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File:004 ワンパンマン (第7話~第9話)






 ①7撃目 【謎の襲撃】


 正義のために戦うサイボーグ戦士『ジェノス』は、

サイタマの家を訪れ、自らの過去と、”強くなりたい理由”

について語り出します。


 元々はサイボーグでなく普通の人間であった彼は、

家族と共に平穏な暮らしをしていたそうです。 ――が、

そこに突如として現れた『暴走サイボーグ』が、それまでの

彼にあった”日常”の全てを破壊していきました。


 絶望する彼の下に、暴走サイボーグを止めるために

旅を続ける『クセ―ノ博士』が現れます。 ジェノスは

博士に頼み込み、自らの身体をサイボーグへと

改造してもらったようです。


 以来、彼は”正義のサイボーグ”として怪人を殲滅し続けて

きたわけですが、その『最終目標』は、飽くまでも

暴走サイボーグとの決着を付けること。

 しかし、その『大志』に目を奪われすぎて、他のことに

注意散漫になってしまい――そこから生まれた『油断』により、

思わぬ最期を迎えるところでした。


 その危機を救ってくれたことへの感謝。 そして、その時

放たれた『一撃』に心を打たれたジェノスは、サイタマに

弟子入りすることを決心したわけです。 ――が、


 そんな話を長々と聞かされていたサイタマは、ついに

ブチ切れてしまい、ジェノスに諭します。

 ”話が長いから、20文字以内で簡潔にまとめてこい”


 ――一方、人里離れた山奥に立つ、高層ビルのような

謎の建造物。 そこにいた研究者らしき人物は、自らが

造り出した【モスキート娘】がやられてしまったことを知り、

その『一撃』を放ったサイタマに興味を示します。


 ”先生のように強くなる方法、教えてください。”

 (句読点を除けば、19文字)

 言葉をまとめたジェノスは、改めてサイタマに

自らの想いをぶつけます。


 一応は『課題』をクリアしてきたジェノスに、サイタマも

真剣な面持ちで対応します。 そして、自らがしてきた

『トレーニング』を彼に教えることを検討するのでした。


 ――と、そんな彼らの下に、謎の襲撃者が現れます。

天井を壊して登場したのは、カマキリの姿をした怪人。

 自分の家を壊したその『不法侵入者』に、サイタマは

容赦なく一撃を食らわせ――外で待機していた二匹の

怪人たちも、秒殺します。


 しかし、『襲撃者』は彼ら達だけではありませんでした。

地中から飛び出してきた謎の”手”によって、サイタマは

地面から顔を出しただけのような状態に陥ります。

 更にそこへ、爆音と共に登場したもう一人――

全身に鎧を纏ったような姿のその怪人が、言い放ちます。

 ”オ前モ、サイボーグナノカ?”




 ジェノスの過去は中々に壮絶で、仮に画付きの回想シーン

として描かれた場合、多少なりとも目を惹くものに

なる可能性が高そうです。

 しかし、口頭で淡々と語られる話というものは、内容が

いかに奇抜なものであれ、聞く人によっては”単なる長い話”

として処理されてしまうことも、珍しくありません。


 ここでの”20文字以内で…”のくだりを始めとして、サイタマは

明らかに自分の損得勘定を加味した上で、”もっともらしい言動”

をすることに長けているように思えます。

 まぁ要するに、”自分がやりたいようにやる”ことを

前提としつつも、可能な限り”それらしく見せよう”という姿勢が、

彼の性格の本質的な部分にあるのでしょう。


 もっと簡単にまとめれば、”自分がどう思うか”が最優先事項

であり、”他人がどう思うか”は飽くまでも二の次――だけど、

だからと言って、それなりに他人のことを気にはしている。

 …といった具合でしょうか。


 いずれにせよ、”自分”が起発点となっているため、彼のその

言動は飾り気が少なく、『社交辞令』とは程遠いもの

であることがほとんどです。

 今の複雑な人間社会で、こういったスタイルを貫き通すことは

容易なことではないでしょうが……だからこそ、多くの人が

憧れる部分でもあるのでしょう。






 ②8撃目 【それコイツ】


 鎧を纏った、サイボーグと思しき怪人と対峙するジェノス。

 一方、地面に埋まったサイタマには、屈強な肉体をした

獅子面の怪人が迫ります。


 そして、サイタマを地面に引きずり込んだ、先程の

”手”の持ち主である、もう一匹の怪人も姿を現します。

 おおよそ実物と同じくらいのサイズと思われる、黒いモグラ

の怪人のようで、体には『土竜』の文字。

 名前は【グランドドラゴン】というそうです。


 サイタマの下に駆け寄ろうとするジェノスでしたが、

鎧の怪人に阻まれ、思うように動けません。

 怪人は自らを、『進化の家』の英知の結晶である、

【アーマードゴリラ】だと名乗ります。


 一方のサイタマは、獅子面の怪人が目前に迫る

状況の中でも、まるで動揺はありません。

 まるでマンホールからでも出てくるかのように、あっさりと

地面に埋まった状態から脱すると、”謝るなら今の内だ”と

怪人たちに言い放ちます。


 そんな様子に、獅子面の怪人――【獣王】は、その爪を

生かした凄まじい斬撃を放ちながら、サイタマを追い回します。

 家屋や鉄筋のビルを容易く切り裂くその威力は、

常人ならば即致命傷となりかねないものでしょう。


 攻撃を避け続けるサイタマに、獣王は筋肉を隆起させ、

必殺技である『獅子斬流勢群』を繰り出します。

 ――が、サイタマはその無数の斬撃の網を搔い潜り、

反撃に移ります。


 放たれた『連続普通のパンチ』は、獣王の肉体を

木っ端みじんに砕き、勝敗は決しました。

 更に、その様子を見て逃げ出したモグラの怪人も、

サイタマの追跡に遭い、あえなく『一撃』で葬られます。


 その一方――こちらでも、既に決着は付いていました。

 無傷のジェノスと、著しい損傷を負ったアーマードゴリラ。

 追い詰めた敗者に、ジェノスは攻撃の構えを見せながら、

冷徹に言い放ちます。

 ”質問に答えるか、このまま消滅するか――選べ。”


 しかし、アーマードゴリラからの返答は、ジェノスの

意図を外れたものでした。

 自分の実力は『進化の家』のナンバー3であり、

ナンバー2の実力者である【獣王】を相手にすれば、

お前に勝ち目はない。 ――とのことです。


 そこへやって来たサイタマは、今の話を聞いて、

自らの手にある獣王の『ひと欠片』に目をやりながら、

ボソッと呟くように言います。

 ”――それ、コイツじゃね?”




 さて今回は、サイタマが初めて(一応は)『技』らしきものを

披露した回となっています。 …が、描写を見る限り、

『一撃』でも十分に仕留められそうな雰囲気があるため――

これはサイタマの、(自宅の天井を壊されたことによる)怒りが

あってのものだという可能性が高そうです。


 そして、アーマードゴリラの台詞をそのまま聞き入れた場合、

現時点でのジェノスの実力は、獣王以下ということになりますが…。

 ゴリラとの戦闘で、ジェノスがどのくらいの『力』を見せたかが

はっきりしませんし…これは今回に限ったことではないのですが、

作中におけるジェノスの実力がどの程度のものかを

判断するのは、中々に難しいように感じます。






 ③9撃目 【進化の家】


 自他ともに認める、一人の天才科学者。 彼が執拗に

追い求めたものは、”人類の人工的進化”でした。

 しかしそれは、古くから人の文化の中で禁忌とされている

思想であり――自ずと彼は、孤独に陥ります。


 長い年月を経ても、その野望は衰えることを知らず、

齢70となった彼は、自らの体を使い、それまでの研究を

生かした『成果』を実現させていきます。


 肉体の若返り、そして自らの分身であるクローンの作成…。

 しかし、これらの革命的ともいえるような成果も、彼にとっては

『途中経過』にしか過ぎませんでした。


 その後も数々の実験を行ってきましたが、彼の最終目標

である”人類の人工的進化”については、まだ満足のいく

結果が残せていません。


 サイタマを狙って刺客を送り込んだのは、どうやら彼が

その夢を果たすための、またとない『材料』になると感じた

からのようです。


 『進化の家』の実態を知ったサイタマ達は、これを野放しに

してはおけず、すぐさま敵の本拠地へと向けて出発。

 去り際、ジェノスはアーマードゴリラから、”サイボーグ”に

ついての情報を引き出しますが、どうやら有益なものは

得られなかったようです。


 一方、進化の家では、『旧人類撲滅用』として誕生させた

生物たちが全滅――更にその相手がこちらへ向かっている

ことを知り、研究者”たち”は動揺が隠し切れぬまま、

どうにかその対応について話し合います。


 そして、至った結論は――万が一の場合、『切り札』を

投入するというものでした。

 しかし研究者たちの反応を見る限り、”それ”を使うリスクは

計り知れないもののようです。


 そのため、地上1~8階まである施設全体に様々な罠を

仕掛け、侵入者たちを撃退することにし――先程の提案は、

飽くまでも『保険』としておくことに落ち着きます。


 それから、4時間が経過し――サイタマとジェノスは、

無事に進化の家へと辿り着きました。

 大自然の中にそびえ立つ、無機質なその建造物を

サイタマはポカンとした表情で見つめます。


 一方のジェノスは、前方へ深く屈むような体勢を取ると、

両腕を一気に前へと突き出します。

 手の平から放たれた強大な熱線は、目の前の建造物を

一瞬で瓦礫の山へと変えてしまいました。


 ”…元気にしてたかい?”


 施設の地下にある、とある部屋を訪れていた研究者が

語りかけると、『それ』は苛立ったような視線を向けます。

 【阿修羅カブト】と呼ばれるその生物こそが、どうやら

この進化の家の”最強戦力”のようです。


 しかし、『彼』は鎖に繋がれた状態のまま、どうやら

地下のその部屋に、長い間閉じ込められている様子。

 研究者は、いかに高い性能を有しているとはいえ、

制御することができないその力を、持て余しているようです。


 苦渋の思いでここへやって来た研究者は、阿修羅カブトに

とある画像を見せます。

 それはどうやら、地下の出入り口付近に設置された

カメラから送られているもののようで――サイタマとジェノスは、

今まさに地下への潜入を試みているようでした。




 今回の話では、進化の家と、その主である科学者の

詳細が語られました。

 『マッドサイエンティスト』という言葉は、誰しもが一度は

耳にしたことがあるくらいによく使われる言葉です。


 これは単に、何かしらの創作物による影響によるもの

だけではなく、現実にもそういった『モデル』が、数多く

いるからのように感じます。


 この話のように、あからさまに危険な思想を持つような

人物は稀かもしれませんが、優れた頭脳を持つ人物、

『天才』と称されるような人間は、やはりどこかしら

”普通じゃない”考え方、物の見方をしている気がします。

 まぁ単純な話、だからこそ、『普通ではない成果』を

出せる人間なのだともいえますが…。


 例えば、犯罪者や殺人犯に対しても、私たちは『天才』

などという言葉を当たり前のように使っていますが――

私に言わせると、”天才なら、犯罪にならないような方法で

何とか出来ないのかな?”とか、”人を殺すという選択肢を

選んだ時点で、頭の良い人とは思えない気が…”なんて

ことを思ったりもするわけです。


 それにしても、阿修羅カブトに対し、圧倒的な性能が

あることを認めながらも、『失敗作』として扱う理由を

”品性が足りないから”だというのが、個人的に少々

心に引っかかった部分です。


 この『品性』という言葉は、中々に面白いです。

 その概念は客観的、あるいは普遍的なものにも思えるし、

それと同時に、主観的なもののようにも感じます。


 例えば、”人として最低限の品性”がどんなものかと

問われれば――時代や環境に差異がない人たちであれば、

ある程度は共通の感覚を持っているような気がするのですが、

”最高の品性を持った人”がどんな人かと問われれば――

その答えは、千差万別になるような気がします。


 さて、最近はギャグ的な要素が少ない気もする本作ですが、

今回の話では、”地上1階から8階に無数の罠を仕掛け…”

という『フリ』からの、ジェノスの容赦ない建物破壊シーンが、

凄く綺麗に決まっていました。


 そもそも、建物内に他にも捕われている人とかがいて、

その人には何の罪もなくて…みたいな可能性を考えれば、

あの速攻での破壊は、あまりに短絡的過ぎるのでは?

――と、冷静に突っ込んでみたり。


 でも、キャラクター的に考えると、サイタマが同じことを

やったとしても、別に全然、違和感はない気がするんですよね。

 こんな風に感じる場面は、今後の展開でもたびたび

登場するのですが……ジェノスが登場して以降、サイタマは

彼の見守り役というか、あるいはツッコミ役を受け持つ

ことが多く――自然と、客観的な見方をすることが

増えてきたようにも思えます。






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