表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お狐様が異世界を征服するそうです@わひっ!?  作者: 大南
1章 「幼少期は幼馴染フラグを作る重要な時期」
7/20

07 「キツネ、寝ぼける」

 

 今日も1日よく遊んだ。ふわぁ、とあくびを一つ。その1秒後には夢の世界へ。


 おやすみなさい。


 僕は夢を見る。それは前世の記憶。


 夢の中でしか思い出せない僕の名前は楠木葉くすのきこのは


 そしてここは病院の一室。


 僕の目の前には幼馴染の少女、坂本柚葉さかもとゆずはがベッドに眠っている。


 柚葉はもうすぐ死ぬ。それを僕は受け入れられずにいた。


 赤ちゃんの頃から、ずっと一緒だった。お互いまだ17年しか生きていない。


 これからもずっと一緒だと思っていたのに。


 柚葉の手にそっと己の手を添える。手の温もりを確認し安堵する。


 あまりに細い指、その小指に己の小指を絡め、僕は誓う。


 柚葉の病は僕が治す。


 医者になる。何もかも捨てる。己のすべてを賭けて柚葉を助ける。


 だからお願いだ。死なないで柚葉。


 ミラステック社製のスマートグラスが着信を告げる。僕は柚葉の手の甲にキスをし、病室を後にする。


 休憩スペースまで向かい、未だ明滅を繰り返す着信マークに触れる。若い女性の興奮した声が耳を打つ。


「ついにやったぞ! グレートマザーズ計画が承認されたんだ! これから忙しくなるぞ! スカイフォックス! 君の頭脳に期待しているぞ!」


 ああ、なぜ今なのか。捨てると覚悟したばかりなのに。


 世界はあまりに残酷だ。



 ※※※ 



 僕は眩しさに目を瞬かせる。ふわぁっ! とあくびを一つ。


 ここどこだっけ? と、一瞬自分が誰でどこにいるのかわからなくなる。


 ベッドの上だ。隣で気持ち良さそうに眠る金色のフワフワした物体は妹のミラン。


 それから己の金毛を確認し、思い出す。


 そうだ、僕はアレン。キツネに生まれ変わった元食レポアナウンサー(推定)だ。


 あれ、なんで、僕泣いてるんだろう。


 前足で涙を拭い、僕は笑う。


 怖い夢でも見たのかな?


 そこで、ふと己の尻尾に目がいく。


 尻尾の先っちょが禿げていた。


 なんじゃこりゃぁ!!


 僕は絶叫する。あっ、今、上手くテレパシーできた。そうか、テレパシーの基本は強い感情なんだな。って違うから!


 そんなことよりどういうことだ!


 自慢のふっさふさ金毛が無残にも抜け落ち、ベッドに散らばっている。


 え? まさか、若ハゲ? え? まじ?


 確かに、妹に毎日ガブガブされてめっちゃ劣悪な環境だったけれども。だからって、まだ0歳だよ! この年でハゲ散らかしてしまうなんて!


 嘘だと言ってくれぇ!


 僕の悲痛な叫びが全世界に響き渡った。


 隣でスヤスヤ気持ちよさそうに寝ている妹の尻尾が僕の頭を叩く。


 あ、うるさかったですね、すみません。


 僕はとりあえず、現実逃避して、もう一度眠ることにした。おやすみなさい。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ