第1話
最初、僕はそれを大きなマシュマロか何かだと思った。
寝ぼけていたのだろう、なぜ布団の中にこんなにふにふにと気持ちのいいものがあるのか疑問も持たず、僕は円を描くようにそれをゆっくりと揉みしだいていた。
「ん……」
気持ちいい。
こんなにやわらかいものが、この世にあるのか。
触れば触るほど、しあわせな気持ちに包まれていく。
「あ……圭、様……」
やわらかな丘の中心。
その突起に触れた。
瞬間——。
「え……?」
彼女の吐息が首筋にかかって、僕は慌てて上体を起こした。
そして失敗した。彼女が僕の左腕を腕枕にして眠っていたからである。
「んな……⁉︎」
顔が近い。
見上げる彼女と僕の鼻先が触れ合いそうになる。
「! ぼ、僕の部屋で何してるんですかッ⁉︎」
とろけそうな表情で目を細めながら、彼女は僕の顔をじっと見上げた。
透き通るような肌に息を呑む。
まつ毛が長い。
甘えるような眼差しの下で、愛らしい唇がふるんと揺れている。
——って、何を考えてるんだ、僕は⁉︎
「だって……薦めていただいた本には、愛し合う人間の男女はこのように肌を密着させるものだと書いてありましたので」
薦めたって……あのライトノベルのことか⁉︎
「いいですよ、圭様……もっと触っていただいても」
体を起こした彼女が、頬をピンクに染めたまま僕を胸元へ抱き寄せる。
裸だった。
僕も、彼女も。
「うえぇえぇぇッ⁉︎」
僕は彼女を押し退けるように慌てて飛び退いた。
「あ……」
「な、なな、なに考えてられるろ……!」
焦って呂律が回らない。
叫びながら、僕は思わず魅入ってしまった。
アイラさん。
カーテンの隙間から差し込む朝日に照らされて、彼女の背中から生えた美しい純白の翼が神々しく光っていた。
本物の、天使。
——なんでこんなことになったんだ……⁉︎
数日前、彼女が初めてうちの本屋を訪れた時のことを、僕は思い出していた——。




