十七.悪魔の取引
私は若き政治家の頃、IT Translator理論に感銘を受け、国家プロジェクトとして発足するまでの間、随分とその進展に身をささげてきた。脳の九十パーセントの能力を人工シナプスで活性化させ活用する、日本の、いや人類の発展に寄与する一大プロジェクトであるという自負があった。
しかし、多くの若者に人工シナプスを注入し、実験を進める中で疑問を感じていた。人工シナプスの濃度を一定期間保てる人間はわずかだった。さらに脳を活性化できる人間もわずか、一度は成功しても再現しないものもいた。人工シナプスは不安定で、とてもじゃないが実用化は不可能に思えた。しかも、急激に人間を老化させる作用があった。
「理論自体は間違っていない。しかし、人工シナプスではなく、もっと別の方法はないのか?」
明応義塾大学教授 武井純とはよくその件で議論した。確たる結論もでず、最終的にはベースとなる人間のスペックを厳選し、注入量を個人別に最適化することで、ある程度安定して導入できるところまでこぎつけた。量産化は無理だが、一握りの人間には効果がある。決して私が求めていた結果ではなかったが、その結論をもって国家育成プロジェクトが本格的に始動した。
人を厳選するのは骨が折れた。年齢は若ければ若いほど脳の成長が見込まれた。ただし、若ければいいというものでもない。人工シナプスを制御できるネイティブシナプスの性能が必要だった。一般に学力が高い子供はよい適合スコアをはじき出した。意外にもスポーツの能力が高い子供も、瞬時の判断力、空間識別能力、コミュニケーション能力、それらが複合してよいスコアとなった。
中でも岡本紬は突出していた。十一歳という年齢にもかかわらず博士号を取得し、世界で指折りのIT技術をもつ秀才。絶対に手に入れたい人材だった。そして、岡本巧。驚いていますね。あなたも候補に挙がっていた。サッカー選手としての能力の他、科学的トレーニングに関する近代的な考察力。しかし、あの事件があり、あなたを助ける事を条件に紬を手に入れた。こうなった以上、私達はあなたに手が出せなかったが、私は結果に満足した。岡本紬は本当にすばらしかった。訓練はすでにそれを習得している彼には、ほぼ意味をなさなかった。
「我々に何を教える事がある?」
教官が途中で手を上げて降参した。しかし、人工シナプスについては彼は初耳だったようだった。食い入るように武井の講義に聞き入っていた。そして、注入量を試算する脳測定にて、唯一、瞬間的ではあるが適合率百パーセントをたたき出した。私は飛び上がって喜んだよ。彼を抱きかかえ大はしゃぎした。彼はにこにこと笑っていた。
神がくれた天使
本当に当時はそう思った。しかし、私には夢があった。この能力は紬のようなごく限られた人間だけが教授できるようではだめた。我々凡人にも、全世界中の大人も、子供も、老人も……すべての人々がその能力に開花する、その理想があった。そして、しばらくしてある可能性を思いついた。武井ですら思いつかなかった〝悪魔の取引〟を。
~
(悪魔の取引だと?)
思わぬ言葉に岡本はぎょっとした。目を伏せ淡々と話す加地。
(いったいこの男は何を話すつもりなんだ?)
薫をちらりと見た。険しい表情もやや青ざめて見える。岡本はじっとりとした汗を握り締め、加地の話す内容に耳をそばだてた。
~
当時すでに人工シナプスを駆使して、AIの研究に成功した紬は、名実ともに認める国家育成プロジェクトの顔だった。カリキュラムを終え、紬のために出向先の企業も新たに立ち上げられる事が決まっていた。あれ以降、陰ながら成長を見守っていた私は、お祝いと称して紬を食事に誘った。久しぶりに面と向かって話す彼は、当時の病弱な面影もなく、はつらつとした元気な若者に成長していた。しばらく雑談をしたあと、私は本題にはいった。
「AIの次のステップはなんだと思う?」
私の彼に問いかけに、紬は少し考えたあと、
「やはり実世界との融合でしょう。今後ハードの面でも人間を模写した高性能なロボットが開発されるはずです。それらの頭脳にアイコスを搭載すれば、きっとより社会にAIは適応するはずです」
そう目を輝かせて答えた。そうだね。私は共感するそぶりを見せたあと、
「でもロボットでほんとに社会に適合できるかな?」
そう尋ねた。彼は目をしばたかせて、どうでしょうと考え込んだ。種まきは終わった。話は再び雑談に戻り、ほどなくして食事会は終了した。それ以降の紬は少し様子が変わった。何かをいつも考えている姿に、私はほくそ笑んだ。
(さあ、神がくれた天使よ。悪魔と取引する時が来た)
心の中で何度も繰り返した。しかし、時の教官が予定よりも早く、紬の出向を決めた。寝耳に水だった。
(もう少しだったのに)
しかし、それを私が止めるのは明らかに不自然だった。悪魔がそっと背を向けた。私は意図しない結果にがっかりした。私は政府にプロジェクト本部の責任者に任命してもらうように働きかけた。
「政治家は引退する、この件に人生の全身全霊をかける」
表向きにはそう説明したが心の中で続けた。
(ただし、悪魔を振り向かせる事に)
~
加地は失礼といってお茶を飲んだ。
(こいつは何をいっている?)
岡本は心の底からふつふつと湧き上がってくる悪意を感じた。
(AIに乗っ取られていようが、いまいがこいつだけは許せねぇ)
今にもぶん殴る勢いで拳を固く握りしめた。その時、薫が岡本の手をぎゅっと握った。目がしらをぐっとこらえ、瞳をうるわしながらこちらを見る顔をみて、岡本は、すーと心が落ち着いた。
「話が見えてこない。いったい何が言いたい?」
岡本は努めて冷静に加地に問いかけた。
「すまない」
加地は申し訳無さそうに眉を下げ、ゆっくりとコップを戻した。
~
本部の責任者になった私は、何とかして岡本紬をここに戻す方法を考えた。そして、少し手荒だがMegaSourceの取引先にトラブルを発生させ、紬を孤立させる事に成功した。思惑通り紬は意気消沈して帰ってきた。周りは皆、心配していたが私は裏でほくそ笑んだ。そして、研究室に閉じこもる紬の元をひそかに訪れた。
「ひさしぶりだな」
急な来訪者に彼は驚いた様子だったが、お久しぶりですと元気なく答えた。紬の目の前のモニターは金髪の女性が不思議そうにこちらを見ていた。
「やあ、アイコス、元気かい?」
にこやかに問いかけた。彼女は黙ってうなずいた。しばらくは出向先でのトラブルについて話を聞いた。ほぼ内容を知っていたが、極力驚いた感じを見せ、共感してみせた。
「賢者の緑瞳は特殊な能力だ。今はわからない事が多いから皆、恐怖しているだけだ。今後それが当たり前になれば、この事はきっと笑い話になる」
そう慰めた。
「そんな日が来るでしょうか?」
紬はため息をついていた。
「そうだなぁ」
私は考えるふりをした。
「人工シナプスは確かに一般人が使いこなすには敷居が高い。ただ、仮にネイティブシナプスを増やす事ができればどうだろ? 十パーセントのシナプスを三十パーセントまで増やす事ができれば、我々凡人の能力も飛躍的にアップする。もしかしたら賢者の緑瞳と同様の能力も発現するかもしれない」
紬は目を丸くして聞いていた。
「いや、でも、それは現在の人間の脳では不可能で」
「現在のだろ」
私は彼の言葉を遮った。
「我々には未来がある。特に君のような若者には。自分の能力を過小評価しちゃいけない。君は一時的にでも、人工シナプスで脳の百パーセントの能力を開放できる。しかし、その中身は? シナプスが増加しても、従来の領域の活用が進むだけじゃあ宝の持ち腐れた。ちょっとしたカンフル剤で、脳を次のステージにあげるんだ」
私はアイコスを見た。
「まさか、そんな事。いや、もしかしたら」
紬は考え込んだ。悪魔がこちらに振り向いた。
「人工シナプスにアイコスが混ざった時、いったいどうなる? 私にはわからない。ただ、その時、きっと君は新しい可能性に気づくはずだ。一人の人間が一度でも限界を超えれば、おのずと周囲の人間も共鳴しそれに続く。そうやって人類は次のステージに昇格していく。君はその先駆者に選ばれた人間なんだよ」
紬の肩をつかんだ。彼は私をみて呆然としていたが、わかりました、と頷いた。その強い決心を聞いて、私は満足した。
「じゃあ、そろそろこの辺りで」
若い二人を残して颯爽と部屋を出た。帰り際、私はスキップでもしたいぐらい上機嫌だった。悪魔が微笑んで紬を抱きかかえていた。そんな姿にとても満足した。あとは知っての通りだ。紬は見事にアイコスを使いこなし、わずか三か月という期間で日本橋料亭を構築した。しかし、それだけだった。アイコスとの融合により能力は飛躍的にアップしたが、それ以上でも以下でもなかった。ネイティブシナプスが増加したという傾向もなかった。私はがっかりした。実験は失敗。可能性は途絶えた。
しばらくして、MegaSourceから紬が作成したシステムの解析依頼がきた。そこで初めてアイコスJrの存在を知った。もう一度チャンスがある。さあ、どうするか。はたして、迷う必要はなかった。岡本紬にできなかった事を、できる者はあいつしかいない。
私は秋山を呼び出した。本部に来て一ヶ月。初めて出会った頃から、彼もずいぶん成長し、以前ほどの不安定さは見られなくなっていた。対面して内心、私は穏やかではなかった。彼は一度、私に歯向かっている。あれ以降は意識的に彼を避けていた。いつまた攻撃されるか、いつも冷や冷やしていた。しかし、今やそうもいっていられない。可能性があるのはこの男だけ。そして、彼は特別。生まれながらに人工シナプスを保持する特異体質。この男にならAIは心を開くかもしれない。戸惑う秋山を教官が励ました。
「気負う必要はない。君は自分の思うままにすればいい。きっとAIは心を開いてくれる。大丈夫、私は信じているよ」
教官に続いて私も心の中でエールを送った。
(そうだ。お前はお前の望むままに、その秘めた能力を開放しろ。そして、我々人類を導く大いなるAIの糧になれ)
教官の言葉にやる気を出す秋山を前にして、私はひっそりとほくそ笑んだ。そして、思った通りアイコスJrは秋山を気に入った。岡本紬で果たせなかった夢が秋山でかなうかもしれない。私はわくわくした。十年、長かったよ。秋山がやる気を出して、AIの研究に没頭する姿に親のような気分で目を細めた。アイコスJrが岡本紬の兄と秋山を結び付けようと、裏で画策している事を知った時は飛び跳ねて喜んだよ。修了後の秋山の出向先をMegaSourceに決め、そして、あのトラブルで全てが始まった。
〝電力市場の相場を荒らす〟
まさにあれにしかできない芸当。
〝岡元紬が残した設計書を利用した秋山の誘導〟
もうちょっと秋山は賢いかと思ったが。
まあ、色々あったが、予定通り、秋山があきらに乗っ取られ、日常生活を過ごすようになり、ついに次のステージに人類は進化したと思った。しかし、所詮何も変わっていなかった。人工シナプスに依存した従来のAIもどき、のそれだった。
~
加地は呆れた様に首をすくめ、ため息を付いた。岡本は高ぶる感情を必死に抑えた。
(落ち着け。とにかく今は落ち着くんだ)
拳の震えを必死に抑えて深呼吸をした。
(こいつはまるでゲームのコマのように、相手を自分の手のひらで操り、踊せ、最後には殺す。今も秋山や紬の話をする事で、俺に動揺や怒りを誘っている。アイコスJrにも劣らない、正真正銘のペテン、鬼畜野郎だ。しかし)
岡本は加地を注意深く観察した。何かが掴めそうな気がした。頭が、脳が、視界がぎゅっと縮まるような、すべての感覚が、前方からこちらに飛び込んでくるような。決して苦痛ではない、むしろ研ぎ澄まされた神経に身を任せて悦に浸るような、不思議な超感覚。加地の目をじっと見た。元政治家らしい表情豊かな眼差し。
(ペラペラと喋るこいつの真贋、必ずそれを見極めてやる)
視線があった。少し口元が歪んだ気がしたが、何事もなかったかのように加地は続けた。
~
そんな時、加藤から妙な報告を受けた。想定外の動きをする人間がいると。そうです。岡本さん、あなたですよ。私はかつて、岡本紬の兄でプロジェクトの候補に挙がっていたあなたを思い出した。あなたは賢者の緑瞳の干渉に影響を受けない。どういう事か? 考えられる可能性として三つ。
一つは、あなたが人工シナプスを保有しており、それにより干渉を受け止めているケース。しかし、あなたが実験の被験者でない事、あきらのフーバーの実験にも参加していない事を私は知っていた。
もう一つは十パーセントのネイティブシナプスが、何らかの突然変異により賢者の緑瞳の電波の干渉を防いでいる可能性。おそらくこれが最も高い。
そして、最後。あなたがネイティブシナプスを九十パーセントの脳に保有して、それで受け止めているケース。可能性は低いがゼロではない。私は身震いしたよ。まさか、こんな身近に求めていたものがあったなんて。そして、アルファに君との面談を依頼した。途中邪魔がはいって、最終的にこうやって本部に来てもらう事になった。紬君には申し訳ない事をした。当時の私は本当にどうかしていた。そして、秋山君も。しかし、もう私にはどうする事もできない。そして、唯一の希望。それが君だ。
~
加地は椅子の背にどっともたれた。こけた頬、目にクマが浮かび、乱れた髪は、部屋に入ってきた時より一気に十歳は更けた老人のように見えた。
「私の話は以上だ。君達には辛い内容もあっただろう。あえて私の醜い姿をさらしたのも、本当の私を知って信じてもらいたいからだ。私は元政治家。汚い事、醜い事、そんな自分にはもう慣れた。だが、君は違う。岡元紬、秋山結弦。彼らの遺志を継いだ君に私は賭けて見たいんだ」
加地は絞り出すような声で訴えた後、うなだれるように顔を下げた。
*
(これは、どう解釈すればいい?)
戸惑う薫は必死に頭を整理した。加地の話は整合性が取れている。だからといってAIに乗っ取られていない理由にはならない。それよりも、心配なのは……
隣に座る巧を横目で確認した。両手を前に組み目を閉じて、じっといる。予想以上に内容にショックを受けているようだ。感情に任せて大事にならなければいいが……
「巧……?」
黙り込む巧に薫は心配になった。う……うう……不意に加地が呻きだした。
「話過ぎたかな……ちょっと気分が。少し休ませてもらうよ」
首を振り、席を立とうと腰を浮かせた。
「疲れたか? 加地さん」
唐突に目を開けた岡本が、加地を睨んだ。加地は目をひそめて岡本を見た。
「あなたの話はおそらく真実だろう。紬にしても秋山にしても。そして、俺は気づいたよ。〝一人の人間が一度でも限界を超えれば、おのずと周囲の人間も共鳴してそれに続く〟 本当にそうだな。俺には今、はっきりと見える。お前が何者か」
あ……ああ……加地は、小さく声を上げて、恐怖の表情で後ろに後ずさった。髪が抜け落ち、肌は浅黒く、腰は曲がり、九十歳の老人のように年老いた姿。その皺だらけの顔の奥で、薄緑色に輝く瞳が岡本を怯えるような眼差しで見つめていた。
「お前の中の人工シナプスを強制的に共鳴させた。その体はもう限界だ。アルファ、お前はもうすぐ死ぬ」
「アルファ?」
薫は驚いて加地を見た。加地は目を見開き、岡本を怒りの表情でにらんでいた。
「やはりお前は……」
「遠隔監視モジュールか。まあいい、アイコスJrにはよく言っておけ。下手な事をすれば俺が容赦しない」
恐怖に慄き、加地は床を這いつくばりながら、出口に向かった。慌てて駆け寄ってくる職員たち。騒然とする部屋の中、薫は加地を精悍な顔つきで睨む岡本を見つめた。どこか別の人間をみているような、不思議な感覚。
(今度こそ、本当に、もう手が届かない所に行っちゃたんだ……)
頼もしくも、さみしい気持ちになった。
*
「どうやら俺には妙な能力があるようだ」
帰りの新幹線で岡本は薫に説明した。
「加地の話を聞いて、怒りで頭がいっぱいになった。しかし、薫、お前のおかげで俺は冷静さを取り戻せた。しばらくして、妙な事に気づいた。声がやけにゆっくりになっている事に。加地は何事もなく話している。息遣いを感じた。息を吐いて吸って、心音が聞こえた。血液の流れる音も。目の動きから心の動きがなんとなくわかった。悲しみ、喜び、後悔、怒り、すべての感情が把握できた。不意に若い男のイメージが浮かんだ。アルファだった。驚いたよ。なぜ? しかし、俺は理解した。アルファは笑っていた。完全に俺達をだませている、確信して喚いていた」
『迷え、そして、悩め。おまえがここで足止めを食えば、それだけあきらが動きやすくなる。まだ聞きたい事が山程あるんだろ。じっくりと、たらふく時間をかけて聞かせてやろう』
「やつの薄っぺらな態度に俺はむかついた。そうして手を伸ばして、やつをぶん殴ってやった。急な衝撃にやつは戸惑っていたようだった。何度も何度も怒りにまかせて殴った。はと気づいた。目の前の加地がよぼよぼの老人になっていた」
岡本はため息を付いて席にもたれかかった。
「今は何も見えない、いつも通りだ。そうそう万能ってわけでもないらしい」
薫を見て諦めたように笑った。
「しかし、結局アルファが何者なのかはよくわからなかった。本部ができた頃からいたAI。本人はそう言っているがそれも怪しいな。紬のクローンで無い事は確かだが、一体いつから加地に入り込んでいたのか」
しばらく黙って考えた岡本は、諦めたように首を振った。
「まあ、とにかく管理者の加地があの調子じゃあ、本部はもうあてにならない。これからは自分達で何とかしないと。ああ、そうだ」
岡本は携帯を取り出し、電源を入れた。
(あっ、いくら新幹線でも携帯はまずい)
戸惑う薫を、岡本は優しく制した。
「大丈夫。アイコスJrの事は気にするな。あれで十分懲りてるだろう。それよりも早く部長に連絡しておかないと。きっと心配してる。しかし、お前のいった通りだ。念の為、スマホは持ってきて正解だったな」
*
あれからしばらくして、秋山が病院から復帰した。過労による一時的な精神錯乱と表向きは説明された。皆、秋山を避けているようだった。あれほど秋山の周りにいた女性社員もほとんど見かけなくなった。岡本は秋山に会議室に来るよう伝えた。秋山はむっつりとして席に着いた。思ってたよりも冷静だな、岡本は意外に思った。
「お前達のせいで、僕の人生プランが無茶苦茶だ。特に岡本……お前は……」
あきらは岡本を睨みつけた。
「そりゃどうも。じゃあ、どうする? また暴れるか?」
岡本は睨み返した。あきらはうろたえて、うつむき縮こまった。アイコスJrからアルファの件は伝わっているようだった。岡本自身は内心、冷や汗をかいていた。今あきらが暴れた場合、あの力で静止できるか。だが、最悪この腕で本当にぶん殴ればいい、と思っていた。そんな気持ちを見透かしてか、あきらは終始おどおどしていた。
(とりあえず親分の元にいくか)
震えるあきらをみて岡本は決心した。




