妹と向き合う時-side誠治朗
それからしばらくして、浅緋から相談を受けた。
お互いの家族への挨拶がしたい。
その前に、うちの家族…特に妹と父。
まずは、すっかりへそを曲げてしまっている反抗期真っ盛りの妹。
どうにか前のように仲良くなりたい…と。
「琴ももう意地張ってるだけだよ。最近はもう言うことないから中学生にもなって"あっちいって!"しか言わないよ笑」
浅緋とは、琴音が4歳の頃から付き合っている。
浅緋にもよく懐いていて、大好きなことも知っている。
すっかり拗れたのは…俺が原因だった。
浅緋がうちに遊びに来ていた日、ずっと琴音がべったりくっついて離れないもんだから、
流石に俺も面白くなくて…。
帰りに目を盗んで浅緋にキスしてしまった…のを、琴音に見られてしまった。
「…誠ちゃん…、誠ちゃん!!」
「あーっ…っと」
「あ、琴音これは…」
「誠ちゃん…わたしがずっと浅緋兄ちゃんのこと好きだって知ってるのに…よりによって…もー!!!」
わぁわぁと泣き出して、スリッパやら新聞やら、手当たり次第投げつけられた。
「あっ、浅緋にいちゃんっも!!いっつもせいちゃんっ、と一緒だから、ことの、お兄ちゃんなのにぃぃ!!」
言ってる内容はものすごくシンプルで、
つまり、寂しいらしい。
とりあえず好きなだけ泣かせて、二人で宥めたが、帰ってきた陽光が惨状をみて呆然とした。
玄関がものすごく荒れている上に、
号泣する妹と、それを宥める兄とその友人。
「琴音…どうしたの?」
「いや…まあ…」
「ひこちゃぁぁん!!」
陽光をみて少し落ち着いたかと思ったら、
陽光に飛びついて第二フェーズの号泣が始まってしまった。
そしてその惨状に、さらに帰ってきたのが母親だった。
「あら…どしたの…これ」
「いや、僕もよくわかんなくて…」
「すみません…ちょっと色々ありまして…」
「ごめん、とりあえず片付ける。ひこ、琴音頼んでもいい?」
「あ、うん。琴音、とりあえず部屋いこ」
「…ぐずっ」
とりあえず、母親には俺が琴音を怒らせてしまったと伝えて
浅緋には散々謝った。
そこからは…すっかり冷戦状態。
話をしようにも、近くに寄ると舌打ちされる始末…。
「…お姉ちゃんの反抗期とそっくりだね」
「まあ、姉妹だからな」
「どうするの、これ」
「んー参ったなぁ」
まさか玄関でキスして怒らせた…とは口が裂けても言えず…
とりあえず、しばらくは浅緋の家に住ませてもらって、少し距離を置くことにした。
自業自得だが…"せいちゃん、せいちゃん"と幼い頃から懐いていた妹を傷つけたあげく、癇癪まで起こしてしまうほど泣かせ、会話すらさせてもらえないことにかなり参った。
そして、それは浅緋も同じで…
「琴音がグレたらどうしよう…」
としばらく落ち込んでいた。
これは…どうしたものだろうか。
悩んでいるうちに、半年近く過ぎていた。
離れて住んでいる姉にまで
「うちの可愛い琴音を反抗期に突入させたのがまさか誠治朗とは…いい加減仲直りしなさいよ。陽光がかわいそうでしょうが」
と怒られた。うちの姉は存外、下の子達には甘いのだ。
一緒に住みたいと言われたことだけでも嬉しかったのに
プロポーズまで受けた。
家を出るにしても、きちんと家族に話したい。
とりあえず、一度家に帰ることにした。
家に帰る日、浅緋が、プリンを作って持たせてくれた。
これは、琴音の好物。
意を決して、家へ入る。
母親に連絡したところ、どうやら出かけているらしい。
プリンを冷蔵庫にしまい、琴音の部屋を訪ねると、隣から陽光が出てきた。
「琴音なら今いないよ。宗二郎と公園行くって」
「宗二郎?」
「あれ、兄ちゃん知らないっけ?僕の友達の宗一郎の弟だよ。琴音と同い年なんだ」
「あ、そうなんだ」
「もう少ししたら帰ってくるんじゃないかな。宗二郎にはあまり暗くならないうちに帰るように言ってあるから」
「そっか…んじゃ…待ってるかな…」
「…兄ちゃん、近くまで迎えに行ってあげたら?」
「俺が行ったら怒るだろ、琴音が」
「…最近全然帰って来ないから、寂しがってるんだよ」
「え、琴音が?」
「どうやって謝ったらいいか分かんなくなってるだけだよ。昔から兄ちゃんのこと大好きなんだから」
「…そうかなぁ」
「毎日兄ちゃん帰ってくるか確認される側になってみなよ」
「…ごめんな、陽光」
「悪いと思うなら、早く仲直りしてよ。僕も浅緋兄ちゃんに会いたいんだから」
「そうだな、ちょっと行ってくる」
公園へ向かう。
一番近くの公園にはいなかった。
少し先の公園へ向かうと、ベンチに並ぶ、二人が見えた。




