14 「キツネ、空を飛ぶ」
お母さんにめちゃくちゃ謝られた。
あなたがこんなに弱いとは思わなかったの。本当にごめんなさい。これからは気を付けるから許して。
お母さんの謝罪内容を要約するとこんな感じ。僕はもちろんお母さんの謝罪を受け入れたよ。
そして、さっきのは突然でびっくりしただけだから。それに全然痛くなかったし。次からは言ってからやってくれたら問題ないさ、ハッハッハ!
とちょっとだけウソをついた。
ホントは死ぬほど痛かったんだけどさ。お母さんを傷つけず、僕が弱いという誤解を解く最善の回答だね。
ぶほおぁぁっっ!! 僕は吹っ飛び、床をごろごろ転がりながら心の底から反省する。
ウソはいけない。絶対。
つか、お母さん、もうちょっとだけ手加減を……。
※※※※
まぁ、あれだね。
人生、じゃなくて、狐生、何がプラスに働くか分からないよね。
お母さんにめちゃくちゃ殴られまくったことで僕は受け身を覚えたんだ。
それもそんじょそこらの受け身じゃないよ。
まずね、殴られる瞬間に魔力をお腹に集中させることで、身体の強度を上げるんだ。
硬化っていう魔法らしいんだけど、僕は度重なるお母さんのグーパンにより、硬化を取得したんだ。
これでちょっとだけ痛みが減るんだ。ちょっとだけね。
次に空中で猫のようにクルリと態勢を入れ替えることができるようになった。
まさに完璧な身のこなし。僕の中の野生の血が目覚めた証かな。
そして落下。
ここでも硬化をしながら身体を丸めてコロコロと転がることでダメージを抑えるんだ。
そのおかげで、僕はお母さんのグーパンを受けても気絶しなくなったんだ。
さすが、僕。
まさに才能の塊。
ぐはあぁぁっっ!!
僕は吹っ飛びながら、さめざめと泣く。
いったい、いつになったら変身できるようになるんだ。