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少年少女の芋祭り

「いない?」


「見たところ、そうみたいです。と言うよりも大人は誰もいないですし、何かあったのかもしれません・・・」


村についてさっそく頓挫した。うーむ、話を聞きたいが、ボッチのアインとよそ者の俺を遠巻きに見ても近寄る人は誰も・・・ん?

6歳か7歳くらいか、それくらいの少年が恐る恐る近寄ってきた。興味本位で近寄ってきたのだろうが、ちょうどいい


「なぁ、ちょっと聞きたいことが」


「これ、何の匂い?」


少年は俺の言葉は聞こえてないかのように、アインに話しかけていた。目線はアインとリアカーを行ったり来たりしている。

サツマイモの匂いにつられて来たのだろう。

この村の人間を近くで見たのはアインとミーシャ以外でこの少年が初めてだが、出会った頃のアイン並みにガリガリだった。

余談だがアインはこの一週間でたくさん食べたため、少し肉がついてきている。


「ええと、これはサツマイモと言ってね」


「アイン、説明なんていいだろ。サツマイモは食べ物だ。お前腹減ってないか?美味いぞ」


「・・・いいの?」


「その、ウィン、いいのかい?」


「いいに決まってる。ほれ。皮も食べれるが。まぁ、とりあえず食べてみな」


リアカーから一番上の芋を半分に割って少年に渡してやった。少年はすぐにだが恐る恐る実の部分を齧った。

少し怯えた表情で咀嚼し・・・そしてカッと目を見開き、気が狂ったかのように大きめの芋を一気に平らげてしまった。

結構冷めていたから味が心配だったが、急いで食べても火傷の恐れもないくらいでちょうど良かったかもしれない。


しかしこんなにガリガリなやつ、アイン以外にもいたなんて。こいつも食わせてもらえてないのだろうか?

くそ、親はどいつだ?遠巻きに見ている中にそれらしき人物を探そうとしたが・・・それどころではなくなってしまった。


少年が芋を食べている様子を見ていた少年少女がわらわらと駆け寄ってきたからだ。

まずい、少年を虐めているように見えたのだろうか?それで助けにきたというのなら俺は怪我はしないがアインが危ない

だが、それはただの杞憂に終わった。


「それ私も食べたい」


少年少女たちは芋を食べた少年が食べ物を貰えたところを見て自分も欲しいと寄ってきたのだ。


「えっと、それは・・・」


アインはどうすればいいのか俺に目線で助けを求めてきていた。

大きさから3歳から10歳くらいと思われる少年少女が40人程度。

俺は誰でもいいからデカ女がどこにいるのか聞きたいのだ。だから全員に聞こえるように叫んでやった


「小さい奴から並べ!アインは1つずつ渡してやれ。たくさんあるから喧嘩はするなよ!」


全員が最初の少年に負けず劣らずガリガリだった。

そんな奴らを無視してデカ女のことを聞けるほどメンタルは強くない。

別に最終的に聞ければいいんだ。まずはこいつらの腹を満たすことが優先だ。


興奮しすぎて歓声なのかよく分からない声をあげながら、この中では一番大きい子の指示のもと子供たちは列を作り始めた。

そうして配り終わった後に、足りないやつは食べ終わったやつから2個目もいいぞ。と言ったら全員我先にと芋を平らげ、2個目を持っていた。

水も必要だと思ったので、紙コップを大量に創造して、シャワーで出したお湯を配ってやった。

喉も乾いていたようで何杯も飲みたがる奴もいた。だから水も満足させるまで飲ませてやった。


なんだかんだで落ち着いたころ、その中では一番大きくて賢そうな女の子がいたので話を聞くことにした。

やっぱり食べ物って最強だな。警戒する姿勢もほとんどなく教えてもらうことができたのだ





「なるほど、全員外に行ってるのか」


もう食べ物が無く、このまま滅びるよりはイチかバチか大人全員で手分けして食料を探しに行くことになったらしい

全員と言ってもアインは置いていかれたが。

多分夜遅くに帰ってくるだろうとのことで、待つのも暇なので一度帰ることにした。

自分で食うもよし、親にあげてもよしと言って余った芋を2個ずつくらいあげた。

お父さんとお母さんにあげるんだ!と、さっきまで今にも死にそうだった奴らが鼻息を荒くする姿にちょっと笑ってしまった

ガキは元気でいないとな。どうせ芋は掘ればたくさん採れるのだ。デカ女への復讐は明日でもできる


俺たちは家に戻るとすぐに畑で作業を開始した。

明日持っていく用の芋を収穫する必要があるし、採った分植えなければならないためだ。

アインはいつも以上に張り切っていた。嬉しいと、この村のためになることが出来たことが嬉しいと何度も言っていた



アインが張り切りすぎて、体がボロボロなのに笑顔で気持ち悪かったから早めの夕飯にすることにした。

いつものサツマイモ飯を食い終わった後、アインが神妙な顔で土下座をした。

この世界にも土下座があることにも驚いたが、ん?こいつなにかやったのか?と思ったらこんなことを言ってきた


「このサツマイモの苗をひとつだけください。ひとつだけでいいんです」


何言ってんだこいつは。まぁ、答えは決まっている


「なんで?やだよ」


「お願いします!どうしてもこの村には」


「いや、いらないって。俺は持ち運ぶの嫌だから全部貰ってくれよ。あ、じゃあ1つ残して燃やすか?」


創造できる俺にはいらないし、芋は火耐性つけてないから燃やせるしな


「どうにかひとつだけでも!・・・え?」


アインが顔を上げた。土下座する前に見せた真剣な顔が一転、とぼけたような顔になってた。


「いえ、全部いただけるのであれば欲しいです!ありがとうございます!」


お、おう。なんかよく分からないけど良いみたいで良かったよ。



「明日もたくさん持って行っていいですか?」


「持っていけばいいだろ。全部任せるよ。あ、でも俺たちの食う分は残しておけよ」


「はい。明日もたくさん持っていきましょうね!」


アインってこんなに明るかったっけ?出会った当初は結構暗い奴だなって思った気がしたんだが


「もう寝るぞ。なんか元気っぽいけど、いつも以上に疲れてるはずだから」


「はい、そうですね!」


どこかで中身入れ替えたかってくらい元気だけど、まぁ、元気ならどうでもいいか。


まだ日が落ちたばかりの時間だったが、俺も今日は疲れた。早めに寝よう

明日もまた村の方に行って、デカ女にぎゃふんと言わせて・・・


まぁ、ついでにガキどもが美味そうに芋食う姿見たら、そろそろ森から出る道を案内してもらおうかな


そんなことを考えていたら、疲れていたのか日が落ちる前に眠りについていた。

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