12 「キツネ、最終形態!」
なんということでしょう。
お昼寝から目覚めて、ボケーとしていたら、ポンっという音とともに僕は煙に包まれてしまった。
何事だ!? と慌てるも何も起きない。
び、ビビらせやがって、と右手で冷や汗を拭う。
あれ? 僕の手が人間の手になってるんだけど。
小さな手をまじまじ見た後、恐る恐るその手で顔の表面をなぞるように触る。
うん、たぶん人間の顔だ。
頭にモフモフ。耳だろうか。
お尻はと首をひねってみれば、やはり金色の尻尾がぶらりと。
お母さんの人間形態と同じ奴だ。どうやら僕もちゃんとした化け狐であったようだね。
うむ、と意味もなく一つ頷く。
てか、あれ、今の僕、素っ裸なんだけど。自前毛皮ライフに慣れ過ぎて、スース―して寒い。そして、チンコが心もとない。
妹とお母さんが隣でスヤスヤ寝ているのを確認し一安心。きょどりながら周囲を索敵。サリーとヒヨコもいない。
ホッと一息。
しかしヤバいのでは? このままでは露出狂の汚名を被ることになってしまう。どうにかせねば。
元に戻れ~、と念じてみる。変化なし。
だよね。いや、何事も集中だ。為せば成る。
ふん!
あれ、今元に戻れそうな感じがしたぞ。
もっと気合を入れればいけるかも。
ふんっっ!!
おお、なんとなく戻れそうだった。
もっとだぁ!!
僕は仁王立ちになり、両の手を高々と突き上げ、世界のエネルギ-をちょっとづつ分けてもらう気持ちでもって心の底から叫ぶ。もちろん、尻尾は腰に巻き付けてね。
うおりゃあぁああぁああぁあぁあ!! みんなぁ、おらに力をぉおおおおおおおおお!!!
……変化なし。うん、戻れないね。
ぜぇはぁ、と息を切らしながら僕は再チャレンジしようとして、そこで気が付く。
妹とお母さんの視線に。
「お兄ちゃんが人になっておかしくなっちゃったぁ」
「どこで子育てを間違えたのかしら」
泣きそうな妹と心配そうなお母さん。
くっ、殺してくれぇ! こんな黒歴史を抱えて僕は生きていけない!
「ふふ、とっても可愛かったですよ」
サリーがどこからともなく現れ、ニコニコ笑顔で追い打ちを掛けてくる。
なぜ、世界はこんなに残酷なんだ。僕は頽れるように床へ両手をつく。
てか、何気にお母さんヒドクね?