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俺の出番はなさそうだ

「ご主人様の能力がゴミなんてそんなことは絶対にありえません。私もご主人様の能力があったおかげでこの世に存在しているのです。そんなに悲観的にならないでください」


 そうは言っても俺が前世で考えていたマカロフシーズはシャルからしたらゴミでしかない。ただのでかいだけのロボットだ。そんなロボットで魔王を倒そうとしていた俺がいかに滑稽なことか。優しいシャルだから何も言わないが、別の誰かだったら俺の無駄な努力を笑っているだろう。


「ありがとう。俺ももっと頑張って新しいロボットを創造しないといけないみたいだな。でもそれが実際に買えるようになるのはいつかわからないってのがきついところだな」


「私が頑張ってお金を稼ぎます!! ご主人様はロボットの創造に力を注いでください」


「それじゃあ、俺がシャルのヒモじゃないか。いくら戦力にならないからって俺が一緒に戦わないわけには行かないだろ。シャルだけを危険な目に合わせるなんて俺にはできない」


 だが、正真正銘俺は足手まといでしかないんだよな。シャルがモンスターを薙ぎ払うのを横で見ているくらいが関の山だ。むしろ、それすら巻き込まれる可能性があるから邪魔になるかもしれないな。


「ご主人様がいれば私のパワーは何倍にもなりますから。横にいてもらえるだけでも感謝です」


「そう言ってもらえると嬉しいな。それじゃあ、まずはお金を稼ぐために冒険者になるとするか。町までの案内を頼んでもいいか?」


「はい、もちろんです。ここからだと一番近い町はボブロンですね。それほど大きな町というわけではありませんが、冒険者ギルドもありますのでこちらで問題ないと思います。ご主人様、足が疲れるといけないので私が肩車しましょうか?」


「遠慮しとく。もう俺がロボットに搭乗したいって言ってたの引っ張らないでいいからな。自分の足で歩けるから心配するな」


 メイドのような恰好をしている女の子に肩車されて移動する自分の姿を想像しただけでも恥ずかしくて死にそうだ。もし、誰かに見られでもすれば、一週間は寝込む自信がある。


 流石は万能というだけあり、町の位置なんかもばっちりみたいだ。すぐに一番近い町を探してくれて、そこへの案内を開始してくれている。シャルがいてくれるだけで転生後の人生がイージーモード化してる気がするんだが、流石にやりすぎなんじゃないか?






 しばらく歩いていると、前方に外壁に覆われた町を発見した。


「あそこに見えるのが、ボブロンです。モンスターの侵入を防ぐために、周囲を壁で覆っています。この世界ではどの町も基本的にはこのような構造になっています。強力なモンスターの攻撃を防ぐほどの防御力はありませんが、そもそも町の近くまでモンスターの接近を許すことが少ないようなので危険はないということらしいです」


「へぇ、それじゃあ、接近してきそうなモンスターは冒険者たちが討伐してるってことだよな?」


「その通りです。流石はご主人様ですね。強力な個体が接近しそうな時などは緊急クエストというものを発令して、町にいる冒険者たちの総力を結集して討伐にあたるのようです。滅多に発令されるものでもないので、今すぐに気にする必要はないかと思います」


 シャルのデータバンクにはこの世界のほぼすべての知識が入っているレベルなんだろうな。冒険者のことも詳しすぎる。情報収集をする必要がないということがこんなにも楽だなんてな。ほかの転生者たちには悪いが、俺は楽をさせてもらう。


「ご主人様、止まってください。町に入るには検問を通る必要があります。今の私たちは、身分を証明するものも何も持っていない状態なので、素直に通してくれるかわかりません。なので、私のステルス機能を使ってこっそり入りましょう」


「こっそり入ったりしてまずくないのか?」


「門番も町へ入った人、全員を把握しているわけではありませんので、大丈夫です。冒険者登録する際に渡される冒険者カードさえ、貰ってしまえば身分証として扱われるので次からは堂々と通れます」


 検問に門番。ないも知らない俺がそのまま通ろうとしていたら面倒なことになってたんだろうな。


 それよりもシャルが言っていたステルス機能のほうが断然気になる。名前の通り消えることができるっていう解釈であってるんだろうか。


「申し訳ないのですが、私に掴まってもらってもよろしいですか? ステルス機能は強力なのですが、範囲が狭いので密着してもらわないとカバーしきれません。暑苦しいかもしれませんが、少しの間我慢していただけますか?」


「ああ、大丈夫だ。シャルに頼りきりになって、俺のほうこそごめんな」


「そんな、ご主人様が謝ることなんて何一つありません。当然の義務をまっとうしているに過ぎません。では、失礼します」


 ピタッと、シャルが俺の右手にくっついてきた。

 え? そんなに密着しないとダメなのか? 

 本当にロボットなのか疑わしいほどに、俺の右手に当たっているシャルの体は柔らかかった。


 女の子の体に触れたことのない俺には刺激が強すぎる。

 これは検問を抜けるためにしていることなんだ。シャルはロボット、シャルはロボット。


「ご主人様? どうかしましたか?」


「いや、何でもない。早く行こう」


 未知の感触に耐えながら、俺たちは町の入口へと向かった。

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