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背筋が凍ったって

 真面目に並んで検問を受けている人たちを横目にゆっくりと音を立てないように通り抜けていく。


 どういう原理で消えているのか俺には理解できないが、明らかに視界に入っている場所を歩いても誰も反応がない。自分自身では消えている感覚はまったくないので不思議な気分になる。


 こうして検問を見ていると、案外ちゃんと調べていることがわかる。

 身分証のようなものを提示させ、一人一人確認している。


 毎日これほどの人数を確認してれば、そりゃ個人のことなんてよっぽど印象に残らない限りは覚えてないよな。シャルみたいな美少女だったら門番のおじさんの記憶に残ってしまいそうだな。


「そこのお前、ちょっとこっちに来て顔を見せろ」


 喋りかけられた気がして、声のしたほうへ振り向く。


 すると、門番のおじさんが俺たちの方向を向いて怪しむような表情を浮かべていた。


「す、すいません。別に隠してたわけじゃないんです。この布をボブロンで売ったら儲かるだろうと思って……」


 またもや後ろから声がする。


 大きな荷車を引く、男性が慌てていた。


 ビックリしたぁ。完全に俺たちのこと言ってるかと思ったわ。どんな奇跡起こしてるんだよ。


「その箱の中身は本当に布なのか? お前は商人か? それなら販売許可証をもちろん持っているんだよな?」


「ひぃっ、実はまだ許可証を貰えてなくて……ボブロンはそういうところに甘いから大丈夫だろうって商売仲間から聞いてやってきたんです。ちゃんと許可証を貰ってから販売するんで許してください」


 なんの話をしているのかよくわからないが、この商人らしい男の人が何やらずるをしようといていたってことなんだろう。別に俺たちには関係のないことだし、このタイミングでさっさと町へ入ってしまおう。

 無駄にビビらせんなよ。シャルを疑うわけじゃないけど、初めて使うステルス機能だったし、どうしても不安はあるもんだよな。






 門番のおじさんが、商人の男の人にかかりっきりになっている隙に俺たちは門を通過し、町の中へ入って行った。


 商人の人には悪いが、気を引いてくれてありがとう。ステルス機能で見えてなかったとはいえ、道を開けてもらえたのは素直に助かった。見えないだけで、人が多かったら事故で接触してしまう可能性もあったもんな。


「もう大丈夫ですね。ご主人様と密着できて私は幸せでした。もう少しこのままでもよろしいでしょうか?」


「勘弁してくれよ。俺だってドキドキしてたんだからな。これ以上は俺の精神力じゃ持たないぞ」


 わざとやってたのかよ。それじゃあ、密着しないと使えないってのももしかしたらシャルが適当にでっち上げたのかもしれないな。


「そういや、今のステルス機能ってどういう原理で姿を消してるんだ? ちょっと気になっただけだから難しいんなら別にいいけどさ」


「すごく簡単に説明すると、私が作り出したフィールドに景色を映し出していると言ったところでしょうか。違和感なく風景に溶け込むのは至難の技なのですが、私に搭載されている機能を使えば簡単に解決です」


「へぇ、あんまりピンと来てないが、とにかく消えるって言うことが大事だもんな。また使う場面があったらよろしく頼む」


 わかったふりをしてもいずれぼろが出てしまう。

 俺のレベルでわかるような機能なら、俺が想像していたロボットたちにもこの機能が搭載されてないとおかしいもんな。でも、この機能を理解できたら、新たに想像する分には搭載できるんじゃないか? 俺がシャルからどんどん技術を盗んでいけば行くほど、俺が想像するロボットたちが強化されていくっていうわけだな。最強だな。でも、値段もきっと上がるんだろうな。いくら高性能なロボットを想像したところで買えなければ何の意味もないってところが俺の能力のネックだな。


「私はご主人様のお役に立つことが喜びなのです。いつでもなんでもおっしゃってください。何としてもご主人様の希望をかなえて見せます」


「そんなに重く考えてなくてもいいから。でも、今のはちょっと焦ったよな。完全に、ステルスが見破られて、俺に話しかけてるのかと思ったよ」


「前方の人間が邪魔だと思っていたちょうどいいタイミングでのアシストでしたね。あの方の活躍がなかった場合はレーザーで正面突破しようか考えていました。もちろん痕跡は残しませんので、誰が犯人か一生わからない、完全犯罪です」


「物騒なこと考えるのはやめてくれよ。人間は簡単に殺したりしちゃダメだ」


「ですが、ご主人様の目的の邪魔になる存在を排除することは私の使命です。ご主人様に比べればその他の人間など塵同然です。なんの価値もありません」


 思考回路がぶっ飛びすぎてる。じいさんももう少し倫理観を持たせとけよ……。

 この調子だったらいつか人間を殺してしまいそうな勢いだよな。俺の方から釘を指しておかないとまずいかもしれない。


「邪魔だからって人間に危害を加えるのはなしだ。明らかに悪意を持って攻撃してきた時を除いて、攻撃するのはエヌジーだからな。シャルなら守れるよな?」


「わかりました。ご主人様の命令とあらば」


 これで、人間に危害を加えることはなくなったはずだ。

 いきなりレーザーとか打たれたらまずいからな。

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