのは、二人が一緒に歩んでいくと決めたことです。日本の法律上は、難しい…というのが現実です。悪しからず…。


この後はサイドストーリーやらなにやら、更新していきたいと思っている所存です。

とにかく、訳ありな浅緋と、それを救い上げた誠治朗、

それから、それぞれの家族とのお話が描きたかったので、書き上げられてとても満足しております!

ありがとうございます。



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