第8話 木 を 切ろう!
青銅の斧を買ったので、早速使ってみることにしよう。
町を回っていた時に門番の人に森がある方向を尋ねて確認している。町の北、南、東側には草原が広がっていたが、西側は森が広がっているとのことなので早速そちらに向かうことに。
出るとき、門番に相変わらず危ないと言われたが、これはもしかして適正ではないということだろうか。
だがこちらにしか木がないし、戦闘をすることもないと思うので、気にせず森に行く。
まあ、もしモンスターに攻撃されそうなら町のほうに逃げればいいだけだし、逃げやすいように森の淵でやっておけば問題ないだろう。
「さて、それじゃあ木を切ってみますか」
※※※※※※※※※※
町から歩いて数分の位置にある森。
そこの淵でコーン、コーンと甲高い音が森に響き渡っている。
物は試しということで、目についた木を切ろうとしているのだが、これが結構時間がかかる。
10分ほど斧を叩きつけて、ようやく1本目の木が倒れそうなところまで来た。
「うーむ、意外に時間がかかるか」
俺がひたすら斧を振っている後ろでは、ネルが俺の後ろで俺の木を切っている姿を見ていたが、その表情はなんとなく謝っているような感じだ。
最初、俺だけじゃなくテイムしたモンスターも木が切れるのかと思ったが、どうやらネルにはできないらしい。
斧を渡そうとしたら首を横に振られてできないってことをアピールされた。
偏見になってしまうかもしれないが、あの細腕の女性に木を切ってもらうというのも、傍から見たらおかしい感じになってしまうか。
ひとまず、気にしないよう声をかけてから、俺は1本しかない斧を振ることに。
「これで1本目ってところか」
目の前で豪快な音を立てて木が倒れていった。
って、これ周囲を確認しておかないと巻き込んでしまうな。
次からは倒れそうになったら注意しておくとしよう。
『スキル「伐採」のレベルが2に上がりました』
「おぉ、スキルのレベルが上がった」
「―――♪」
木が倒れると時同じく、スキルのレベルが上がってくれた。
どうやらスキルのほうは使っていくことでレベルが上がっていくらしい。
たしか、伐採にかかる時間が短縮ってことだから、次はもう少し早くなるか?
木が倒れたこととスキルが上がったことで拍手して嬉しそうにしているネルにお礼を言いながら、俺は倒れた木に視線を向ける。
「さて、倒した木を見てみるか」
使っていくことでレベルが上がるなら、他のやつもあがるのではないだろうか?
ということで、早速伐採して倒れたままの木を『鑑定』で見てみることで。
「やっぱり、最初の町ってことでレアリティは低いか」
――――――――――
名称:木
レアリティ:☆1
品質:G
説明:伐採された木。伐採されたばかりのため、使用するには加工が必要。
――――――――――
やはりそこはまだ始めたばかりの町の近くのものだからか、レアリティは低いままだ。
ただ、レアリティは色々な町に行くと上がっていくのだろうか。そこは今後色々な物を切っていけばわかるか。
「加工が必要ってことだから、早速やってみるか」
倒れた木に対して、次は『加工』スキルを使ってみることに。すると…
「おぉ、木の板の厚さとか決められるのか」
普通生木ってすぐに使えないと思ったが、どうやら乾燥やらの工程がここで行われ、いちいち待つ必要がないらしい。
乾燥させた上で、それをどのような木に加工するかを自由に設定できるようになっていた。
「ネルどれくらいの大きさの木が欲しいんだ?」
俺としては適当な大きさの木で問題ないので、今欲しいであろうネルに聞いてみる。
ネルは大きさを手で表してくれており、長さ30センチほど、直径3センチくらいの棒状のものがいいというのがわかった。
そのような細かい加工もできるようで、まだ最初のお試しということで何個か同じものを作ってみることに。
「試しにその大きさに何個か加工してみるから、それで判断してみてくれ」
この『加工』というスキルは、対象に向けて「加工」と言うことで使用するもののようだ。
倒れた木に対して加工をしてみると、ネルが欲しいであろう長さ30センチ、直径3センチの棒が5個できた。
――――――――――
名称:木材(棒状)
レアリティ:☆1
品質:G
説明:加工された木材。
――――――――――
「倒れた木の一部が無くなって、その分加工されたものが入手できるのか」
俺の目の前に、新たに『木材(棒状)』というものが5個入っていた。
加工された木材を見てネルは喜んでいるので、これで合っていたようだ。
何に使うかはまだわからないが、確認するとこれだけあればいいということなので、残った部分については何かに使えるであろう木の板にして、伐採した木材は全部使いきることに。
――――――――――
名称:木材(板状)
レアリティ:☆1
品質:G
説明:加工された木材。
――――――――――
「端材とか出ないから便利だが…とりあえず、これで欲しいだけの木材は手に入れたな」
幸い、加工までやっている間にモンスターに襲われることはなかったからいいものの、あまり長居するとモンスターが来てしまうかもしれない。
なので、一旦ここは町に戻ることに。
※※※※※※※※※※
戻ってまいりました、ウヌの町。
この加工した木材を使って何をするかだが、これってネルが何か作る以外だと売り払ったりできるんじゃないか?
そうしたら斧を買った分くらいは元を取れそうな気がするから、後で売ることが出来そうな場所を探すとしよう。
「いつもの広場に戻ってきたところだが、ネルはこれで何をするんだ?」
広場にあったベンチがちょうど空いていたので、そこに腰掛けてネルが欲しがっていた木材を渡す。
ちなみに俺の目の前で浮いたままなので、やはり周りプレイヤーからは見られているっぽいな…
彼女は木材を受け取ると、木材を上を見て、下へ見てと様々な角度で確認したあと、両掌に乗せてじっと見つめる。
「…これは、笛か」
どうやらスキルの工作を使ったのか、一瞬手の上の木の棒が柔らかく光ったと思ったら、そこには木の笛があった。
フルートみたいな横笛みたいなものだが、これで演奏するのだろうか。
彼女は手の中の笛を満足そうに見つめている。
「笛ってことは、ネルがこれで演奏するのか?」
笑顔で頷いているってことは、どうやら当たりらしい。
たしか、彼女には『芸術』スキルがあったから演奏はできるのだろうから、それを見越して欲しがったのかな?
まあ、俺が持っていても使うことはないだろうし、何より使い方がよくわからないからいいか。
「早速演奏してみるか?」
演奏する気が満々だったようで、彼女は笑顔のまま横笛を構え、そして吹いてくれたのだが…
「うーむ、まだまだ『芸術』のレベルが低いから、そこまで上手ってわけでもないか」
なんとか音は鳴っているが、音楽かと言われるとそうでもないだろう。
あくまで、子供が楽器を買ってもらって音を鳴らしているような感じだ。
だが、そんな様子でも彼女は楽しそうに音を鳴らしているので、それを指摘してやめさせることもないだろう。
それに、演奏を続けていればレベルが上がって演奏がうまくなる可能性もある。なら続けさせてあげるのもいいだろう。
「よし、ならネルはそれを吹いたままでいいから、俺のあとをついてきてくれ」
次は、余った木材を売ってお金にしてみよう。
それを売れる場所を探すため、町の中を歩いて回るか。
腰かけていたベンチから立ち上がり、俺はまた町の中を歩き回ることにする。
さっきと違うのは、俺の後ろをついてくるネルが漂いながら楽しそうに笛を吹いているってところだ。
…また注目度が上がった気がするぞ。
お読みいただきありがとうございました。
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