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「…んあ…?」
窓から朝日が差し込んで来て、俺の目を照らす。時計を見ると6時55分ほど。周りのベッドを見ても、誰もいなかった。それもそのはず、朝食は7時からなのだ。俺は慌てて着替えて、食堂に向かった。
「遅かったな、竜斗」
食堂につくと、優也と稟矢に、執事、そして見知らぬ男…いや、オジサンがいた。かなり渋い感じの人で、不覚にもかっこいいと思ってしまった。俺は執事に案内されて自分の席に座り、二人に一つ尋ねた。
「なぁ、英兎はどこだ?」
「さァな、朝から姿がなかったんだ。どうせ朝の散歩にでもでかけてるんだろ?」
と稟矢に言われ、まぁそんなことだろうなと俺は納得し、食事を始めた。昨日の疲れからか、はたまた料理人の腕によるものなのかはわからないが食事はとてもうまかった。俺はガツガツ食い、先に食べ始めていた二人と同じくらいのタイミングで食べ終わった。
俺は執事に尋ねた。
「あそこに座っている人は誰です?」
「ああ、あの方は館の主人である旦那様です。この地方を治めていたり、この館から少し離れたところにある町の【夢見館】という旅館の経営もしております」
俺は意外そうにうなずくと、主人が
「あとは私が自分で紹介しよう。私は天田羅、天田羅龍之介と申す。さきほど述べたように、地方を治めたり旅館を経営してはいるが、それはほぼ建前で、実際はほぼ毎日館でごろごろしている」
俺は天田羅さん見て、とてもごろごろしているとは思えないなぁと思った。体格は割とよくて、筋肉もしっかりあるようだ。歳はそこそこあるようだが、俺たちの中から誰かがタイマンしても多分勝てないと思った。
「ああ、ご紹介が遅れました。私執事は時和田といいます。何か不都合や疑問があった際は、なんなりと私にお申し付けください…」
俺たちも一応名前だけの自己紹介をした後、食堂を後にし、いろんなところを見て回ることにした。この館に滞在するのもせいぜい一日なので、せっかくならいろいろ見て回りたかったのだ。
俺たちはひとまず玄関ホールに向かうことにした。そこで優也は一回から見て回りたいという意見に対し、稟矢は二階からと意見が分かれた。俺は言い争う二人をよそに、床のカーペットの染みに気付いた。
どうやら何かの液体らしい。染み込んでからまだあまり時間が経っていないようだった。俺はその染みに指の先で触れて、指を確認すると赤く染まっていた。どうやら血らしい。
俺は不気味に思いつつも、ズボンで指の血を拭き取り、館内の探索を再開することにした。
―――――
鍵がかかっているところ以外、一通り見終わった後には時計は11時半をこえていた。俺は、一つ気になっていたことを二人に話した。
「なぁ、英兎のヤツ、いくらなんでも遅くないか?」
そういうと、優也が俺に同調して
「だよな!俺もずっと思ってたんだ」
気になった俺たちは外にでて英兎を探してみることにした。何やら稟矢は嫌な気配を感じ取ったのか知らないが、館に残るといい、玄関に俺たちを見送りにだけ来た。
「じゃー英兎を探してくるから!見つかんなくても夕方には戻るからー」
俺はそう言って玄関のドアノブに手をかけた瞬間だった。あたりに霧がたちこみはじめて異様な空気が漂った。それと同時に、俺…いや、俺たちは背後の殺気に気付いた。恐る恐る振り向くと、般若の面をかぶり、刀を持った謎の男がいた。
俺と稟矢は恐怖で全く動けなかったが、優也の
「うわああああああああああッ!!」
という叫び声で俺たちはハッとして、精一杯の力で足を動かし、逃げ始めた。玄関は鍵が閉まっていることに気がついた俺は、階段に居座っている般若のせいで二階には行けないと判断し、右の廊下に二人を連れて逃げた。
ダダダダダという足音が響く中、俺はザシュッという音を聞き取った。優也もその音を聞き取ったのか後ろをふりかえると、先ほどまで階段にいたはずの般若がすぐ後ろまで来ていて、手の刀で稟矢の腹を貫いていた。
俺は恐怖で硬直し、先ほどまで叫び続けていた優也も完全に固まっていた。般若は稟矢から刀を勢いよく抜き取り、床で叫びながらもだえる稟矢の頭に突き刺し、そしてまた勢いよく抜いた。
二つに傷穴からドクドクと血が流れ出て、床のカーペットに染み込んでいく。もう動かなくなった稟矢を踏みつけ、般若はこちらに向かってくる。
俺は完全に固まってしまい、涙で顔が濡れ、挙句の果てにはその場に座りこんでしまった。優也はなんとか後ずさりできているようだが、俺はもう駄目だと感じ取っていた。
再び般若のほうを見ると、さっきよりも近い位置に般若が見え、次の瞬間、ものすごい速度で俺の前から般若が消え、俺の首が落ちた。
首がゴロゴロと転がり、優也のほうに向いた。俺はもうほぼ何も見えていなかったが、最後に腹を何度も刺されてもだえている優也が見えたような気がした。




