06 「キツネ、ドラ〇エる」
妹が庭先をぴょんぴょん跳ねながら走っていく。本当に楽しそう。
「お兄ちゃん、こっちだよ」
小さな体躯にしっぽをフリフリ。うむ、可愛よす。ほっこりしながら僕はテレパシーで答える。
「うん」
「ほらほら、はやくはやく」
「うん」
僕は必死に妹の後を追う。そして思いっきりこける。
四足歩行まじムズ。
こけた僕の目の前に黄色い鳥が。
しばしの睨み合い。
やんのかこらぁ!? と、くちばしをくわっと開けて威嚇する鳥、っていうかヒヨコ。
怖っわ。すみませんでした、と僕はヒヨコとの戦いに敗れ、ズリズリ後ずさる。うおぉぉっ! とちっこい翼を持ち上げ勝どきを上げるヒヨコを僕は見上げることしかできない。
僕に勝ったこのヒヨコこそ、我が庭の王に相応しい。
「あっ、お兄ちゃんだいじょーぶ?」
僕が一向に立ち上がらないことを心配したのだろう。妹が慌てて戻ってくる。
あっ。
僕の目の前で妹の右パンチを食らい吹っ飛んでいく黄色い物体。僕は内心でヒヨコに合掌。
心配そうに僕の顔を見つめてくる新チャンピオンの妹。
「けがしてない? へーき?」
「うん」
「よかったぁ……おうちかえる?」
本当はもっと遊びたいと顔に書いてあるのに、僕のことを心配してそう言ってくれる妹。
うん、まじ天使!
「ううん」
「そっかぁ、じゃあね、じゃあね、あっちの木まで競走だよ!」
再びぴょんぴょん飛び跳ねていく妹を見ながら僕はなごむ。
そして、叫ぶ。
うん、と、ううん、しか言えないって僕はドラグ◯の主人公かよぉおおお!!!
テレパシーマジムズすぎるよおおお!!!
僕の絶叫は、くぅぅ~ん、という狐の鳴き声となって庭に響いて消えた。
なんとヒヨコがおきあがり仲間になりたそうにこちらを見ている! 仲間にしてあげますか?
→ はい
いいえ
ヒヨコは嬉しそうに馬車に駆け込んだ!
しかし馬車はいっぱいだった! 乙!