表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

File:006 大長編ドラえもん のび太の恐竜






 今回は、藤子・F・不二雄先生の作品である『大長編

ドラえもん』シリーズの一つ、【のび太の恐竜】について

語ります。


 この作品は映画化もされており、更にそれのリメイク版

である【のび太の恐竜2006】も公開されましたが、

映画版、リメイク版ともにしっかりと拝見したことはなく、

漫画版のみを拝読しての感想、評価となりますので、

その点はご了承ください。


 大長編ドラえもんシリーズの、記念すべき第一作である

この作品は、それまでの【ドラえもん】では表現できなかった

壮大さ、ズッシリとした読み応えを感じさせるもので、

【ドラえもん】の可能性を広げた、革命的な著作と言えるでしょう。


 歴代の『大長編ドラえもん』シリーズ全てと比較すれば、

個人的にはそこまで高い評価はしていないものの…それは

そのぶんだけ、後の作品が名作揃いだからという理由も

あってのことだと思います。




 ①”ドラえもん”×”恐竜”


 言っちゃなんですが、この時点でもう、ズルい気がします。

 両方が好きな(私のような)人からしたら、ハンバーグと

オムライスのセットを”でんっ!”と差し出されたような気分。

 それぞれで食べても美味しいし、組み合わせて食べると

また格別な美味しさを味わえる――そんな感じでしょうか。


 しかし、最初にこの作品を読んだときは、今後も続いてく

この『大長編』シリーズの可能性には気付きませんでした。

 【ドラえもん】という作品の懐の広さというか、どんなものと

組み合わさっても、また別の、水準以上の『味わい』を

生み出す力には、ただただ感銘を受けるばかりです。


 ただ、『恐竜』という存在については、現代と昔では

その印象や意味合いが、多かれ少なかれ違ってくる

ことは否めません。


 私の過去の記憶の中では、『恐竜』と呼ばれるものは

限りなく神秘的で、未知のヴェールに包まれている…

といった印象があり、言うなれば、『”実在”が証明され

ている幽霊』のような立ち位置にありました。


 雪男などの、いわゆる『UMA』と呼ばれる生き物達と、

そこまで変わらない。 ただ、そういったものに比べれば

やや”科学的”な感じがする…その程度のものでした。


 しかし時代が進むにつれ、そのような印象は少しずつ

薄れており――恐竜は飽くまでも『生物学』の中の、

未開の部分がまだ多く残っている部類のもの…というのが、

今の自分の気持ちに一番近いような気がします。


 とはいえ、それでもやはり――恐竜は遥か昔に生きていた

ものであり、今の時代で出会うことや触れることが出来ない

ものである以上、『太古のロマン』を象徴する一つの存在

であることに違いはありません。


 ”こんなこといいな できたらいいな”という人々の願望を

次々と叶えてくれる【ドラえもん】と、”こんな生き物が、かつての

地球に存在していたなんて…”という失われた歴史の

魅力を実感させてくれる、【恐竜】。 この二つのコラボレーション

が生み出す力は、やはり唯一無二なものを感じさせます。




 ②キャラクターそれぞれの役割


 【ドラえもん】という作品の大きな特徴が、キャラクター

それぞれに明確な個性や役割が備わっているということ。

 ”ごく普通の…”といった感じのキャラクターは、

ほとんど登場しません。


 中でも、とりわけ『レギュラー』として登場する5人は、

分かりやすいぐらいの特徴、個性を持っています。

 しかし、『大長編』の中で描かれる、短編の世界観では

あまり出くわさないようなシチュエーション、『普段』とは

異質な空気が漂う中で、その役割にも微妙に変化が…。


 よく目にするのは、”大長編では男らしくなるジャイアン”

ですが――これは単純に考えて、のび太達の敵、彼らを

おびやかす存在として、別のものが登場するためでしょう。


 そう考えてみると、彼らの日常にもしジャイアンがいなければ、

それだけで随分と平穏な世界になることが窺えるわけですが…

まぁ、そんな”もしも”の話をしたところで、あまり意味はないでしょう。

 誰がどう言おうとも、【ドラえもん】の世界にジャイアンは

存在しますし――また、存在しなくてはならないのですから。


 さて、レギュラーの5人の中でも私が特に関心を

持っているのは、何を隠そう『ドラえもん』です。

 彼の立ち回りというか、役どころは、【ドラえもん】という

作品の中で、非常に特殊です。


 多くの場合、(特に日常編では)登場するキャラクターは

『子供側』か『大人側』のどちらの人間であるかが、はっきりと

していることが多いその作品の中で、ドラえもんはその時々によって

どちら側に付くかが変わってきます。


 そして、本作においては『大人側』――というより、『保護者』

としてのポジションに従事している印象です。

 タイムマシンの故障が発覚した後、のび太たちにはそのことを隠し、

他のメンバーが海で遊んでいる最中、どうにかタイムマシンの修理を

試みる様子は、正しく”子供には見せない大人の姿”という感じでした。




 ③”ひみつ道具”×”冒険”


 『ドラえもん』の第1話から登場する【タケコプター】は、ひみつ道具の

代表格の一つともいえる認知度かと思いますが――その話に登場する

【タケコプター】しか知らない人であれば、それは単なる

”空を飛ぶことができる便利な道具”といった印象を持つかと思います。


 しかしながら、大長編での冒険――主に『長距離移動』をする際に

使用するひみつ道具としての役割を担うようになってからは、

”冒険に付き物”のアイテムという印象が定着したように感じます。


 このように大長編、あるいはゲームなどの派生作品の影響もあって

イメージが変化、強調されてきたひみつ道具も数多く存在します。


 飽くまでも『子守用ロボット』という設定のドラえもんですから、

彼が取り出すひみつ道具も当然のことながら、”一般的な家庭”、

”一般的な社会”の中で使われることを想定しての物がほとんど。


 そういったアイテムを、日常とはかけ離れたような場面――

『冒険』や『戦闘』の中で活用していく中で、自然と”そういった場面”に

有効な物が何なのか…というのが、淘汰されてきました。


 とはいえ、『子守用ロボット』が所持する道具であることに変わりは

ないため――いかにも『武器』や『兵器』といった言葉を連想するような

ものは、そう多くはありません。


 基本的には、”人を傷付けない”というロボット三原則にも通じる

コンセプトがあるようにも思えますが…”使いよう”によっては恐ろしい

効果をもたらすようなものも少なくないですし、”戦車を一発で

吹き飛ばす”、”鉄筋のビルを一瞬で煙にする”といった性能を

その道具の『本来の用途』として(ドラえもんが)説明しているような

描写もあり――その危険性には、計り知れないものも感じます。


 とはいえ、前述したような道具は、飽くまでもドラえもんが(ネズミに

遭遇して)我を忘れたときに取り出したものであり、平常時であれば

『攻撃』を目的とする場合、【空気砲】や【ショックガン】のような

相手をなるべく”損傷させずに倒す”道具を武器として使用します。


 ――さて、そんな『武器』とはまた別に、『冒険』の中で登場する

ひみつ道具たちにも、魅力的なものが沢山あります。

 今回の『のび太の恐竜』の中で登場するものであれば、個人的に

一番好きなのが【キャンピングカプセル】です。


 地面に突き刺すことで、棒状の柱とカプセル型の住居部分

からなる、簡易的な住まいが出来るアイテムなのですが…

特に『秘密基地』などの”自分だけのスペース”に憧れを抱く

子供たち――『子供心』には、かなり響くものがあるように思えます。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ