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45 一夜が明けて

 何万という人間が消えてからと言うものの、その反動のように平穏な日々が続いた。


 翌日は流石に慌ただしかったが、原因の大半はガルシアによるものだった。

 やれ服を揃えに行くと連れ出したと思えば、壊れた携帯をカロに直して貰う、報酬を貰いに行く、他にも必要なものを揃えに行くと駆けずり回される羽目になった。



 とはいえ、それは久方ぶりの平和に他ならなかった。

 こちらに来てからはいつも誰かしらを手に掛けていたような気がしてくるし、それが普通だと思ってしまうこと――――元から別段抵抗を感じてはいなかったが、「殺すこと」の異常さすら忘れてしまうことには流石に危機を感じていた。


 現に、ここ数日は両手がもどかしくて仕方がなかったのだ。

 刃物を握らないこと、銃器に手を掛けないこと。それが普通で望ましいのは理解しているのだが、殺人の高揚感と達成感はそれなりの中毒性がある。僕自身が快楽殺人者とは思いたくないものだが、こういうものは得てして自覚がなかったりするのだろうか。











 まぁ兎に角、ここ最近の日常で最初に印象に残ったのは、翌日の昼だったか。


「にしても、昨日の今日だぜ? 行く先々で耳にする羽目になるとは、噂に尾鰭どころかジェットエンジンでもくっついてそうな具合だな」


 報酬を耳を揃えて用意させ、僕の衣服の一式を「注文」した後、彼はそんなことを言いながらある場所に連れてきていた。

 ここがどんな場所なのか――――入り口を潜った途端にその強烈な匂いで確信を持った。


「さぁて、お待ちかねの昼飯だ。あそこの席取っといてくれ」


 時間帯も影響しているのは間違いないのだが、この熱気が厨房と人数とどちらの由来か不明なほどの盛況ぶりだ。

 が、その理由は先程の匂いと客層で察せられる。どのテーブルにも同じ種類のヒトと料理――――どちらも理性という物を店の外に預けてきたのかと怯むほどに野性的だ。


「肉は嫌いじゃないけど……何だこれ、こんな塊初めて見るぞ……」


 席を覗いて、思わず独り言が漏れてしまう。これでは調理というより————元の持ち主から乱暴に千切り取って焼いただけだ。ただひたすらに原始的。


 顔をしかめながら目をそらし、換気という概念はまだないのだろう、食欲を湧かせる以上に胃もたれすら感じさせる空気に当てられながら言われた場所へと向かう。


「……あぁ、匂いだけで太りそうだ」


 肘をつき頭を支え、僕の心境はとにかく言わないと気が済まなかった。油の僅かな滑りが手を付いたテーブル、腰掛けた椅子にも感じられる気がする。こんな所に長居はしたくない。


 ガルシアは店員らしい人物とあれこれ話しているが、アイツのことだ、間違いなく度肝を抜くためにとんでもないものを持ってくるに違いない。勘弁してほしい————僕は人間だ。


「……なあ、アイツの聞いた噂話ってマジモンなんかね?」


「知らねえよ。そもそも誰が何処でそんなことを見聞きしたんだっつうんだ? 死神だとか悪魔とか、考えた奴はオツムが足りてねえよ」


 背後で大きな声が響く。ここでも件の噂が肴となっているらしい。

 何でも良いから気分を紛らわせたいと、背もたれに腕をもたれさせ傍観することにした。この種の特徴でもあるのだろうが、怒らせたら食い殺されそうな面子しか居ない。


「なんだ、アンタらもその話を知ってんのかい?」


「うお、おぅ、又聞きだけどな」


 隣の席の男が割り込んでくる。昼間から随分と酒に呑まれているようだ。


「俺も聞いたんだよ、話してた奴は本人から聞かされたっつってた。鳥野郎ハーピーだったかな…………何でもその『死神』と『悪魔』ってのを載せてったらしいんだよ。例の大爆発もその二人がやらかしたに違えねえって法螺吹いてたぜ」


「へぇ、奇遇だな。こっちも配達人の女が喋ってたって聞いた。ハーピーならまぁ間違いじゃ……ねえよな?」


「だな、こんな噂をここまで広げたんだ。頭っ足らずの声がでかい奴に決まってら」


 随分な言い方だが、片方は酒が入ってる上にこの店の騒ぎ具合では何も可笑しいとは思わなかった。それに――――これはそれなりに濃い性格だったので覚えているのだが、確かに彼等の言い草に間違いのない人物だ。片方は無口だが、その分彼女はけたたましかった。ああいう人物が話す内容は事実も嘘も一緒くたにされがちだろう。


 噂はガルシアの言う通り、尾鰭が付いている————ように思えたが、大体が事実に沿ってしまうのがとても笑えた。たった二人で軍隊をコテンパンにしたとか、魔法かあの意味不明なシロモノでも使ったに違いないとか、例の異世界人の類だとか。噂でこれなのだから、彼女が話した内容は突拍子もなく誇張されていたに違いない。


「まぁ誰が流し始めたかとか、なにしたかなんてどうでもいいんだけどよ。俺が面白えと思ったのは死神って奴の方でさ、そこに居るのに見えなかったらしいんだよ……」


「ああ、俺も聞いたが、んなことがある訳ねぇ。なれるモンならなってみてえよ、な?」


「だな、姿が見えなきゃ色々とやりたい放題だ……ガハハ、昼間っから言う事じゃねえな」


 大笑いしているところ悪いが、その張本人が直ぐ傍にいるんだ。

 噂の的にされることはこれまでも数えられる程度にあったが、本人が居る場所で噂を語られる体験はここが初めてだ。どうにも背中がむずむずするし、出来るものなら教えてやりたいと気が気でなくなる。




「……っと、店員さん。それはそっちに置いてくれ。あんがとさん」


 止めだ、もっとめんどくさい奴が戻ってきた。

 野獣どもの会話に区切りを付け、さて何が来たかと振り向けば――――僕の常識を端から吹っ飛ばすために焼かれたようなブツが鎮座しているのを目の当たりにする。


「おしカズ、食うぞ」


「食うぞって…………なんだこれ」


「肉だ。ステーキだ」


 そんなことは分かり切っている。これを肉以外の何に錯覚しろという話だ。


「この大きさは何なんだ、どうすればこんな……赤子ぐらいのサイズが焼かれて出てくるんだ?」


「金貨を一枚渡して、これで良い肉を二人分って伝えたら」


「ばっ……!」



 馬鹿じゃないか、なんて言葉は喜ばせるだけだ。

 金遣いが荒いってレベルを超えてる。一度の食事に金貨――――二ヶ月分の生活費の単位を突っ込むとは正気の沙汰じゃない。


「良いだろお前、俺の奢りなんだから」


「そういう問題じゃない気がするんだが……」


「というかお前、食いもんの例えが赤ん坊ってさぁ……他に何か無かったのかよ」


 驚愕を超えて呆れ始めた僕を置いて、彼は肉に手を付け始めた。

 そう言えば衣服店でも端金のように金貨を渡していた。先のことを考えないというか、この調子では一月経たずに分配した金貨の半分が消えるのではないだろうか。



 まぁ、山分けの比率がこちらに六にこいつが四だ。僕が無駄遣いしない限り十年――――いや、イリアも含め二人と考えると五年、余裕を持っても三、四年分の生活費はなんとかなるだろう。



「……けど、勿体ない使い方だなぁ」


「んなことねえよ。必要以上に貯め込んで腐らせるよりかは百倍マシな使い方だ。第一、建設的な使い方はお前の方が数億倍得意だろうが」


 焦げる前にさっさと食え、と口に詰め込みながら言われるので、仕方ないと金貨半枚分の肉塊にフォークとナイフとを突き刺すことにした。


「そもそもな、金を貯め込むから経済が停滞するんだ。給料を出し惜しむ、貯蓄に勤しむ、老後だ老後だと生い先短くなってもそれが続くわ、そもそもの生産側が先細りだわ……使わなきゃ回らねぇ、渡さなきゃ使えねぇ、渡しても機会がなきゃ結局は腐る羽目になるんだ――――――――」


 柔らかい。

 こんなでかい(アメリカンな)肉塊を食い切れるのかという疑問すら断ち切るように、僕の想像していたよりも呆気なく刃先が鉄板に辿り着いた。五センチはある厚みが五往復もせずに切れたのだ。出されたナイフの質が良いのもあるだろうが、先ずはこれに驚かされる。


 ――――人もこれぐらい楽だったら、いや、手応えが無くなると量を求めるようになるか————。


 次に驚かされたのは、その肉の主張の仕方だ。

 厚みを考慮してカットしたは良いが、それでも手の平ほどの面積、指一本ぶんの厚みがあった。半分に折りたたんで口に詰めるまで、そのインパクトに相違ない味が来るものだと思っていたのだが――――やけにさっぱりとしているのだ。


 肉の味がしないわけではない。何処に含んでいたのかも分からない量の肉汁と赤身の風味は確実に舌を刺激してくるし、噛みほどく度にそれが脳裏にまで至らんとばかりに主張してくる。

 が、飲み込んだ後にそれが全く残らない。これほどかと主張していた存在が喉元を過ぎた瞬間に、その残滓は後腐れなく口から消えてしまうのだ。


 そこに肉があった。それだけしか残らなかったことに何よりも驚いた。

 たった一口で先入観は胡散霧消しており、次の手を躊躇する理由は全くなかった。


 何より、肉を切るのがこれほど楽しい食事が初めてだった。


「って、聞いちゃいなかったか。どうだ、美味いだろ」


 フォークで僕を指しながらガルシアが満足げに言う。僕が美味そうに食っているのを見ているのが堪らないというように、彼の視線はこちらに釘付けのままだ。

 何か喋っていたらしいが、内容は全く頭に入っていない。


「……自分で出したわけじゃ無いし、無駄にはしたくない」


「強がっちゃってまぁ、お前にもこういう可愛いとこはあるんだから面白い」


 彼にからかわれようと、僕の口は目の前の肉を欲しがっていて、それを自制する気にもならなかった。

 この香辛料は何なのだろう。一つは間違いなくニンニクのそれだが、なんとも言葉にしにくい甘さ————果物のものだろうか、それが肉の脂と良く溶け合って食事が進むに進んでいく。


「この店な、『今の俺』の行きつけなんだよ。ここに通いたいがために働いてる節すらある。いつもはそこそこの肉を量重視に食ってるんだが、金が貯まったときにはこれと同じ肉を食ってるらしくてな」


「へぇ」


 彼への応答もなおざりになるが、彼がそういうことを言えるという事実は気になった。


「こいつに乗り移れて正解だったよ。じゃなきゃこんな穴場を知ることも無かったからな。そういやほら、一緒に肉を持ってきて貰った店員が居たろ? 実はこいつ、彼女に惚れ込んでてさぁ」


 これが彼の嘘で無いとしたら、身体を操るだけでなく記憶すらも覗けることになる。乗り移った人物が何を経験し、誰にどんな思いを抱いて、何を人生の礎としているか。そんな個人情報が何もかも彼には筒抜けになっているのかもしれない。恐ろしいことだ。


「あぁ、そうだな…………」


「しかしよ、お前も見たろアレ? これは双方脈アリ――――――――」













「んでそこからなんだけどな………………って、聞く気ねぇな?」


「あぁ」


 ガルシアの半ば抜け殻のような意味のない会話に空返事をしながら、肉の八割を平らげた頃だろうか。鉄板の上にあったものが胃に収まっているのは間違いないのだが、僕はまだまだ食べられる余裕を感じていた。おかわりは流石に遠慮するが。


「……ところでよ、気にならねぇのか? なんで周りがこんな静かになってんだろうな?」


「ん?」


 ガルシアの口調が静かになったので目を上げると、彼はナイフを左右に揺らし、それに合わせて目配せをする。

 それを真似るように見回してみれば、彼の言わんとしていることが理解できた。


「変だよな。なんで俺達の方を全員漏れなく見てんだろうな?」


 わざとらしく僕に尋ねてくる。僕は答えを考えながら肉を口に運び続ける。

 どうせ反応したら面倒ごとに付き合わされるに決まっている。


「……そっか、肉が虚空に消えていくもんだから不思議なんか!」


 僕が答えかねていると、にわかにガルシアが大声を上げて立ち上がった。

 これでいい。勝手に一人でやっていろ。


「ああ、やっと分かったわ! あんたら全員、例の噂を聞いたことがあるんだな!? 通りで何か目立ってるなぁと思ったら、そういうことなんだよな、な!!」


「うひっ」


 ガルシアの近くに居た男にガルシアが絡み、そこからばっと人の波が引いた。

 また始まったと眺めていたら、形勢が逆転する。


「ああ、そうさ! 俺はあんたが噂の人物達じゃないんかって興味津々だったのさ!!」


「うわっ……えっ誰? ここどこ? 俺なんでここに…………そりゃ結構!」


 困惑した元ガルシアに現ガルシアが肩を組み、そしてまた入れ替わる。


「あれっ、なんで」


「知りたかったのなら大いに結構! 何を隠そう、俺達が噂の張本人で、『死神』と『悪魔』のふたりだ!」


「それマジ? ヤバくねそれ」


「ヤバいぜこれ! フー!!」


 こうなると対して面白くもない一人芝居だ。勢いに全てを任せて空気を凍り付かせる、多分酒の席とかで一番迷惑がられる奴だ。



 さっさと食い切ろう。

 どちらにせよ始まる芝居だったが、僕が席を立つまでこれが続いたらたまったものじゃない。






「うぃーっす……って何だ? 騒いでるのは一人だけか?」




 と、そこに一つの変化がやってくる。



 困惑と未知の恐怖やらで硬直した人々が、間延びした声にはっと意識を向ける。

 入り口に立っている二人組、そのフォルムと声には覚えがあった。


「お、お? あんた……噂をすればなんとやらだ、今この街一番の人気者のご登場じゃないっすか! 運び屋さんのケーリティ!」


 ガルシアが玩具(赤の他人)を手放してその二人の元へ向かうと、彼女らは困惑した顔を見せる。

 

「……誰だいアンタ」


「誰だと思うよ、ミス・ケーリティ」


 両手をケーリティの前でひらひらさせ、ガルシアは困る様を楽しんでいる。


「たった一日でよくもまぁこんだけの人数に伝えられたな、ん? ここに居る奴等が全員俺らを見てくるんで、まともに食事が出来やしない……ねぇ?」


「いや、勝手に話を進めるんじゃ……ちょいと待った、誰に言ったんだい?」


 誰も反応しないのだから、彼女が不思議がっても可笑しくはない。

 丁度最後の一切れを飲み下したところで、僕も立ち上がった。


「!!」


 やっぱりだ。椅子の足が床を擦っただけで周囲が二メートルは退いた。

 これも織り込み済みか、ガルシアを睨めばニコニコしている。


「……いい加減にしてくれよ、ガルシア」


 昨日と同じ状況にうんざりして、それでもあの時より幾らかは諦めが付いていた。

 どうせなら一緒に楽しんでやる、という自傷じみた自棄やけは彼に刷り込まれたものだろうか――――或いは元からあるものだろうか。


 規模は小さいが、気分はモーセの海割りといったところだ。


「……あんた。いや、『あんたら』なのかい?」


「そういうこと。あんたらが無事で良かったよ、死なれてたら死神様に灸を据えられてたからな」


 ガルシアの隣まで来ると、彼が肩を組んで体重を掛けてくる。僕らの周りにはもうケーリティとバルシィしか立っていない。


「本当だったのか……ハハ、あたしたちゃとんでもない荷物を運んでたらしいなァ」


「誉め言葉だと思っとくぞ。え? …………ええ、はい。なぁお二方、運んでくれたお陰でここの肉が食えたんだ。もうちょい礼をしなきゃいけないなって死神様が」


「へ?」


 妄言と同時に懐へ手を突っ込んで三秒、人差し指と中指、そして薬指の間に光るものを挟んで取り出された。


「これで全員に一杯ずつと、いろんな所で食って呑んで楽しんでくれって……ちゃんと死神様の手から渡して下さいよ、こういうものは代表同士がするもんすよ?」


「何でだ……」


 僕が言おうと言うまいと、これだけはガルシアの言うとおりに事が進んでしまう。


「いやいや、そんなホイっと大金を渡さんでおくれよ。何か悪ィし、怖ェよ……」


「受け取らんと逆に色々貰うって」


「う、それはもっと怖い……分かったよ、貰っとく」


 嫌々、と言うほどに抵抗はなく、率直に嬉しい顔も出来そうにない彼女が差し出した手に、抱える心情は違えど外面は似通った僕が金貨を渡す。隣でニヤつかれることがここまで腹立たしいとは。


「……ん?」


 ケーリティが疑問の声を上げる。僕が彼女の硬くがっしりとした手に触れた瞬間だった。


「どうしたよ」


「いや、死神って言うもんだから、もっとヒヤッとしてこう、背筋が凍るようなものだと思ってたんだが…………柔らかいし、温かいし」


「なっ!?」


「うひゃあぁッ!?」


 そう言って遠慮なく僕の手を握り込んだ。余りに無意識下で行われた行為に反射で手を引くと、彼女の方も驚いて背後へ羽ばたき、バルシィの胸に衝突する。


「ハハハ、ケーリティさんよ、死神様なんて口説くもんじゃねえぞ? 立場上よく言ってくれる奴なんてそうそう居ねぇんだ。世辞だとしても真に受けちまうかもしれん」


 ずっと観察していたガルシアが茶化すように言うと、「な、そんなつもりは」と即座に否定する。




 全くもって言いたい放題、多少は戒めても何も言われまい。



「うぼぁ!」



 そう思い立ったなら行動あるのみ、ガルシアの下顎のみを打ち抜くように拳を放った。


「……まだ行く場所があるんだろ? 早く済ませたいんだけどさ」


「いつつ…………すいません、調子乗りすぎました。そうしましょう」


 何処までいっても一度着けた仮面を外さない。もう慣れたし、実害がない内はまだ許せるようにはなってきた。


「おい、あんた大丈夫なのかい……?」


「平気さ、いくら死神様だっつっても理由なく魂は捕らない……代わりにおまんまが噛めなくなるがな」


 顎をカクカクと左右に動かしながら、大丈夫だと言いたげに笑顔を作る。


「つー訳で、お騒がせして悪いな! おい店長、全員に何かしら一杯、これで足りるだろ!」


 ガルシアがカウンターの向こう側にいる人物に金貨を一枚投げつける。これで今日の消費は計八枚――――衣服に計四枚、食費に一枚、運び屋の二人に二枚、そして今のだ。


「化け物二人組が一杯おごった話は好きに話しても良いから、今は追って来んなよ! 来た奴の魂は昨日の分と纏めて持ってくからな! ちゃんと言ったからな!!」


 自分の持ち分の二割を消費したにも関わらず、そんなことを気にしない陽気さで叫ぶ。あれだけ自分勝手に行動するのに、自分のために金を使う様子が微塵も無いのがなんとも面白く可笑しいものだと思った。そもそもの山分けの時から僕に譲歩した上、自分の分すらこうして半分は僕に、他は誰かのために使っているのだ。



「んじゃあな! この街を護った死神様と『憑き物』の悪魔のこと、なるたけ忘れないでくれよー!!」


 店を出た後も顔を出して見送る物好きに、ガルシアは大手を振り、まさに子供のようにはしゃいでいた。



 この男と居たら目立って仕方がないが、一人にしたらしたで問題を起こしそうだ。

 僕と彼、どちらが第三者にとって面倒かつ驚異的なのだろうか?



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