#06 ロード
書いてて思ったんですけど、アギトじゃね?
試験後、試験官の湯上 総一郎に呼び出された龍は、試験官室でタブレットを持つ総一郎と向かい合って座っていた。
「・・・これからお見せするのは国家…いや、種族レベルの機密事項だと思ってくれ」
「…尚更何故”機密事項”を俺に見せる理由が分からなくなりました」
龍と湯上の間に試験時とは異なる張り詰めた空気が流れる。湯上は、ため息を吐きながらタブレットの画像を見せる。
「これは世間一般では”猟奇殺人”と言われている事件の被害者の写真だ」
タブレットの画像は、体中の肉を抉られ、吐き気を催す程に無惨な死体だった。
「”猟奇殺人”は現存する種族が起こしていると世間では_勿論、人間以外の種族もだけど知られているよね?でも実際は逆なんだ。現存する種族が引き起こした猟奇殺人は猟奇殺人とは言えない。本当の猟奇殺人は、人智を越えた生物が引き起こしている。その生物の名前は…」
湯上は苦虫を噛み潰した様な表情で続ける。
「地球外生命体 コードネーム”ロード”」
ロード、湯上はゆっくり、その名を繰り返してロードの画像を見せる。鬼神でも無く、怪人でもない”ロード”の姿は、一言で表すとしたら『化物』と言う表現が妥当だろう。灰色の肌に、鋭い爪。全てを噛み砕く金属の様な歯。目は真っ黒で、怪人なんかより数百倍、原始的、本能的な恐怖を呼び起こす。湯上はロードについて更に教えてくる。
「2043年の『アラスカ隕石』と同年に発生した『アラスカ州連続猟奇殺人事件』は恐らく周知の事実だろう。ロードはそのアラスカ隕石に付着していた宇宙の微生物が地球のコロナウイルスを吸収して発生した一種のウイルスとも言える。そして、国連本部に2051年、ロードの中でも上位クラスに指定されている『アンノウン』のラッド・アンノウン率いるロードの襲撃が発生した。その後、日本を始めとする各国は対ロード部隊を設立。日本では自衛隊の対未確認生物部隊が其処に該当するけどね…まぁ、そんな訳で毎年SV学園の首席入学生から数えて12人を学園在籍後に部隊に引き取るためにこう言う説明をしてるんだよ」
ロード。原作では一言も出てこなかった名前だった。もしかしたら、クリア後の裏ストーリーに有ったのかも知れないが、その”ロード”を倒すのが恐らくクリア条件の一つと考えた龍は、湯上に対して、
「卒業後じゃ遅すぎます。今すぐ俺を部隊に配属してください」
そう返答した。勿論SV学園には通学するが、クリア条件は早めに潰したい。
「…分かった。明日にでもロード通用する装備と生身でも戦闘可能な様に武器と専用スーツを送っとくよ」
湯上は立ち上がり、短くありがとうね、と言って試験官室を後にした。
(また調べる物が増えたな…)
そう心の中で後悔する龍であった。