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琴音と仲直り、から八束家へご挨拶-side誠治朗


数日後、久しぶりに浅緋の元へ向かった。

琴音を連れて。


「浅緋兄ちゃん、ごめんね、いっぱいひどいこと言って」

「ううん。俺こそごめんね、大好きな兄ちゃん独り占めにしちゃって。また仲良くしてくれる?」

「うん!あ、そうだこれ…」


琴音が浅緋に手渡したのは、あの日渡そうとしていたエプロン。


「これ、俺に?」

「私が作ったの。よかったら使ってくれる?」

「わ、すごい!エプロンだ!琴ちゃん、すごいこれ!」


浅緋は早速着けてくれた。

淡い緑の生地の胸元に小さく刺繡がしてある。ポケットもついていて機能的だ。


「どう?似合う?」

「うん!似合う!!」

「誠治朗、どう?」

「似合ってるよ、すごく」

「琴ちゃん、ありがとう!大事に使うよ!これで昼ご飯作ろうかな。何がいい?」


二人仲良くキッチンに向かう。

よかった。勇気を出して。


二人は仲良く料理を作り出す。

いつも使っている浅緋のエプロンを琴音に着けて並ぶ姿は、初めて浅緋の家で陽光とプリンを作っていた場面となんだか重なって見えた。


あの日、子供がいたらこんな感じだろうか、なんて夢見たなあ。

…浅緋は一人っ子だ。俺と一緒に、ということはつまりそんな夢は絵空事でしかない。

ぼーっと二人を見ていると、琴音に

「誠ちゃん!手伝わない人には、浅緋兄ちゃんは渡しません!」

「え、いや待って!それはだめ!」


急いで手伝いに向かうと琴音はケタケタ笑っているし、浅緋はどうやら照れて、耳が赤くなっていた。


-----------------------------------------------------------------


浅緋の家には、二人で挨拶に向かうことにした。

次の週末なら空いているから、是非遊びに来て!と。



「浅緋、やっぱりこの服変じゃないか」

「何回見ても変じゃないよ。大丈夫だって」

「やっぱりスーツ着たほうが…」

「いいよ、あんまりかしこまって行くと余計に緊張するだろ」

「だってさ…」


つい先日まで、”よく知っている仲だし大丈夫だろう”なんて高を括っていた。

自分がこんなに緊張するとは考えてもなかった。

日程が決まってから、毎日着る服をとっかえひっかえし、手土産を確認し、眠れない日が続いた。


前日、見かねた浅緋が一緒に寝ようと言い出し、半ば強制的に布団に入れられた。

浅緋の規則的な心音が、妙に心地よくて、久しぶりに朝までぐっすり眠ることができた。


結局、いつもより少しだけカチッときめて、八束家へ向かった。


インターホンを押して、ふうっと息を吐く。


「あ、おかえりー。今開けるね」


ガチャッ と扉が開く。


「お帰り!待ってたよー!あれ、なんか今日いつもより男前ね、誠ちゃん」

「あ、はい!ありがとうございます」

「…?ほら、お父さん首長ーくして待ってるから、上がった上がった」


リビングに入る瞬間、浅緋も少し息を吐いたのが分かった。



「お帰り、二人とも。待ってたよ!」


いつもどおり、にこやかに出迎えてくれるおじさん。


「あれ、誠ちゃん、なんかいつもと雰囲気違うね」

「あ、はい。今日は、ご挨拶をさせてほしくて」

「挨拶?」


「あら、んじゃとりあえず座ろうか。お茶だけ入れてもいい?」


おばさんは相変わらず優しくて、少しだけ緊張が解れた。


「さて、今日は何の挨拶をしてくれるのかな。この前言ってた大事な話?」

「あ、うん。そう。大事な話」

「…なんとなくそうかなぁって思ってるんだけど、ちゃんと浅緋から聞きたいな」



二人とも、穏やかに、でも確実に話を聞く体制になったことが分かる。



「もしかしたら、わかってたかも知れないけど、俺たち前から真剣に付き合ってきて。お互い、就職もして、生活も安定してきたし…その、一緒に住もうと思ってる」

「…うん」

「ただのルームシェアじゃなくて…。誠治朗と、これからも一緒に居たくて。これから…家族になります」


なります、そう言い切ってくれたことが嬉しくて、思わず泣きそうになる。


「そっか、…そっか」


「なんか、こっちが緊張してきちゃうね、お父さん」


おじさんは、深く頷き、おばさんは今頃そわそわし始めた。


「浅緋の気持ちは分かった。せっかくだから、誠ちゃんの気持ちも聞かせてくれる?」


就職の面接なんかより、ずっと緊張する。


「はい、俺も浅緋と同じ気持ちです。浅緋は、初めて会った時から料理がうまくて、気も遣えて、尊敬するところも、見習わなくちゃいけないと気づかせてくれることも沢山あって。時々、ひとりで悩みすぎることがあるから、そこは心配なんですけど…そういう時、そばで一緒に悩んで、二人で、乗り越えていきたいと思います。それに、なにより、俺がずっと一緒に生きていきたいです。その…息子さんを、僕にください!」


言い切って、頭を下げた。


少し、沈黙が走る。


「誠ちゃん、そんなに心配しないで大丈夫だよ。顔あげて」


おじさんが、声をかけてくれる。

恐る恐る顔をあげると、涙ぐむ二人の姿があった。



「反対なんてするつもりは、元々なかったんだけどね。誠ちゃんは初めてうちに来た時から、変わらない…本当にいい子だね。ありがとう」

「あ、あの…」

「まさか、本当に息子さんをくださいって言われると思わなくて、おばさん感動しちゃった」

「誠ちゃんのおかげで、うちの家族はこうして食卓に座ることができているんだよ。わかってくれてると思うけど、時々抱えすぎる子だから、隣で一緒に抱えてあげてほしい」

「そうそう、誠ちゃんのことは、もう一人の息子だって思ってるから、今までみたいに、いつでも遊びにきてね。またみんなで一緒にご飯食べましょう」



余りにも優しい言葉に、思わず涙がこぼれる。

隣から、ハンカチを渡してくれる浅緋を見ると、浅緋も泣いていた。


「あらあら。今日はみんな泣き虫さんね」




緊張の挨拶は無事に終わり、みんなでカレーを作り、トランプをして八束家を後にした。


「はあ…緊張した…」

「…ありがとな、誠治朗」

「浅緋も、ありがと。俺、感動して喋る前に泣きそうになっちゃったよ」


「確かに、うるうるしてたな」

「…改めてさ、本当にいいご両親だよ。尊敬する」

「俺もそう思うよ」

「うちもああだったらいいのになあ…」

「誠治朗のご両親だって、優しいだろ」

「そうか?頭のかたい父親ですよ?」

「…尾浜家にも、ご挨拶に行かないとな」

「…そうだな。今度予定聞いてみるよ」


「今日はぐっすり眠れそうだな」

「…え、ぐっすり寝ちゃうの?」

「寝ないのか?」

「あ、いや、その…」

「…寝かさなくてもいいならそうするけど」

「え、浅緋、今なんて…ねえなんて言ったの?」

「うるさいな、聞こえてただろ」

「聞こえなかったからもう一回!」

「絶対聞こえてただろ」




無事に一仕事終えて、二人で笑いながら帰った。

その夜どうなったかは、俺たちの秘密…。



すみません、個人的に八束家の両親大好きで。

書いていてちょっと泣きそうになりました笑

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