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第3話 アイテム を 使ってみよう!

 キャラクター名は名前をもじって『ふぁる』としてみた。

 名前の重複はダメだったので、あれやこれやと試してみたら、なんとか平仮名で通った。

 まあ、読んでみた感じ弱そうだから人気ないんだろうなぁ…


 職業は迷ったが、どうやらこの世界にいるモンスターを仲間にできて連れていけるということで、『テイマー』というものにしてみた。

 最初は弱いモンスターしか仲間にできないらしいが、これも職業レベルが上がることで色んなモンスターを仲間にできるらしい。

 モンスターの中には、『種族』選択でみたような、現実で飼われているペットのようなものもいるようで、現実でペットを飼うことが出来ない人がテイマーを選択したりするようだ。

 のんびり世界を見て回ってみたい俺としては、旅のお供がいるとちょうどいいだろうし、何よりペットを飼ってみるってのも悪くないと思っていたのでちょうどいい。


 こうして『職業』を選択し、これであとはゲームスタートというところで、『ピコン』という音とともにウィンドウが目の前に現れた。


「ん、なんだ?えっと…『称号:【造形愛の塊】を入手しました。』ってあるけど…」


 なんだこれ?

 思わず首を傾げるが、説明文がウィンドウにつらつらと書かれているので、目を通していく。


「『これはユニーク称号です。キャラクター作成に途方もない時間【合計100時間】を最初に費やした方に贈られる称号。選択した職業に応じてアイテムを付与。』」


 なんか、ゲームを始めてすらいないのにアイテムをもらったのだが?

 そして『ユニーク称号』とは一体何なんだろう?

 ゲームを始める前から色々と疑問点が浮かび上がったが、どうやらもらえるアイテムはゲームをスタートしないと確認できず、今から調べようとしても一時的に多重起動が不可能なエリアということで、そのままゲームをスタートするしかない。


「ま、あとで調べてみるか」


 ウィンドウの下に『ゲームスタート』のボタンが出てきたので、それをタッチしてゲームの中へ。



※※※※※※※※※※



「おぉ…」


 タッチした瞬間、それまでいたキャラクター作成空間の無機質な白い部屋が消え、俺を包み込むようにOPムービーが流れ始めた。

 俺の周りにはこのゲームの世界であろう風景が、音楽とともに前から後ろへ次々と流れていった。


「こんな世界を体験できるのか…」


 雄大な山々はもちろんのこと、広々とした草原、荒々しい火山、寒々とした雪原、荒々しい海など、自然の壮大さを感じさせる映像が音楽に合わせ次から次へと流れていく。


「っと、まぶしっ」


 映像の最後、白い光が俺を包んだため、思わず目を細める。



『ようこそ、Free Adventure ONLINEへ』



 その音声が流れ、目を開けてみると、俺はゲームの世界にいた。


「これがゲームの世界なのか」


 あたりを見回すと、ゲームの中はちょうど昼間だったこともあり、周囲がどういうものなのか確認できた。ちょっと大きな町にある噴水がある広場ってところか。

 世界観が中世から近世の欧州ってことで、周囲の家々はレンガつくりの建物で、昨今のコンクリートジャングルとはかけ離れた世界だ。

 写真や映像でしか見たことない欧州の町に飛び込んだようで、それだけでも興奮するが、そこを地味目な服の人が行きかっている。その合間を縫って鎧や武器なんかを手にした美形の人も歩いているが、これがプレイヤーかな?

 周囲の人は、会話をしたり買い物をしたりと、町での生活を堪能しているようだ。

 まだなんの説明も受けてないから、一見してNPCとプレイヤーキャラクターの区別が見た目でしかわからないが、パッと見ただけではこれが現実と言われても違和感がないほど作り込まれているなと感じられる。


 周囲の風景に気を取られてあれこれと見やっていると、時折色んな人がこちらを見ることに気づく。

 が、地味さを追求したのが功を奏したのか、こちらに目をやってもあまり注目されることなく、すぐに視線をそらされた。


 うんうん、これくらいの注目のなさのほうが気楽でいい。


「お、なんかアイコンがあるな」


 こっちに注目されないことに納得し、周囲の風景を存分に見ていると、視界の隅に『!』が映った。そこに視線を持っていくとメニュー画面が視界いっぱいに広がった。

 開かれたメニュー画面には『アイテム』『装備』『ステータス』『スキル』『フレンド』『インフォメーション』『ログアウト』とあり、『ログアウト』を除く全ての項目に『!』がついていた。

 こっちはまだゲームを始めたばかりなので、とりあえず『インフォメーション』から見てみよう。


「チュートリアルがあるな」


 実は、キャラクター作成期間、攻略情報にはあまり目を通さず、公式サイトのキャラクター作成のページや攻略サイトの初心者向けの部分を軽く眺めているくらいにしていた。こういうゲームだからあまり先入観を入れないでやってみたいなと思ったからである。

 まだまだひよっこの俺としては、操作方法を学ぶということで『まずはメニューを開いてみよう!』というチュートリアルから目を通す。

 説明を読んでみるとメニュー画面の開き方は『メニュー』と声に出すことで開かれるようだが、メニュー画面内にあった各項目はメニュー画面を開かなくても各項目を口に出せば開けるとのことだ。

 あと、『メニュー』は視界いっぱいに表示されているが、その間もキャラクターが動かせるようだ。

 まあ、目の前いっぱいに文字が表示されて動かすのに邪魔だけど。


 ただ、『メニュー』からいける各項目のウィンドウは拡大・縮小・変形して動かすことができるらしい。試しに『アイテム』を開いて縮小し、視界の右隅に邪魔にならないよう細長くしてみた。


「そっか、さっきアイテムもらってたな」


 『アイテム』ウィンドウを横にやっていると、所有している『アイテム』一覧が表示されている。そこに1個だけあるアイテム。

 先ほどの称号獲得と共にもらえたアイテムだ。

 まだチュートリアルが続いているのでアイテム欄を説明するウィンドウも表示されているが、やはりさっきの説明文にあったアイテムは気になる。


「アイコンはなんか、卵っぽい見た目だな」


 『アイテム』欄にあるアイコンを見てみると名称とともに説明文が表示された。


――――――――――


 名称:造形愛の卵

 レアリティ:☆5

 耐久値:―

 説明:ユニーク称号「造形愛の塊」を『テイマー』が獲得した際のアイテム。使用することで卵が孵化。卵が孵化することでモンスター1体が仲間となる。


――――――――――


 『造形愛の塊』という称号獲得に併せてもらえたアイテムで間違いないらしい。どうやら職業に併せたアイテムという説明が称号獲得時にあったとおり、『テイマー』を選択した俺には『卵』が贈られたようだ。

 『卵』というものは、中にモンスターが入っているというのは公式サイトに目を通したときに確認した。『卵』というものは孵化することでモンスターが生まれるらしい。孵化するためには機材が必要になると書かれていたと記憶している。

 そして、『卵』というものは通常、テイムしたモンスターの交配で手に入れるか、モンスターの巣でなければ手に入らないとの情報があったはずだ。

 それが、まさかの使用することで孵化する『卵』が手に入るとは。


「なら、これは使っても問題ないってことか。えっと、使い方はどうするんだ?」


 チュートリアルの説明ウィンドウが開かれているので読んでみると、『アイテムを使用するにはアイテム名を唱えることにより使えます。』とある。なら早速使ってみるか。

 たぶん、初心者用アイテムなんかを最初に使うときに見る文言なんだろうが、今回のこれでも使用できるのだろうか心配だ。


「じゃあ…『造形愛の卵』」


 説明通りにしてみると、アイテム欄にストックされていた『造形愛の卵』が目の前に現れた。拳大の白い卵が現れたので手のひらを差し出さないと落ちると思い、慌てて手を出したのだが、


「うぉっ!?」


 使用したら孵化するとの説明どおり、『卵』がひび割れたと思ったら、ひび割れた隙間から強烈な白い光が漏れだした。

 思わず差し出した手を引っ込め眩しさに手を翳すが、それでも『卵』からの光は徐々に強さを増していった。

 これじゃあ小さい太陽みたいなものんだ。


「なんだなんだ!?」


「おい誰だ、こんなところで!?」


「え、何々!?」


「魔法使ってんのか!?」


 うわ、やっべ!めっちゃ周りから見られてるじゃん!?


 地味なキャラで注目を集めないようにするはずが、ゲーム開始からまさかの注目の的である。

 そりゃ、こんな眩しい光が見えたら注目するよな、俺だってする。


 耳には周りの騒がしい声が、瞼の裏には眩しい光が。数秒間ひび割れた『卵』から眩しい光が発せられていたが、ようやく徐々に徐々に光が弱くなっていったのがわかった。翳していた手を下ろして、目を開けてみる。


「これが終わったらさっさと逃げるか…」


 光も収まったので、目を開けて『卵』があったほうを見たが、そこには何もなかった。


「あれ、何もない?」


 目の前に出てきた『卵』のところには何もなく、『卵』の状態では空中に浮いていても、孵化したら地面に落ちたのではないかと地面を見てみたが、そこには卵の殻すらない。

 思わずきょろきょろと周囲を見てみたが、そこで周囲がやけに静まり返っていることに気づいた。

 さっきまでガヤガヤと騒がしかったのに、なんか周りの人が俺の頭上を見て口をあんぐり開けてる…


 ちょっと、いやかなり気は進まなかったが、恐る恐る視線を上げていくと、



 ―――『女神』がいた。



「…は?」

お読みいただきありがとうございました。


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