3.エクメアファッシアータ姫の華麗なる一日(前半)
朝の光が日除け布の向こういっぱいに満ちている。
だが、そのひとかけらも入らない薄暗い部屋で、少女は目を覚ました。
「ふ」
エクメアファッシアータ姫の一日は、小さなため息から始まる。
まだ始まってもいない一日の何が姫を憂鬱にさせるかというと、からまらないように頭の上に束ねて置いてある長い髪の毛のせいで、一人で起きあがることすらできないことだった。
姫は寝床の中で、まばたきだけしてみる。
(我ながら、寝るのはうまくなったと思うのよね)
しばらくしておもむろに手を伸ばすと、鈴に続く赤い紐をひいた。
「おはようございます、姫さま」
水の日の侍女は、パキアとマコヤナ。
二人は侍女にしか許されない朱色の布を誇らしげにまとい、元気よく挨拶して部屋に入ってきた。
部屋中にある大壺を倒さないように灯りをともすと、二人はすぐに姫の髪を結い始める。
あまりにも長い髪は若い姫にとって足かせでしかないことを、二人はよく知っていた。
「さ、姫さま。起きあがってもよろしいですよ」
パキアの声に、姫はやっと身体を起こした。
「おはよう。パキア、マコヤナ。今日も外はいい天気みたいね」
なんともかわいらしい声なのだが、どこか憂いが含まれている。もう一度聞きたい、と思わせる心地よい響きだ。
「はい、姫さま。空は青く、砂は金に輝いております」
はきはきと、マコヤナはいつもの文句を口にした。姫が外のことを聞きたがるのは毎朝のことなのだ。
「うちの畑もようやく根付いて、芽が青々してきました」
「うちのリーヤの子供は、もうすっかり大きくなって、一人で泉まで散歩に行ったりするんですよ」
パキアとマコヤナはここ一週間に起こった出来事を話しながら、姫の身支度を整えるのだった。
「さあ、姫さま。今日は水の日。そでが短めのほうがいいですね」
「掛け布も短めにしますね」
「ええ。ねぇ、パキア。それでリーヤの子供はどのくらい大きくなったの?」
「もう母リーヤの半分くらいになりました。毎日大きくなっています」
「まぁ……かわいいでしょうね」
姫のうっとりした声に、マコヤナがため息混じりに言った。
「確かにかわいいんですが、うちの畑を荒らして困るんですよ」
「まぁ、マコヤナ! ちゃんと柵をしているじゃないの! 子供といえども入れないわ!」
「あら、パキアったら知らないの? あの柵って、仔リーヤの顔がちょうど入る大きさなのよ。ちゃんと見ていてもらわないと困るわ」
くすくすと姫が笑う。
「いいわね、幼なじみって。楽しそう」
「そうですか?」
そろってしまった返事に、また姫はくすくすと笑った。
「いいわねぇ。今の季節ってきれいなのでしょう? 空の青、砂の金、新緑の緑……。それになんと言っても、リーヤに乗ってみたいわ。昔お父さまに抱えられて乗って以来、布の隙間からあのきれいな姿を見たことしかないの。リーヤの背中に乗って、外の、本当の風にあたってみたいわ」
「姫さま……」
そう姫が思うのも無理はなかった。
何しろ姫は五歳の時から十四歳の今まで、一歩も城の外へ出してもらえないのだ。
「私のせいだっていうのは、わかっているのだけど……。やっぱり外に出たい」
「姫さまのせいじゃありませんよ!」
「そうですよ! アフェランドラ王家の習わしなんですから!」
「習わしでは十歳からのはずだわ。『城に籠もり、日の仕事をせよ。新しい風がふくまでの時を、その相手に渡すこと』仕事が嫌なわけじゃないの。髪だって伸ばすわ。けれど、外の光も浴びることができないのって、とっても悲しいことなのよ」
まだ十四歳の少女が、砂にまみれて駆け回ったり、リーヤで遠乗りしたりできず、ただただ勉強して、作法や料理、繕い物で日々を過ごすのだ。薄暗い部屋の中で。
念願だった侍女とはいえ、城から出られないのは一週間に一日で充分、と思っている二人には姫の気持ちがよくわかる。
「姫さま」
ややあって、マコヤナが口を開いた。
「うちの村に、ちょっと変わった子がいるんですよ。病気がちで、家にいることが多い」
「あ、ペッサムね」
パキアも知っている。
何しろペッサムは、病気の見本市と言われるくらい病気になるのだ。あまりにもひどい時には、看病よろしく見学に行ったこともある。
「あの子なら、もっと色々な話を知っています。よろしければ、ここによんでいただけませんか? 病気の治療のため一緒に生活する、ということで」
「って、マコヤナ! ペッサムは……」
だんっ!
マコヤナは全体重をかけてパキアの足を踏んだ。
「~~~~」
(覚えてなさいよ~。マコヤナ~)
涙目でにらむパキア。
それには気づかず姫は手を叩いた。
「まぁ、それって良い考え! お父様にきいてみる。いいえ、きっと来てもらえるようにするわ。私、その子と気が合いそうだもの」
心から嬉しそうに笑う姫。こんな時、姫は年相応の少女に戻るのだった。
パキアもその笑顔に感じるものがあったようだ。
(ちょっと、どうすんのよ? ペッサムがこの部屋に入れるとでも思ってんの?)
(もちろんよ。だってペッサムは色白で、小さくって、おまけに声変わりもまだなんだから)
(しかもそっくりな妹までいる……なるほどね。私も協力させてもらうわ)
にやり、と笑みをかわす二人。
「二人とも、なに内緒話しているの? あぁ、私もその子と仲良くなれるかしら?」
姫は小さく息をついた。でもこれは、いつものため息とはちょっと違う。
ちょうどその時、刻鐘が響いた。
「あ、いけない!」
「もうそんな時間?」
三人はいそいで台所に下りていった。
「パキア! マコヤナ! そしてエクメアファッシアータ姫! どうして遅れたのか、正当な理由があるのなら聞きます。誰でもよろしい。説明してごらんなさい!」
料理長ロベレニーは、ピシリと言った。
「…………」
顔を見合わせる三人。
「そう、ないのですね。では、お仕置きとして……」
「待ってください!」
遮ったのは姫だった。
「あ、あの、遅れたのは、私のせいなのです。私が外のことを色々と聞いていたので、時間を忘れてしまったのです」
「それで?」
「あの、お仕置きは私一人で受けます。二人は……」
「よくわかりました」
にこりとしてロベレニーは言った。
「しかしお仕置きは三人で受けてもらいます。なぜかわかりますか?」
ややあってパキア。
「量が多いから、とか」
「相変わらずですね、パキア。違います」
ふん、と腰に手を当ててロベレニーは言った。
「いいですか? あなたたちは三人でいたのです。その中の一人が間違ったことをするなら、他の二人が止めればよろしい。たとえ二人が間違っていたとしても、一人が正せば良いのです。それが本当の『つきあい』ではありませんか?」
五人のやんちゃ坊主を立派に育てた母親の言葉に、三人は素直にうなずく。
物わかりのいい少女たちに、ロベレニーは満面の笑顔でこう言った。
「たいしたお仕置きじゃありませんよ。ヤモを一人三十個むくだけです」
台所の隅に山と積まれたヤモがあった。
思わず絶句する少女たち。
「私は六十個むきますから、ね?」
そう言われては文句も言えない。三人はさっそく用意を整え、ヤモをむき始めた。
「今日はどなたかいらっしゃるのですか?」
すでに七個めにとりかかりながら、マコヤナ。
「そうです。隣国のカルノーサ王が……」
「え―――! あの遊び人の!?」
「パキア!」
ぎろりとにらむロベレニー。
「す、すみません。でも、すごい噂じゃないですか。夜ごとお出かけになって、城にはほとんどいないって」
「そうそう。それにカルノーサ王国の女性は、赤ん坊からお年寄まで、カルノーサ王に口説かれなかった人はいないって」
「ま、まあ、噂ですからね。あくまでも」
めずらしくロベレニーは苦笑した。
「どうしてカルノーサ王にヤモなのですか?」
さりげなく十個めをむきながら、姫。
ヤモは過酷な環境でもよく育つ。ここアフェランドラ王国でも安く、庶民的な食材なのだ。
「そうですよ。カルノーサ王国は内陸、せっかくアフェランドラにいらっしゃるんなら、魚料理の方が珍しくていいんじゃないんですか?」
「中でも、アーリヤとかキイルとか、ねぇ?」
アーリヤもキイルも、魚の王様と言われるものだ。その身はやわらかく、さっぱりとしていて、複雑な味付けを見事に昇華する。
「普段ならそうするのですが」
ロベレニーは『名人』の称号を持つ料理人だ。
家庭料理はもちろんだが、色々な食材をふんだんに使い、見た目にも華やかなものを作ってこそ、充実感もひとしおなのだが。
「今回はカルノーサ王たっての注文なのです。なんでもカルノーサ王は『ヤモの煮っころがし』に目がないとか」
『ヤモの煮っころがし』こそアフェランドラ王国のどの家庭でも作られている料理だった。各家庭によって少しずつ味が違うのが、またおもしろい。
「カルノーサ王国にはヤモが育たないのでしょうか?」
「水が豊富な王国ですから、育たないことはないでしょう」
「そんなに好きなら自分の城で作ってもらえばいいのに」
「今日の訪問、もしかして、ロベレニー料理長のヤモの煮っころがしのためだったりして」
「パキア! マコヤナ!」
まったくもう、とロベレニー。
「この前の大陸会議で約束されたそうですよ。次回の大陸会議の打ち合わせをしたい、と」
パキアとマコヤナは目配せする。
(噂通りの人なのか知りたいわね)
(とにかく一目見ないことには話にならないわ!)
「あの、姫さまはその時、一緒に夕食をとられるのですか?」
やっと九個めにさしかかりながら、パキア。
「ええ。なにしろカルノーサ王はエクメアファッシアータ姫に会いにいらっしゃるのですから」
「私に?」
「どうやらアフェランドラ王がエクメアファッシアータ姫の話をされたみたいですよ」
「………」
(やった! 会えるわ)
(うふふ。嬉し~)
(若いんでしょ? たしか今年十八歳とか)
(え? そんなに若いの? それは何がなんでもお目にかからなくっちゃ!)
にやりと笑みをかわす二人とは反対に、恐る恐る姫は聞いた。
「あ、あの、ロベレニー。まさか、お見合い、ではありませんよね?」
「エクメアファッシアータ姫。アフェランドラ王があなたを簡単に手放すはずがありませんよ」
きっぱりとロベレニーに、確かに、とうなずくパキアとマコヤナ。アフェランドラ王の姫に対する溺愛ぶりを、皆知っているのだ。
それでも不安そうな姫にロベレニーは言った。
「ご安心ください。『新しい風』はまだです。私は知っています。新しい風とは、困難の後にふくもの。そんな簡単にはふきませんよ」
力強い名人の言葉に、姫は笑顔になった。
「はい。ありがとうございます。ロベレニー」
「さ、おしゃべりも、もういいでしょう。どうです? むきおわりましたか? 終わったらすぐに今日の課題にとりかかりますからね」
ロベレニーの前には見事にむかれたヤモが積まれていた。
ようやくむき終わった姫は、ロベレニーのいるかまどに近づいた。
部屋中に、煮っころがしの良い匂いが漂っている。姫は知らずほほえんでいた。
「どうしました?」
「あ……どうしたのでしょう? なんだか、懐かしいような気がして……」
「そうですね。この匂いは、私も懐かしいような気がします。でも、まだ若いエクメアファッシアータ姫も同じように思うなんて、おもしろいですね」
変なことを言ったかと、しゅんとする姫。
「エクメアファッシアータ姫にも、この匂いに何か優しい思い出があるのでしょうね」
「思い出?」
「そうです。具体的に覚えてなくても、何か、幸せな記憶があるのでしょう」
(何かしら? わからない。でもやっぱり、懐かしい感じがする)
「さ、今日の課題にとりかかりますよ!」
「は、はい!」
気持ちを切り替える姫。生半可な気持ちは、名人ロベレニーに見透かされてしまう。
「今日はヤモの煮っころがしを作ったので、これについてになります」
ロベレニーは小さな小皿に、出来かけの煮っころがしをついだ。
「何が入っているかわかりますか?」
汁を少し味わう姫。優しい、ロベレニーの味付けだ。
「三色と五色の調味料、そしてルウの葉です」
「その通りです。では、これは?」
別の鍋から同じようなヤモの煮っころがしを、別の小皿についだ。
「…………」
同じように味わった姫だが、今度は汁を飲みきった。
「……三色と五色はわかるのですが、もう一つの『何か』が、わかりません」
姫は前の小皿をもう一度味わう。
「でも、この二つは全然違います。初めのは優しいだけですが、後のは……なんて言うのか、力強い感じがします」
「さすがです、エクメアファッシアータ姫」
満足気にうなずくと、ロベレニーは黒い木箱から小さな葉を取り出した。
「これが何かわかりますか?」
「ルウの葉……いいえ、違う?」
それは三角にとがった部分を三つ持つ、かわいい葉だった。
ルウの葉も同じ形だが、とがった部分がゆがんでいる。
目の前の葉は、見事に左右対称の山形をしていた。
「これはルイの葉です。ルウの葉はくさみやしぶみを取りますが、ルイの葉はその上で材料の味を引き出します。どちらも煮るときに入れて、煮立つ前に取り出すのですが……味が全然違うでしょう?」
「はい。驚きました。それにこんな葉があるなんて、今まで知りませんでした」
「そうでしょうね。厳密に言うとルイの葉はルウの葉ですから」
「え?」
「ルイはルウの突然変異なのです。この王国中探しても、おそらく三本もあればいいほうでしょう」
「ルウは一年草です。種をとって増やせば……」
「残念ですが、ルイの種がルイになるとは限らないのです。私も何年か試したのですが、結局確実な栽培方法が見つからず、失敗に終わりました」
(ロベレニーの情熱をもってしても『失敗』と言わせるなんて)
姫はあらためてその葉を見た。
「使おうにももったいなくて、ついつい出し惜しみしていたのです。でも、今日は特別ですからね。注文の品が地味なら、味で勝負しなくては!」
「はい!」
パキアとマコヤナがやってきた。
「朝食の用意が整いました」
「はい。じゃあ、朝食にしましょう。広間に行きますよ」
広間の大きな敷物には、アフェランドラ王と大臣ドラセナが座っている。
「おお、待ちかねたぞロベレニー。う~ん。良い匂いじゃ。わかった。今日はヤモの煮っころがしじゃな? わしの大好物じゃ」
「おそれながら、ヤモの煮っころがしは夕食時になります」
「おぉそれまでこの匂いだけで我慢するのか……。いやいや、楽しみにしておるぞ」
ほくほくと嬉しそうなアフェランドラ王。
(お父さまにも何か思い出があるのかしら?)
広間で食事をするのは、王と姫と大臣だけだ。
ロベレニーはそばに控えて、料理の説明をし、質問や感想を受ける。パキアとマコヤナは取りづらい料理をよそう。
「どうじゃロベレニー、ファータの腕は。少しは名人に近づきつつあるか?」
「はい。エクメアファッシアータ姫は大変すじが良くていらっしゃいます。ほどなく名人の称号に挑戦するのもよろしいかと存じます」
「そうかそうか」
アフェランドラ王は皺のある顔をさらにくしゃくしゃにした。
今年六十歳になるアフェランドラ王。娘というより孫のような姫は、まさしく目に入れても痛くないほどの存在なのだ。
「あの小さかったファータがのう……」
「陛下。今日の予定を話しませんと」
あやうく回想に入りかけた王を止めたのは、ドラセナ大臣だった。
そのための大臣込みの食事なのである。
「お、おぉそうじゃった。忘れるところであったわ。もう歳じゃな」
笑う王に、渋い顔でぼぞりとドラセナ。
「まったくです」
「何か言ったか、ドラセナ?」
「いえ、独り言ですので、お気になさらないでください」
「ほお。独り言とは、そちももう歳ということじゃな。ははは」
「…………」
気まずい雰囲気なのだが、気づかずアフェランドラ王は快活に言った。
「今日の予定はいたって簡単じゃ。カルノーサは陽が沈むと同時にやってくるそうじゃ。それから夕飯。他はいつも通りじゃよ」
「はっ」
「わかりましたわ、お父さま」
「ロベレニー、夕食を楽しみにしておるぞ。ヤモの煮っころがしの他に、魚料理も作っておくれ。わしは魚料理も好きなんじゃ」
「かしこまりました」
分厚い予定表をめくりながらドラセナ。
「では本日夕方からの予定、北地域訪問は明日に持ち越しでよろしいですか?」
「うむ」
「確認いたします。朝食後、昼まで先日の大陸会議の書類をまとめます。昼からは南地域の新規王国加入村に訪問、その後カルノーサ王と夕食、で、よろしいですね?」
「うむ。大陸会議の書類をカルノーサに渡したいからのう。午前中はドラセナも手伝ってくれ」
「御意」
朝食の後、姫一行は台所に戻った。
今日はロベレニーが夕食の用意にかかりっきりになるので、授業は今までの復習となった。
「上手にできたら夕食にお出ししましょうね」
姫は食事を作るのも好きだが、なによりお菓子を作るのが好きだった。
それで今日は黒レイホの焼き菓子を作ることにした。
黒レイホは黒く見えるほど濃い赤紫で、甘酸っぱい小さな実は、食べられる種と一緒に噛むとぷちぷちとした食感をともない、美味しい。
姫が焼き菓子に取りかかろうとしていると、
「姫さま」
「私たちも何か作ってもよろしいでしょうか?」
パキアとマコヤナがめずらしく自分から申し出た。
(カルノーサ王効果ね)
いつも姫の手伝いか味見役を喜んでする二人の変わり様に、姫はにっこり笑って答えた。
「もちろんいいわよ」
「ありがとうございます」
「がんばります」
二人はさっそく、村特有の料理を作り始めた。
昼もすぎたお茶の時間、姫とパキアとマコヤナは休憩がてら話をする。
「姫さまー。最近のドラセナ様、ちょっと変じゃありませんか?」
「そうですよー。ピリピリしてるっていうか」
三人になったとたん、パキアとマコヤナは口を開いた。
「特別な事はなかったと思うのだけど」
これまではあんな風に気まずくなることもなく、王の片腕として、仕事に厳しいが周りにも気を使い、無用の発言などしなかった。
「ドラセナ様の父君が亡くなられたことは?」
「カシワバ爺ね。でもそれは四年も前のことだわ」
カシワバは前の大臣だった。
それも五年前、息子ドラセナに大臣職を任せたので、仕事の引継も順調だったはずだ。
聞きたくてうずうずしていたパキアが、たまらず口を開いた。
「ところで姫さま。姫さまは今までカルノーサ王にお会いしたことはないのですか?」
「残念ですがないのです。隣国といっても、場所はかなり離れていますし、私はこのとおり、外に出られませんしね」
「そうですよね」
うつむくパキアとマコヤナ。
「でも今日は会えますわ」
ぱっと笑顔になる二人。
「そうですよね!」
「う~ん。楽しみ~」
「さ、それにはまず、美味しいものを作らないとね」
「はい!」
「がんばります!」