番外編・王と指輪と飾り玉
評価とブックマークのお礼です。
ありがとうございます!
幼い姫に出会ってすぐから姫に出会うまでのカルノーサとルファーです。お下劣かも。ご注意ください。
まだ幼いカルノーサ王とルファーが出会ってしばらくは、カルノーサ王国をまとめるのに必死だった。
それでも二人は時間を作っては、カルテラに迷いこんできた女の子を探していた。
眠る前、翌日の予定の打ち合わせも終わり、一息つけた頃合いで、幼いカルノーサ王は古代語を口にした。
「『今日も見つからなかったな』」
「『そうですね』」
砂の大陸と東の大陸の言葉を二人は互いに教えあっていたし、委員会もルファーに厳しく指導したこともあり、今のルファーはほとんどこの大陸の言葉を習得できていた。ただ、王との急ぎの会話や内緒話は古代語になっていた。
「『捜索の範囲を広げよう。私は近くの下町に行く。お前は高位の方を探ってくれ』」
「『かまいませんが。お一人では危険ではございませんか?』」
「『下町では子供の方が警戒されないと思う』」
「『わかりました』」
王が女の子を案じていることを知っているルファーに否やはない。
「『こちらをお持ちください』」
小さな緑石の飾り玉を横髪に通され、カルノーサは指でつまんだ。
「『なんだこれ?』」
「『通信の魔法をかけています。小さいので光るくらいしかできませんが。私に用があるときに握っていただければ、対の飾り玉が光ります』」
ルファーは自分の手首に巻きつけている緑石の飾り玉を持ち上げた。
「『おもしろい。やってみていいか?』」
「『遊びではございませんよ』」
「『本当に光るか確かめないと信用できない』」
「『……そうですね』」
わくわくした様子を隠さず、カルノーサは髪についたままの緑石をにぎりしめると、ふわっと優しい光がルファーの手元にともった。
「おぉ--」
「『お気に召していただけたようでなによりです。これで、もし危険なことになったらすぐに教えてくださいね』」
「『わかった』」
しかしカルノーサ王はわかっていなかった。
ルファーが王庭へとかけつける。
「カルノーサ様! ご無事ですか!」
「あ、ルファー。見てくれ。今日はこんなにすごい虫を見つけたぞ! 大きいだろう」
「……大きいですね」
合図もせずに、ルファーが王の自室の掛け布を跳ね上げる。
「カルノーサ様! どうされましたか!」
「ルファー、お腹がすいた。なにか食べ物はないか? 侍女が昼食前だからダメだっていうんだ」
「…………飲み物を用意させますので、それで我慢してください」
城の奥まった物置部屋で、まるでかくれんぼのように身を小さくした王をルファーは見つけた。
「カルノーサ様。今度はなんですか?」
「来るのが遅いぞ、ルファー。最近、緊張感がないんじゃないか?」
「………………」
原因は他ならぬ貴方でしょう! とは言えず、ルファーはため息をついた。
飾り玉は呼び鈴ではない、と口酸っぱく諭しても、王は日に何度となく飾り玉を使う。そのたびに、ルファーは仕事を放って王の元へ行き雑用を命じられる。そのたびに仕事中の委員会を抜けることになり、ルファーは肩身の狭い思いをしていた。
「いいですか。飾り玉は本当に困った時に使ってください。私だってそう何度も行けないんですよ」
「ルファーはいつも来てくれるじゃないか」
「なにかあったと思って心配して行くのです。緊急でないのなら、侍女なり城の者に声をかければいいでしょう」
「それじゃあ遅いだろう」
「そのくらい待ちましょうよ」
「待てない」
カルノーサ王の暴挙は止まらなかった。
すっかり呼び鈴扱いに慣れた頃、またルファーの手元が光った。
またかと思いながらも、腰を上げようとするルファーに、委員会の年寄たちが声をかけた。
「少し甘やかし過ぎではござらんか?」
「いくら王とて諫めてもよいのだぞ」
「其方の働きは十二分だ」
「たまには灸ををすえてやれ」
「しばらく待たせてやれば良いのだ」
「そ、そうですね」
思いがけず優しい言葉をもらい、ルファーは腰を下ろして仕事を再開した。なにしろやることは山ほどある。
これでわかってもらえるといいけれど、と思いながら年寄たちと仕事を全うしてルファーが執務室へと戻ると、衣を着崩したあられもない格好の王が待っていた。
「カ、カルノーサ様!? どうされました! いったい何事ですか!?」
ルファーが王の衣を正すため一旦はだけると、体のあちこちに無数の小さな鬱血痕を見つけた。まるで襲われた様子にルファーは青ざめたが、王はこともなげに言った。
「女人とは花なのだな」
「は?」
「さっきはなんで来なかったんだ? 裏町で聞き込みをしていたら、いろいろ教えてくれるというので、ついて行ったら、なんだかすごいことになって。お前の話をしたらぜひ連れて来て欲しいっていわれたから呼んだのに。お前、せっかくの機会を棒にふったな。すごく気持ちよかったぞ。それぞれ違うがどれも美しい花だった」
要するに、いかがわしいところに連れ込まれたらしい。
相手が比較的まともな女性たちそうなのがまだ救いだが、なんでこの王には危機感がないんだ?
魔法か? 飾り玉なんか渡したから、王は安心しきっているのか?
「いいですか。見知らぬ者に安易について行ってはなりません。飾り玉を使うのも遅すぎます。次からは連れて行かれる瞬間にお願いしますよ」
苦々しく顔をしかめながら、大事なことに思い至った。
「カルノーサ様は避妊の仕方はご存じですか?」
「なんだそれは?」
両親がいないのだから知らないのも無理はない。教えるにしてももう少し先だったのだろう。今回は商売女で助かった。ルファーはため息を飲み込んだ。
「とりあえず湯浴みしましょう」
王の体を清めながら、ルファーは懇々と語っていた。
「ということです。いいですか。別に行為をやめろとはもうしませんが、不特定多数との関係はおすすめしません。病気にかかる可能性がありますからね。そして絶対に避妊してください」
「なんで?」
若い勢いで来る者こばまず子種をふりまけば、この国中に王の子があふれてしまう。
「王は違う花を愛でたいのですよね? だとしたら、貴方の子ばかりになると愛でることもできませんよ」
「……なるほど。わかった」
なんとかわかってもらえてほっとしたところで、王の指に避妊と病気避けの魔法をかけた指輪を通した。
「避妊の魔法がかかっています。万が一もないように強めにかけております」
「ありがたい」
「ただ、その魔法、毎日かけ直しが必要なくらい強いものですので、他の魔法は一日に一回しか使えなくなります」
「んん? どういうことだ?」
「飾り玉も一日に一度しか使えなくなります」
「え……不便じゃないか」
「どうなさいます? 指輪が良いですか? 飾り玉が良いですか?」
熟考の末、若い王は避妊の指輪を選んだ。
王の捜索範囲はカルノーサ王国から周辺の王国にまで及んだが、女の子は見つからなかった。
幻の少女の捜索は続き、王はすっかり遊び人の浮名をものにした。
今夜もとある一室で王が甘い言葉を囁いていると、ほんのりと王の髪が光った。
城に戻った王が、ルファーにくってかかる。
「なんでいっつもいいところで邪魔するんだよ! 見てんのか? 趣味悪いぞ」
「そんなわけないでしょう。戻っていただきたかっただけですよ。時間ぴったりだったでしょ。ほら、会議が始まりますよ」
飾り玉も、今ではすっかり王を呼び戻す鈴になっていた。
実際のところ、一日に一回しか魔法が使えないなんてことはないのだけど、ルファーは王に魔法の真実を教えるつもりはない。
ありがとうございました。
当時のロベレニーもカルノーサから声をかけられています。料理談義で盛り上がりました。その後、話した相手がカルノーサ王だったとわかり驚く、若いロベレニーでした。




