#01 崩壊している原作
今回の転生で分かった事は、割と転生する時は痛い。
なんかこう、物理的に痛いと言うよりは、精神的(?)に痛い。なんでも、魂が抜けて再び肉体に再接続する時の痛みらしい。転生モノの主人公大変だね。
と言う訳で。無事転生した俺、蕪城 龍は自宅(和風な豪邸)で目が覚め、早速自身の姿確認する事にした。
「これが俺…?」
外見の殆どは生前と同じだった。が、明らかに手がおかしかった。右手は目が付いており、禍々しい手で、左手は不死鳥の様な、それでいて神々しい手だった。そして、最もおかしかったのは、頭だった。
「角…ですねぇ」
そう。黒い獄焔を浴びたように漆黒の少し溶けた様な角が頭から生えていた。そして、これらの特徴に当てはまるキャラクターは『機装戦記サーヴァント』の中で一種族だけだった。
「鬼神族…だよな」
この世界は確か第二次世界大戦の所から異なる世界になっていると言う設定で…その斬新さが受けて初日に60万部と言う化け物的記録を叩き出したのだが。その異なる世界と言うのが、まず第二次世界大戦は人間族、幻想族、妖怪族、神王族、怪人族、怪獣族の六種族+乱入枠に龍が転生した鬼神族での種族間戦争であり、1939年から2003年まで続き、その過程で対異種族人型機動兵器『サーヴァント(略称でSVとも呼ばれている)』が誕生し、第二次世界大戦は終結し、全種族(無論鬼神族を除く)間で講和条約、結ばれた場所にちなんで
『オリンポス条約』と呼ばれる講和条約が締結された。と言う物である。そして、異種族との『ハーフ』は差別を受け、主人公は特殊な力を持つ人と吸血鬼のハーフである幼なじみを守る為に、SV開発会社『ムラカミカンパニー』からSV操縦士育成学園に入学、波乱の日々の幕開け___と言うのがこのゲームの設定である。
はずなのだが__
「主人公がハーフってどういうことよ!」
そう。鬼神族は鬼と神のハーフ種族なのだ。無論、絶対的な力を持つが、ハーフが差別されるこの世界で幼なじみのヒロインを守る主人公が割と世界滅ぼせる奴ってのもどうかと思うぞ。
それと、サーヴァントにはとある欠点がある。それは__
「確かサーヴァントは純粋な人間しか使えない…はずなんだよなぁ」
純粋な人間しか使えないと言う事だ。何でもサーヴァントに搭載されてる種族識別装置によってDNA情報を解読され、純粋な人間、つまり他種族との人間ではないものか、ハーフ、人間族以外の種族か瞬時に解析され、純粋な人間でなければ、サーヴァントは機能しない。あれだ。ファ○ズギアはオルフ○ノクだと反応しない的な奴だと思ってくれ。で、そのヒロイン…六凪 楓は、吸血鬼と人間のハーフでありながら例外的にサーヴァントを使用する事が出来る。それで様々な敵に狙われているのだが、もし俺がハーフで六凪 楓が人間なら俺が狙われるの!?
「確か六凪 楓の家は自宅の横のはず!」
俺は自宅の門を潜って、道路に出る。やはり他種族が入り交じる世界。科学の発展が著しい。
…と、感心してる場合じゃない。俺は自宅の横にある小さな(俺から見て)住宅のインターホンの前に立つ。標識には筆で書かれた様な字体で『六凪』と書いてあるし、大丈夫!
俺は意を決してインターホンを押そうとする。
瞬間、後ろから木刀が振りかざされる。しかし、流石は鬼神族。その気配を感じ取り、蹴りを放つ。それとこの世界には祓魔師や精霊魔術師と言った職業も存在しており、サーヴァント操縦士でも一定の護身魔法やスキルを使えるのだが、鬼神族は全属性の技を使用できると言うチート野郎なので、蹴りに空気圧縮魔法『サイクロン』が自動発動し、蹴りに木刀をへし折る位の力が付与される。
「なっ!?」
木刀を振りかざした本人、六凪 楓の驚いた声。俺は構わず木刀を蹴り砕く。
木刀は文字通り跡形も無く砕かれていた。
「流石鬼神族…」
俺は驚きながら六凪 楓を見る。そして、楓と目が合うと楓は一瞬で目をそらす。何?俺そんな怖い目付きしてないよね?そんな事を思いながら俺は六凪 楓に話し掛けようとする。
「ひ、久し振りだな!龍!元気だったか?」
久し振り?ちょっと待て、そんなの原作にはない台詞だぞ!?
俺は原作が少し崩壊している事に気付いてない振りをして、答えを返した…