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ねむともみの木

作者: まっちゃん

今日も眠たくありません。



ねむは元気いっぱいの男の子です。もう10才になります。


でも、朝寝坊は大好きだけど早く寝ることは好きじゃない。なんでだろう。



ここは夢の国。魔法の町。町いちばんの大きなもみの木の下にねむのお家はありました。


ねむのお父さんは会社の社長さん。お母さんは学校の先生。それとまだ小さな妹がいます。



そうそう、あと大好きなハムスターのホシくんがいました。


家族のみんなはねむより早く寝て早く起きます。


でもねむは目をとじて眠ったふりをして、家族のみんなが寝静まったらそーっとベッドからおきだしてもみの木に登っていました。


みんなには秘密です。



もみの木にのぼっては、にぎやかだった昼間とはちがった静かな町のようすをながめているのです。


ときどき、ねむはお空のお月さんに話しかけます。



「ねえ、お月さん。どうしてぼくは夜眠くならないのかな?」


でもお月さんはいつもほほ笑むだけで、なにもこたえてはくれません。



ねむは学校では人気者です。なぜなら、魔法が得意だからです。


ねむが得意な魔法は、少しのあいだだけ空を飛べることと、やさいをお菓子みたいに甘くすることができることでした。



でも、運動はきらいです。もみの木にのぼるのだって、魔法を使っているからのぼれるのです。


もし魔法が使えなかったら、もみの木にのぼることができなくなってしまいます。


魔法の世界では、1ヶ月に1日だけ魔法が使えなくなる日がありました。それは新月の日。お月さんが消える日です。



ある日、学校からの帰り道、ねむは大好きなお友達のだいちくんと、今晩、ねむの木にのぼる約束をしました。


お友達といっしょにねむの木にのぼることができるので、ねむはとてもわくわくしました。



でも、その日は新月だったのです。ねむはすっかり忘れていました。


今日は魔法が使えません。


運動がすきじゃないねむは、もみの木にのぼることができないのです。



晩ご飯はねむの大好きなハンバーグでしたが、今日はあまりおいしくありません。


お母さんもねむのことを心配しています。


お外を見てみると、お月さんがいない日なので真っ暗です。


もみの木からは、ふくろうがホゥホゥとないています。



どうしよう。


でも、お父さんやお母さんにどうしたらよいか聞くことはできません。


なぜなら、お父さんやお母さんに真夜中にもみの木にのぼっていることがわかってしまうからです。


きっとしかられてしまいます。



どうしよう。



ねむはいつものようにお風呂からあがって、歯をみがいてベッドに入ります。


お父さんとお母さんにオヤスミのキスをして、ねむったふりをします。



しばらくすると、家族みんなが眠りました。


ハムスターのホシくんも気持ちよさそうに眠っています。



ねむは目をあけて、いつものように音がしないようにそーっと静かに窓から外に出ました。


ねむの部屋は1階にあるので、すぐにお外に出ることができます。



お外にはもうお友達のだいちくんが来ていました。


「ねむくん、おそいよ〜。はやくもみの木にのぼうろう」



だいちくんは運動が大好きです。


魔法はきらいなのですが、木登りはとくいで、かけっこもはやくて女の子にも人気があります。



「どうしたの?ねむくん」


ねむくんは泣きたくなりました。


でも、だいちくんは大好きなお友達ですから、正直に魔法が使えないからもみの木にのぼれないことを話しました。


ごめんね。


すると、だいちくんはがっかりして


「なんだよ〜。つまらないな。じゃあ帰るね」


といって帰ってしまいました。



ねむは涙が止まりませんでした。


どうしてなのか分かりませんでしたが、涙が止まらないのです。


すると、玄関からお母さんが出てきて何も言わずにねむのことを抱きしめました。



ねむはびっくりしました。


でも、とても温かな気持ちです。



ねむは泣きつづけていましたが、しばらくしてお母さんに聞きました。


「ねえ、お母さん。どうしてぼくがここにいることがわかったの?」



すると、お母さんはやさしい目をしてねむにこう言いました。


「あら、いつだってお母さんはねむのことを見ているのよ」



お母さんは、ねむがいつも夜になってからもみの木にのぼっていることを知っていたのです。


ねむはとてもびっくりしました。



「じゃあ、どうしてぼくのことをしからなかったの?」


お母さんは答えるかわりに、ほほえみながらねむの頭をやさしくポンポンとたたいて


「さあ、ねむ。あたたかいミルクを飲んでもう寝ましょう」


とお家のほうを向きながらいいました。



ねむはお母さんの手をにぎったまま、自分の部屋の窓を見て思いました。


なんだか早くベッドの中にもぐりこみたいな。


それに眠たいや。


ねむは大きなあくびをしました。



ねむはもう真夜中にもみの木にのぼることはなくなりました。



おしまい

2008年11月4日に落ち込んでいた友人のために作った短編ファンタジーです。

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