表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/39

甘いお菓子のその後で


木下先生が見逃してくれたおかげで、ようやく話をする時間ができた。


「誠治朗、ごめん。俺、実はあの日のこと…その…驚いて後半全然記憶になくて…」

「それなら、もっと早くにそうやって連絡が欲しかった」


誠治朗の話では、あの後どうやら返事は後でさせてほしい、俺から連絡するから待っててほしい

と言って駅まで一緒に帰ったらしい。


全くもって記憶にない。

恐ろしい。


「だから俺ずっと待ってたんだよ。いつも俺から連絡するから、めっちゃ我慢して…おかげで夏休みの終盤、兵助に付き合わされてえらい目に遭ったんだからな」


「ご、ごめんって」


「ま、いっか…俺が怒ってると思って卵焼き焼いてきてくれたの?」

「あ、やその…卵焼きは…なんというか、口実で…」

「え、俺浅緋の卵焼き食べたくて走ってきたんだけど」

「あ、ある!あるよ」


おずおずと卵焼きが入った容器を差し出す。


「やった、食べてもいい?」

「どーぞ」


「うまぁ…」


開けて口に入れたとたん、目尻が下がる。

あぁ、この顔が見たかったんだ。


「そういえば、なんかお菓子みたいな甘い匂いするけど」


確信犯なのか、天然なのか…。


「あ、これ。お前に…作ってきた」


これまたおずおずと、ラッピングまでした焼き菓子を渡す。


「え、俺に?浅緋、お菓子も作れたの?すげぇ!」

「ま、まあ…」


お前のために1週間かけて練習したとは…言わなくてもいいだろう。


「クッキーと、カップケーキ?」

「マフィンだ」

「…食べてもいい?」

「ど、どーぞ」


初めて弁当を作ってきた日を思い出す。

あの日も…緊張した。


「ん、んま…」

卵焼きを食べた時と同じ、ぐっと目尻が下がる。


ごくんと飲み込んで、こちらを見ると


「ね、浅緋、めっちゃ美味しい!」


この笑顔が見たかった。

俺が作ったものを食べて、嬉しそうに笑う、こいつの顔が。


「誠治朗、好きだ」

「え…?」

「俺も、お前が好きだ」


みるみるうちに、誠治朗の顔が赤くなっていく。


「ほんと…に?」

「確かめてみる?」


あの日のお返しを、そっと引き寄せて返す。

あの日と違って、甘い、甘い唇に。


「木下先生には内緒だぞ」

「は、はい…」


やましいことはしないので、と見逃してもらった。

キスはやましいことに入るんだろうか。

まあ、すでに授業もサボってるし、もういいか。

後で木下先生にも、お礼のマフィンを差し入れしよう。


ちょこっと裏話

誠治朗、美味しいと目尻がぐいっと下がります。

それが浅緋にはぐっとくるそうな…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ