尾浜家の仲直りーside誠治朗
半年の冷戦を経て、ようやく琴音と仲直りできた。
迎えに行った時、二人はベンチで話をしていた。
なんだか悪いような気がしたけど、二人が座っているベンチのある後ろ側のフェンス越しに少しだけ話を聞かせてもらった。
「………」
「………?」
「………」
「それなら、後は琴ちゃんが素直になるだけだよ。琴ちゃんは可愛いし、頑張り屋さんだし、二人とも大好きだと思うよ、僕」
「そ、そうかなあ…」
「僕は笑ってる琴ちゃんが好きだから、仲直りして、元気になってほしいなぁ」
本当に中2なのか、宗二郎。
俺が女子なら、そんなこと言われたら惚れてしまう。
そろそろ、出て行ってもいい頃だと、公園の入口に向かう。
俺の姿が見えると、先に気づいたのは宗二郎のほうだった。
琴音に伝えて、何か声をかけている。
これで逃げられたら、次はどうしようか。
そんなことを考えていると、琴音が走ってこちらに向かってくる。
あれは、たぶん飛びついてくるやつ。
手を広げると、予想通り勢い良く飛びついてきた。
「誠ちゃん、ごめんなさい!!」
少し震えているのが伝わってくる。
よかった。もう、怒ってないみたいだ。
安心して、思わず笑みがこぼれる。
琴音に謝り、プリンがあることと、一緒に帰ろうと伝えると、元気な返事が返ってきた。
琴音が振り返る。
視線の先の宗二郎が手を振っていた。
俺も小さく手を振る。
と・・・
「じろちゃーん!大好きー!!」
うちのお転婆な妹は、大きな声でそんなことを言って、手を振り返し、さっさと歩きだす。
思わす宗二郎を見やると、手で顔を塞いでいた。
…頑張れ、宗二郎。
少し遅れた俺を不思議そうに見てくる琴音の頭を思わず撫でた。
ちゃんと琴音のこと見てくれている子が、傍にいるんだと気づくにはまだかかるらしい。
道中、琴音と話をした。
この半年の苦労は何だったのか…。
妹は案外ケロッとしていて、姉にそっくりそのままだった。
家に帰ると、心配していたのであろう陽光がうろうろとしていて、
なぜかねーちゃんも出てきた。
琴音に抱きつくねーちゃんと珍しくそこにくっつく陽光を見て、嬉しくなって便乗して俺もくっついた。
苦しいと言う琴音。
玄関を開けたら、なぜか団子になっている俺たちを見て、母さんが笑っていた。
その夜、全員が揃っているこの機会に、俺は家族に話すことにした。
俺と、浅緋について。
それから、今後のことについて。
母さんと陽光は驚き、姉はなぜか泣き、妹は少しだけ得意気に見えた。
問題は、父だ。
「お前はそれでいいのか」
「いい」
「この家の長男だろう」
「この家を出ても、俺はここの長男です」
「あちらのご両親はなんて言ってるんだ」
「これからご挨拶に伺います」
「…お前は昔から本当に勝手だな」
「…すみません。でもこれだけは譲れない」
「あちらにご挨拶が済んだら、一度話をさせてもらう」
「…父さん。ありがとう」
とりあえず、話は出来た。
後は、浅緋のご両親だ。
昔から知っているから、そこまで不安ではないけれど…。
もし、反対されたら…。せっかく仲良くなったのに、あの家庭をギクシャクさせたくないな、と強く思った。
浅緋も、こんな気持ちなのかな。ここ最近ずっと。
メッセージで、琴音と仲直り出来た事と、家族に話が出来た事を伝える。
浅緋にしては珍しく、すぐに返信がきた。
"よかった!!"
思わず笑みがこぼれた。余程心配してくれていたんだろう。
「なーに笑ってんの。もしや浅緋くん?」
背後からねーちゃんが茶化してくる。
「なっ…うるさいな。ちゃんと仲直りしたって連絡してただけだよ」
「よかったね、琴のこともだけど…お父さん、話聞いてくれて」
「うん。怒鳴られると思った」
「頑張りな、大変かも知れないけど」
「…うん。ありがと、ねーちゃん」
「ね、誠ちゃん、いる?」
ねーちゃんと話し終わるころ、琴音がやってきた。
「今日、一緒に寝てもいい?」
「いいけど、別に」
「あ、それなら久しぶりにみんなで寝ようよ」
「は、狭いだろ。子供じゃないんだから」
「いいね!そうしよ!ひこちゃん呼んでくる!」
ねーちゃんの提案に、琴音が喜んで陽光を呼びにいった。
「せっかく仲直りしたし、もうあんま出来ないでしょ、きっと」
「そうだけど」
「たまには我儘きいてあげよ」
「みんなで寝るには狭くない?もう僕小さくないよ」
「ぎゅっとして寝れば平気だって!!」
「そうかなあ…」
「陽光、今日だけ狭いけど兄ちゃんの我儘聞いてくれない?」
「…わかった」
大人になった体には、やはり狭かった。
左から、ねーちゃん、陽光、琴音、俺。
ぎゅうぎゅうになって布団に入る。
「狭いけど楽しいね、なんか」
「ん、そうだな」
「あの…お姉ちゃんも、ひこちゃんもごめんね」
「大丈夫よ。お姉ちゃんが反抗期だったときはもっと荒れてたし」
「ほんと…あれは大変だった」
「家出したこともあったよね、お姉ちゃん」
「え、そうなの?」
「そうだよ、琴覚えてないの?」
「琴その頃まだ赤ちゃんだったでしょ」
「あ、そっか」
「そう考えたら、大きくなったよねみんな」
「何急に」
「別にー。ほら、そろそろ寝るよ」
「はーい。おやすみ」
尾浜家末っ子の反抗期は、その後鳴りを潜め、ようやく穏やかな日常が戻ってきた。
ちょこっと裏話
じろちゃんこと宗二郎くん、小さな頃から琴音ちゃんのことが好きなんです。
女の子として。
好きな子に大好きー!って叫ばれたらもうたまんないですよね…っていう話。




