我、巨大ロボットを望む
「ちょっと待ってくれ。じいさんは誰なんだよ? それにここは?」
見知らぬ空間にまるで見覚えのないじいさんと二人きり。これは一体どういう状況なんだ?
「おぬしを生き返らせて転生させてやるといっておるのじゃよ。どうじゃ、涙が出るほど嬉しいじゃろう?」
生き返る? どういうことだ? ……そうだ、俺はグレートロビンソンで坂を下っているところを何かに乗り上げてそのままトラックにはねられたんだ。ここは死後の世界だというのか?
「その顔はようやく自分の身に起きたことを思い出したようじゃな。暗くなっているというのに、スピードを出しすぎたおぬしの落ち度じゃぞ。こうして転生の機会を貰えたことは不幸中の幸いじゃったな」
「転生って言うのは俺が俺のまま生き返れるって言うことか?」
「その通りじゃ。飲み込みが早いようで助かるのう。しかしじゃな、そこはおぬしのいう通りなんじゃが、元の世界に戻すことはできん決まりでの。次の人生は異世界で送って貰うことになるからの」
はは、もういっそ夢だって言われた方が納得できるな。
このじいさんによると、俺は異世界で新たな人生を送るとことができるという話だ。現実味がなさすぎる。
「いくつか説明しておかんといけんことがあるんじゃが、まずはおぬしに授けるチート能力じゃな。おぬしがこれから転生する世界にはモンスターという存在が生息しておる、その頂点に魔王と呼ばれる個体が存在しておるんじゃが、最終的な目標はこの個体の討伐じゃ。これを成し遂げるためにおぬしには能力を授ける。しかしじゃな、一定以上に強力なものは世界から拒絶されてしまうんじゃよ。バランスが大事なんじゃ」
チート能力? モンスター? 魔王? 情報量が多すぎる。そもそも頭が追いついていないってのに、追い打ちをかけるかのように責め立てて来るなんてこのじいさん、スパルタ過ぎないか。
一回落ち着こう。まずは、俺が貰えるチート能力についてだな。これは、よくわからないが簡単に言えば強い能力が貰えるって言うことだよな? でも一定上のものは無理と……魔王を倒すのを目標にするんなら余裕で倒せるくらいの能力を授けてくれよな。
「それって、どれくらいのラインまでならいけるんだ?」
「後のお楽しみじゃな。能力をあちらの世界に持っていけたかどうかは向こうについてから確認せんとわからん。まあ、それじゃわからんじゃろうから前例として持っていけなかった能力を教えておくか」
高望みしたら終わる可能性があるってことか。そこまで強力な能力がほしいっていうわけじゃないが少し妥協するくらいがちょうどいいって話だな。
「任意の相手を即死させる能力、後だしじゃんけんで勝ったら対象を即死させる能力、自分以外のすべての生命体を即死さる能力、こういうものはダメじゃったな。聞いただけでも強力無比な能力じゃろう? こやつらは全員能力なしで異世界へ転生し、すぐに死んだ者、一生町から出ない人生を送っておるものと様々じゃ。強欲すぎるのも罪じゃということじゃな」
確実に相手を殺せる系の能力は軒並みダメだってことだな。後だしじゃんけんは相手が応じなかったらゴミな気もするが、そこら辺の判定は俺にはわからないな。となると、俺の大好きなロボット関連で能力を授かるのなら問題はないんじゃないか?
「そのほかには何かあったのか? これだと、例としては極端すぎる気がするんだが……」
「そうじゃの。ほかのものは共通点がないから覚えておらん。一つ言えることと言えば無条件に強力すぎるものは持っていけないことかの」
チート能力ってのは無条件に最強なものなんじゃないのかよ。
しかし、この無条件にってところがみそだな。誓約を付けてしまえば問題なく能力を選べそうだ。
「例えば何だが、創造したロボットを無限に精製できるって言うのはどうだ? これだと危ないか?」
「微妙なラインじゃな。おぬしの想像力が乏しいならば通りそうじゃが、おすすめはせんな」
「やっぱりか。ありがとう。もう少し考えてもいいか?」
「よく考えるのじゃ。おぬしの今後の人生を決めるターニングポイントじゃからな。失敗すれば地獄のような人生が待っておることを忘れるんじゃないぞい」
創造したロボットっていうところは譲れないからほかで妥協するしかない。何体までっていう制限を付けるか? いや、それじゃあ味気なさすぎるな。性能に制限を付けるのも論外だし……。
「迷っているようじゃな。わしからアドバイスをしようかの。先ほどおぬしが言った能力じゃが、お金を払うって言うのはどうじゃ? それ相応のお金を払うことで条件付きの能力になるじゃろう? 性能に見合った金額を勝手に能力が算出してくれるはずじゃ」
確かにそれなら条件が付いてて使い勝手はかなり悪くなるな。流石にこの能力がはじかれることはないだろうし、じいさんのアドバイスに従っておくか……待てよ。それじゃあ、金がないとずっと一般人のままじゃないか。
「待ってくれ。その能力だと、俺は金を貯めるまで能力なしの人間と変わらないじゃないか」
「うむ、そうじゃの。わしとしたことが失念しておったわ。よし、わしが最初の一体はサービスしてやろう。最強クラスのものを授けてやろうじゃないか」
「そんないいのか? それは俺が創造したものになるんだよな?」
「それは難しいのぉ。わしから授ける訳じゃから、わしが創造したものになるかの。おぬしはロボットが好きなのじゃな?」
「大好きだ。俺の人生をかけてもいいくらいには大事なものだ」
当然の答えだ。俺にとってロボットとは人生そのもの。巨大ロボットに乗って異世界を自由に生きていくのを想像するだけでもワクワクが止まらない。少しでも俺の意見を反映したものがほしいな。俺が搭乗できる巨大ロボットにしてほしいって伝えておくのが無難か。
「希望くらいは出してもいいよな」
「皆まで言わずともおぬしを見ればわかるわい。おぬしの好みに合わせた最高のロボットを授けてやるから安心せい」
「ほんとか? 信じていいよな」
「くどいぞ。わしはこれでも神じゃ。人間の考えておることくらいお見通しじゃ」
大サービスだなこりゃ。一体でもロボットを持っていればそれ以降金を貯める速度も段違いだろう。これは我ながらいい能力を選択できたんじゃんないだろうか。待ってろよ、巨大ロボット!!