そんなチートで常勝出来ない訳がない
俺は何故こんなところにいるんだろう
そこは上も下も右も左も、何もない空間だった
『んん?なんじゃお前は?』
どこからともなく変な声が聞こえてきたが、それはこっちのセリフだ
『ん?んー・・・なんじゃこれ!?』
だからそれはこっちのセリフなんだが
『なんとタチの悪い・・・』
「おい、勝手に話を進めるな。と言うか誰だ?何処だ?何だこれは?」
誰かの独り言の相手に聞こえるかもわからなかったが、声を発してみた
『おお、すまんの。イレギュラーな事が起きての。そうじゃな、説明をすると・・・』
そいつは俺の声が聞こえたらしい。その声の主の説明をまとめるとこうだ
・声の主は神的な存在らしい
・俺には生まれた時から「勝負に勝てない」と言う特異体質が付いているらしい
・多分何かの手違いだ。正直すまん
今回はその特異体質がいわゆる神的存在の空間に連れてきたようだ
しかしどうして連れてこられたのだろうか?あの勝負に負けがあるとしたら、単純に心臓発作とかでいいと思うのだが
『生きて帰れたら勝ち、だったらそれもあり得ただろうが、体の一部が辿り着く可能性があったんじゃ』
「家に帰る」とは、死んだとしても骨になり、土に還り、空気中に漂い、そしてその空気がいずれ家に辿り着く
それを防ぐのは特異体質が不可能と判断し、この世界に転移するしかないと判断したのだとか
『その特異体質はもう取り除いたが、お前をあの世界に返す事は不可能なようじゃ』
過去の特異体質の引き起こした現象は無かったことにはできないらしい
神的存在だったらそれくらいしろよ、とは思うが無理なものはしょうがない
「で、帰れないなら俺はこの後どうなるんだ?ずっとここにいるとかやめてくれよ」
『それはこっちも困る。別の世界に行ってくれんかの?特典もつけてやるのでな』
「・・・特典って?」
『うむ、その世界は魔法や魔物がいる世界じゃ。今のお主じゃ1日も持たないじゃろう。
そうじゃな、過去持ったものならほぼ何でも作れる能力とかどうじゃ』
「なんでもって・・・本当に何でもいいのか?」
『持ったものじゃぞ。例えば、地面に触ったから地球とか駄目じゃ。持ち上げたもの限定としよう』
「それなら・・・いや、ちょっと待ってくれ、命の危険があるなら鎧とか必要だと思うんだが、鎧とか触った事ないぞ?」
作れそうな武器防具って言ったら、お鍋の蓋の盾に包丁くらいか?どこの料理人だよ
『うむ。そこで追加機能を付与できる特性も持たせてやろう』
なんだそれ?いや、もしかして
「・・・全身を守る機能付き腕輪とか作れるのか?」
『察しがいいのぅ。その通りじゃ』
ゲームによっては指輪が鎧と同じくらい守備力があったりして違和感を感じていたが、それが実現出来るのか
『作るのに魔力が必要じゃが、魔力もほぼ無尽蔵に使えるようにしておこう。これで安心じゃろ?』
しかも作り放題で魔法も撃ちまくりかよ!
どう考えても敵なしだ。今までの負け犬人生を挽回してもお釣りくるわ!
「分かった。だが、その世界に行って何か作る前に殺される可能性もある。ここで一つ作っていいか?」
『うむ、行っていきなりピンチの可能性もある。それがいいじゃろう。作りたいものを頭に浮かべながら、
最後に「創造する」と念じれば作れるぞ』
「じゃあ早速・・・」
考える、どんな性能ならどんなところでも生きていけるのか
(装着者へのダメージおよび状態異常を弾き、完全回復でき、絶対に壊れず、外れない腕輪を創造する)
そう念じると少しの倦怠感とともに目の前に安っぽいプラスチック製の腕輪が現れた。
そして同時に頭の中に何か変なイメージが出た。
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腕輪
・物理耐性(極)
・属性耐性(極)
・状態異常耐性(極)
・ヒールブレス(極)
・破壊不可
・脱衣不可
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「おい、なんか変なのが頭の中に表示されてるんだが?気持ち悪いぞ」
『それは創造した物の効果を一覧化したものじゃ。詳細は見たいと念じれば見れるぞ。
イメージを完全再現できない場合は似たようなスキルになるから必ず確認するのだぞ。
一覧も詳細も作成した時に表示させるようにしておいたのでな』
「分かった。変な感じだけど、仕方ないな。とりあえずちょっと確認するか」
<詳細>
物理耐性(極):地球が砕け散るほどの物理ダメージを受けてもかすり傷で済むほどの耐性
・・・まずは手始めにと物理耐性の詳細見てみたが、これはやばいの一言しか言えない。
属性耐性と状態異常耐性もやばい代物だろう。確認する必要もなさそうだ
破壊不可と取り外し不可は書いてある通りだろう。よく分からないのはヒールブレスくらいか
<詳細>
ヒールブレス(極):装備者は常時、口からはく息は怪我・魔力・スタミナを全回復させる。
効果は1秒以内に摂取する必要がある。
・・・普通に俺を常時回復してくれればいいのだが、何故こんな回りくどいことを?
ああ、常時回復できるってイメージだから、したくないときの手段を残しておいてくれたのか
回復したくないときは鼻呼吸をしろってことかな
『さて、今ので使い方も分かったはずじゃ。
さぁ、装備するのじゃ。すぐに送ってやるぞ』
「よし、装備したぞ。早速異世界に送ってくれ」
すぐさま腕輪を装着し、逸る気持ちが抑えられずに急かしてしまう
『よかろう。他の制約事項などの説明をしたいところだが、その様子じゃ落ち着いて聞いてはくれんじゃろ。
制約事項に引っかかる場合は分かるようにしておくから、それでどうにかせい。では送るぞ。良い人生をな』
その言葉を最後に白い世界は暗転した