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18 闇と内に潜む 後編

 この日、あいつを最初に見たのは林の端だった。


 何か見えたとぼやいて、どうせ大したことじゃないと一人芝居をやってみた。




 次に見たのはテントの森の中だ。


 都会に出てきた田舎者よろしく周囲を見渡すあいつの隣をすり抜けると、スリルやら可笑しさやらで顔がにやけてくる。




 そのまま付き合うことも出来たが、きっと困るだろうと別方向から手を貸してみた。


 あいつにウインクかましてみたが、めっきり脈無しだった。





 最後に今の奴に入って、多分あいつがするはずだった仕事を終わらせてやった。


 余裕かましてた顔が一気にビビるのは見て楽しいが、こいつに限ってはどうも面白くない。





 しかし思ってみれば、この村の中に入るのは五年か、過ぎれば六年ぶりになるのか。


 こいつらがいる以外何も変わってないはずなんだが、やっぱり違和感を覚える。




 それだけこの世界に知った場所が増えたってことか。



「……まったくもって、運がねぇ奴だよなぁ」


 沈黙を破ったのは、得体を知れない男だった。

 死体の山のてっぺんに横たわる上官の傍にかがむと、溢れた腸を掻き分けながら何かを探し始めた。


「見えない誰かさんよ、こいつをくれてやる」


 そう言って掲げたのは、血と粘液で反射する鍵のようだった。


「多分そこら辺にそれっぽい箱があるはずさ。このオッサンの私物だが……こんな状態じゃあ使うに使えねぇだろ。道具ってのは有効利用してくれる奴に渡されるべきだからな」


 早く取れと言わんばかりにゆらゆらさせる鍵を手に取ると、その男は物色を再開した。



 彼の言った言葉を信じて部屋を見渡すと、確かに重厚そうな箱がサージャスの座っていたあの机の脇に寝かせられている。長さが両腕を伸ばしたほど、幅は指先から肘ほどで、中央には何かの紋章が印されている。鍵穴も見つかった。



「しかし……まさかこんなところに居たなんて思ってもいなかったんだろうなぁ……運命って奴なんか知らんが、マジでついてねぇよ……」



 ぬめる鍵を差し込んで回すと、しっかりとした手応えが返ってきた。

 思ったよりも重い蓋を持ち上げ、中身を日の目に晒す。



「これであんたは満足なのか? 当たれるものに当たり散らして、こんな目に遭ってよぉ……自暴自棄になんのは分からなくもねぇが…………もっとやりようはあったろ?」



 真っ先に目を奪うのは、藁に包まれた二つの銃器。魅入ってしまうような細かい装飾は、どちらも接続部というものを完全に消失しているように見えた。戦術的な優位性とやらはともかく、美術的な価値は僕の思った以上の価値がありそうだ。


「ライフル弾と散弾、これ散弾銃なのか……」


 そう言ってまず手に取ったのは、妙な膨らみのあるライフルのような形状をした銃だ。分かる範囲でガチャガチャと操作してみると、その膨らみがシリンダーであることに気付く。回転するシリンダーの外側にカバーが付いており、それが上部の空洞を除いてすっぽりと覆っている作りだった。

 シリンダーの穴を見る限り、五発装填の、やはり散弾銃らしい。引き金を引くと、ハンマーも連動して動く。引きは悪くない。



「……まぁでも、もうあんたが心配する必要は無いか。お前を殺した奴がきっとなんとかしてくれるさ。役割交代、たすきを渡せただけ良かったって思うべきだな」



 シリンダーを戻したリボルビングショットガンを立て掛け、もう一方の銃に手を掛けた。


 こちらはボルトアクション式のライフルらしく、銃身と良い勝負が出来る長さの照準器が付属していた。スコープは銃身の左上に位置するように取り付けられていて、最初から付いているサイトも使えるようになっていた。ボルトを引いて中を確認した限り、こちらも五発装填が限度だろう。



 同封されていたクリップ付きのライフル弾やショットシェルをポケットに詰め込んで、それぞれの弾倉に弾薬を装填する。シリンダーに詰めるのは楽だが、ライフルの方は随分と力が必要だった。慣れないと再装填も手間取りそうだ。




「お気に召したか?」


 臨戦態勢の整った二丁を斜め掛けした頃には、男の方はもう漁り終わっていたらしい。

 この人物の目的が掴みきれないことに僕は不安を覚えていた。まるで僕のことを知っているような、そう誤解させられるほどにこの男の僕に対する反応は慣れきっている。


「このオッサンが護るために使いたかった代物だ、あんたにはお似合いだろうよ」


「……もう一度聞く、誰なんだ?」


「で、あんたの目的はこいつの殺害だけじゃないんだろ?」


 僕の問いが全く聞こえていないのか、自分の話題を推し進める。


 本当に僕が見えていないのか、声が聞こえていないのか。この世界における僕の存在の定義に揺らぎが生じたような気分だった。


「多分聖王国の手先で……目標はここの殲滅で……あんたの目的は通信断絶と混乱。そんなところか?」


 白化しらばくれるようなその口ぶりのまま、つかつかと僕の近くに歩み寄ってくる。


「そんで提案なんだが。使い捨てのお仲間は必要かい?」


 両腕を広げて笑う男に、僕はどう手を出したら良いのか分からなくなっていた。さっさと片付けるべきなのだろうが、それでは根本的な解決に至らなさそうな気がする。


「一人よりかは二人で、二人よりは三人で。人手はあった方が楽だろ?」


 机の上の地図を引っ張り、上に乗っかっていたものが音を立てて倒れたり落ちたりした。


「男手は大抵ぶっ殺されてるが、全員じゃない。慰みものや娯楽に引き回されてない奴らは一カ所に詰め込まれてるんだ。後は……まぁ任せとけ。あんたが人助けに関わると混乱しそうだ」


 地図を投げ捨てると、男は自分の拳銃を抜いた。


「見えない誰かさんよ、あんたは単に道行く奴をなぎ倒せばいい話さ。その銃とか腰の……まぁとにかくなんか持ってるだろ? 頼むよ」


 半分聞き流していたが、何か言い間違えたかのような言葉の詰まりに意識が持っていかれた。だが何が気になったのかは記憶しておらず、もやっとした違和感はすぐに意識の底へと沈んでいった。


「あんたらは同族が来るまで神妙に隠れてな」男は妙な大声で言い渡す。「来ても死ぬだけだし、こいつらみたいになりたくも無いはずだ。俺のこたぁ信用せんでいいから、助けてくれた誰かさんのために待ってやれ、な?」


 なんとも真意の掴みづらい人物だが、行動は確かにこちら側に付きたい意思を感じられる。信用するかはさておき、一時的な利用ぐらいはしても大丈夫だろう。






「あ、そうだ。見えないから連携も難しいんだよな……視覚が駄目だとしたら、嗅覚、触覚、聴覚か。何かいいモンねぇかなぁ…………」


 わざとらしく扉の前で振り返る男だが、言い分は最もだった。

 だがそこは元から考えていたところもある。外部からの侵入に合わせた内部の混乱。僕という存在が知れれば少なくとも対処に迫られる。

 殺していけばいい、とただそれだけしか考えていたわけでは無い。充電できないのと残量が怖いところだが、ポケットには文明の利器が眠っているのだ。




 歩きながら電源を入れる。メーカーのロゴと機種名が順に表示されていく。

 残量は三割ぐらいで問題は無かった。音量を最大に上げて、何を流したものかと迷っている内に男の傍に付いてしまった。


「…………こんな時になんだが、音楽が聴きてぇなぁ……アニソンだろうとクラシックだろうとNK-ポップだろうとEDMだろうと何だって良いから聴きてぇ。気分がアガるのが良いなぁ」



 本当につかみ所が無い。僕をおちょくっているのではないのか。

 少し苛立ちつつも、彼の提案も吟味した曲に触れる。


「ラプソディ・イン・ブルーか」


 男が曲名を言い当てる。クラリネットのグリッサンドから始まる溌剌とした楽曲だ。


「センスはアレだが、まあ悪かねぇ」


 伸び上がる高音に合わせるように伸びをしながら男が呟いて、扉を蹴破った。
















 すぐ近くを二人の兵士が通り過ぎるところだった。大音量のイントロに対してか、男の行動に対してか、ぼんやりと楽しげな表情が固まった。


 使ったことの無い軍刀を引き抜く。拳銃も使おうとも思ったが、すぐに自分のもの・・・・・を使う必要が無いことに思い至ったからだ。


「先ずはお手並み拝見だな」


 男が後ろで言うのを極力気にせず、軍刀の柄をバットのように握る。

 深呼吸をして大きく踏み込み、腕力よりも遠心力で切るように一人目の兵士の首と顎の境目に刃を食い込ませた。


「いぎッ」


「わっ、ぐうッ!」


運動エネルギーで相方に倒れ込む兵士から半ばで止まった刃先を引き抜き、反対側からもう一度同じように叩き込んだ。今度は首と肩の境目に滑り込み、致命傷とまではいかなかったようだ。痙攣する仲間に押し倒され、身動きが取れなくなる。


「いっ! うぅ…………あぁあっ!」


 彼の所持品を腹に突き立てたところで、最初のメインフレーズに突入する。


「おぅおぅ、痛そうじゃねぇか。大丈夫か?」


 苦悶する兵士の脇に男がしゃがみ込み、もう一つの所持品を拝借しながら笑った。

 僕も僕でもう一人の太腿から拳銃と予備の弾倉を頂いて、左腕を支えに構えた――――――――が、腕力にある程度自信があったとはいえ、二キロはある軍刀を持ったままというのも意外に疲れそうだった。

 諦めて片手で構える。当てられる距離まで近寄ればいい話だ。

 あの地図の情報を信用するなら、収容所までに数十人といったところか。


「どうよ、二丁拳銃」


 馬鹿みたいなポーズを決めている男を無視し、薄暗い村の中でこちらを呆然と見つめる的に狙いを定める。銃声でもっと集まってきてくれるなら良いのだが。






 金管と木管の盛り上がりに合わせて撃ち始め、不規則な銃声が規則的なピアノの連弾をかき消そうと躍起になる。


 現状を知られるまでに何人殺せるか。それは僕と男の射撃の腕にかかっている訳なのだが、日本人が――――まして高校生が手にすることはまずあり得ない。

 事実として弾倉内の弾丸を全て使い切ってもまともに殺せたのはたったの三、四人といったところで、距離からしてもう的当てと言うよりもめくら撃ちに近い状態だった。


 それに対して男の腕は平均以上はあるようで、男を見ていた兵士はあらかたその対象に撃ち抜かれている。命中箇所も殆どが顔の上部に集中し、胴体もおそらくは心臓のみを狙った部分にしか当たっていなかった。


「練習が足りないな。だが、良いセンスだ」男がスライドの引ききった方の拳銃を僕に向けてそう笑った。


「まだ何十発も撃ってないにしては、良く当てるじゃねぇか」


 空の拳銃を投げ捨てて、代わりに死体達の軍刀をかき集め始めた。一人のベルトを抜き取り、それに軍刀の紐を括り付けている。


「刀狩りじゃないが、素手で戦うのは無謀ってやつだからな。あんたは持てるだけ銃と弾を集めてくれ……残ってるシナ村の奴らで使えるのが残ってないと無用の長物だが、まぁそん時はそん時だ」


 騒ぎと音楽に駆けつけてきた兵士達が呆気に取られている内に男が横目で的確に無力化していく。僕も必死に撃っているものの照準が見えなくて正確に狙えたものじゃない。


「あんたが騒ぎの現況なんだ、収集は俺に任せてあいつらと遊んできてくれや」


 そんな僕を見越してか、剣のスカートを履いたようになりつつある男が言う。能力の無い人物や見ず知らずの他人にあれこれ指示されるのは嫌なものだが、こうも実力差を見せられた後では何も言えまい。マガジンだけを拾い集めつつ三度目の襲来の場所を例の目的地へと近づけていくしかなかった。








 三度目の正直と言えるのか、流石に銃声の前に飛び出す馬鹿はもうしないようだった。

 が、その調子でこの音楽の出所にも危機を覚えたりはしないのだろうか。何も無い場所から聞こえているというのに、興味本位で顔を出す阿呆がちらほらいる。


 流石に手の届く場所の頭を外すわけも無く、銃口の直線上の抉られた地面に少しばかり血が溜まって、降ろした刃は骨の隙間に食い込んだ。そうしてやっと差し迫った危機に気付いたらしいが、しかし誰も発砲する気は無いようだ。


 ここでちまちま殺すよりも集まってくる兵士が多くなりそうなので、あくまで通る道にいる兵士のみに焦点を絞ることにした。今はピアノが主旋律だ、変に暴れるよりかは流れ作業で的確に殺していった方が良いだろう――――そんな馬鹿やってる場合じゃないか。


 残り三発の弾倉をリリースし、一人を蹴り倒しながら新しいものを叩き込む。僕の足を両手で引き離そうとする兵士の食いしばる歯に銃口をくっつけ、上下の前歯が乱雑に割れる様を見届けたら、真っ先に引き返そうとした一人の腰を狙って三度撃つ。

 他にも逃げる相手に向けて乱射したが、引き留められたのは合わせて四人が限度だった。

「やっ、止めてっ。殺さないでくれ……」


 喋れと一言も頼んでいないのに命乞いをしてきたのは、まだ傷の浅い方の、二十代ぐらいの男だった。なかなか男らしい顔つきや目つきなのだが、たった脇腹に一つ、これだけの傷で大の男が情けを乞うのはとても情けなく思えた。

 痛いのは分かるし死にたくないのも理解できるつもりだけど、やってきたことを考えれば何も可笑しいところは見当たらないじゃないか。


 そろそろ血糊やなんやらで汚れてきたので、この哀れな男の墓標代わりにでもしようと思った。這いずって逃げようとする男の傷跡を踏みつけ、他の蠢く兵士には二発ほど撃ち込み、弾倉を抜いた後に一発、男の耳元に弾痕を残す。


「止めろ、止めろ止めろぉっ! 頼む! もう止めてくれぇっ!」


 スライドを戻し、銃身を握りしめ、わんわんと泣き叫ぶ口をグリップで横に殴りつける。流石にこれで顎が割れるということはなく、喚きをより大きくするだけに留まった。

 両腕の付け根あたりを適当に刻んで使い物にならなくした後に、左右に振る頭を左手で押さえる。タイミングを見計らって顎の付け根近くを貫通するように軍刀を刺しこめば、ひとまずは完成。諸刃ではないのが救いで、男が頬を切り裂いて脱出するのは難しいだろう。


 拳銃を使って軍刀を地面に深く固定した後、代わりにこの男の量産品の剣と弾薬とを貰った。もう剣を振り回すのは腕に悪いので鞘に戻し、あの男の真似事をすることに決める。

 そこらの死体からもう一丁拝借し、それ以外は弾倉のみを抜き取る。一応全員が携帯しているようで、すぐに数十発分が集まった。


 右手に十発、左手にも十発。ズボンがずり落ちそうなほどの弾倉がポケットいっぱい。

 集まってきている兵士に照準を合わせながら、どうせだと盛り上がりを待つことにした。何事もやるなら楽しんでやりたいものだし、楽しくするための努力なら苦にもなりにくい。














 ふたり。さんにん。


 全てを押し上げるような合奏に人差し指が動く。努めてリズミカルに、拍を打つように。


 よにん。ろくにん。


 銃の反動にも幾らか慣れてくる。連射しなければ十分に狙えるようになったので、慌てて隠れ始めた兵士の元へ歩きながら狙うことにした。まだ動いていた足下の兵士の首に飛び乗って折ると、ぐき、ともめしゃ、とも聞き取れる音が伝わってくる。しちにん。


 はち、きゅう、じゅう、じゅういちにん。


 一気に飛び出して、壁に張り付く四人を纏めて撃ち抜けたときには背中が凍るほどに気持ちが良かった。これが安直な快楽殺人者の麻薬成分なのだろうか。この感覚に背徳感まで加わればそれはそれは危険な要素になり得るだろう。


 じゅうににん。


 両方の弾薬が切れたので交換する。両方を換えるのは面倒に思えてきたので片方を投げ捨て、十二人目の射殺体から貰い受ける。スライドの側面に他のには無い手彫りの刻印があり、おそらくはこの人物の名前だろうと推察する。盗難防止といったところか。


 じゅうさん、じゅうよん、じゅうご。


 次々にやって来るものの、全員が全員遮蔽物に隠れるばかりで、その度に僕が移動してやらなければならなかった。このあたりから撃ちそびれた兵は逃げるようにもなってきて、増援にあることないこと喚き散らしながら村の外へと走って行く姿は見ていて楽しかった。


 じゅうろく、じゅうはち、じゅうく、にじゅう…………にじゅうさん?


 ひとかたまりでやって来た集団に残りをやたらめったら撃ち込んだせいでカウントが怪しくなってくる。名前入りの拳銃を投げつけ、再装填した一丁で確かめるように一発ずつ頭を撃つ。ここで殺したのは七人だ…………これまで何人殺したっけ?






「…………ん?」



 騒がしさが目の前から背後に移ったことに気付く。ちょうどトランペットの軽やかな主旋律に切り替わったところだ。


「いいか! 銃じゃ無くて剣だ! あいつに銃弾は効かねぇぞ!」


 およそ十数人以上、その全員が抜刀して走る中、一番後ろの武蔵坊が叫んでいる。何本取ってきたんだ。


「相手はひとり、数はこっちが有利! 銃弾にひるまず突っ込んで隊長の無念を晴らせェ!」


 そう言いながら男は拳銃を剣の針の内側から二丁取り出す。鏡合わせのように自分も構える。どうしてあんな男の口車に乗せられてしまうんだか。こういうことがあるからなまじ信用すると危ないんだ。



 左右の人の高さのある障害物に何発か飛んでくるのが分かる。手前一メートルのところの土が耕される。

 数えるのは止めた。どっちが倒したのか分かったものじゃない。


「救世主様のご登場だ」


 そろそろ剣で甲冑が出来上がりそうな様子の男が足跡を残してやってくる。


「随分やってるじゃないか、思い出してきたのか?」


 思い出すも何も、触ったのは三日前ぐらいが初めてだ。そんなことは――――――――


 あり得ない、と言うには少し気になることを思い出した。もう「そんなことがあった」という記憶ぐらいしか無いが、あの時に脳裏に浮かんだ風景。





 偶然だろう。これも単に冗談のつもりなんだ。真に受けるべき言葉じゃないし、今考える議題でもない。


「よし、あとちょいだな。ここからは二人で行こう。右は任せっから、もう逃げた奴は良いけど、俺が撃ってるとこを見た奴は一人も残すな?」


 男の言付けを思い出し、空になったものともう一つ拾った拳銃をズボンの隙間に突っ込み、左手には代わりに弾倉を持って望む。



 音楽は再び前の旋律に戻り、アメリカのメインストリートを奏でるが如く僕らの歩みを尊んでいるように思えた。目的の建物まで道は一直線で、並び立ちながらお互いの分担にいる的を撃って進んだ。

 狙えば当たるようになったとはいえ、まだこの男の腕には届かないことを痛感させられる。両手を別の方向に向け、ほぼ視界の端で狙って当てているようなのだ。見えているのは彼だけで、相手も撃ってくるはずなのに、聞こえてくるのは手元の火薬が爆発する音ばかりだ。


「ほら、休憩するんじゃねぇ」


 僕が撃ちそびれた兵士をノールックで当てる。どれほど練習を重ねればこうなるのやら。












 弾倉を二度換えた。下手ながらも十人以上は殺したと思う。経験人数がこの数日で多くなったと思っていたが、今夜だけでその数倍は殺していることになる。

 全くその実感を持てないのはきっと感覚が麻痺してきたからなのだろう。殺しているという実感を持ち続けないと行動に支障が出てきそうだ。



 もう一度弾倉を換え、騒がしさが少し遠のいた頃に建物の前に着いた。平屋の比較的大きな建物であり、その広さに似つかわしくない片開きの扉は、更に似付かわしくない真新しい南京錠で閉められていた。


「ちょっと待て、やっておきたいことがある」


 男はそう言って、「わざと」致命傷を与えなかった一人の兵士を重そうに持ち上げる。


「なんで……どうして……」


「なぁあんた、悪霊の仕事って何か知ってるか? 人を操って楽しむことさ」


 男は軽口を叩きながら兵士を建物の壁に押しつける。彼も抵抗はしているが、動かせているのは上半身だけだ。下半身は全く、それこそ生きているとは思えないほどに動く気配がない。


「死にたくなかったらこう言い続けな、ここに近寄るなって。近寄ると俺みたいになるってな」


「クソっ、誰が……!」


「中に居る奴、離れとけー。はい一本」


「ああああっ!」


 男が脇腹に剣を一本突き刺す。タックルをかますように深く突き立てられた。


「ほら腕よこせ。ほれ二本」


「ぐううっ! 分かった! 言うとおりにするから!」


「十字架じゃないから映えねぇな。ほい三本、キリスト君のかんせー」


 両手を貫かれ断末魔の一歩手前まで声を張り上げる姿を見て、男は心を痛める様子も無かった。仲間をここまでしても響くものは何もないらしい。


「あぁ、痛い……どうしてこんな……」


「あんたがヤったかどうかは俺にゃあ分からんが、こういう場合は大抵連帯責任って相場が決まってるもんさ」


「そんな…………」


「死にたくなかったら助けを呼べば良いだけだぜ? そいつはあんたのためにやって来て、あんたのせいで死ぬことになるだろう」男は笑顔を作って続ける。「誰かの命を自分のために利用するのは楽しいか?」


「……悪魔が、クソ野郎…………」


「悪いが俺は人間だ、レッテル貼りは宜しくねぇな」


 男は手をはたきながら兵士の元から離れる。やることは済ませたらしい。



「さて、残念ながら鍵はお持ちではなかったようだ。これでは中へと入れない」


 今更なことを言う男だったが、勿論冗談のようだ。


「見えない誰かさんよ、あんたのマスターキー(・・・・・・)を使っておくれ」


 マスターキー。あの男の散弾銃のことだろう。

 正直、ここに来るまでに一度は使っておこうとは考えていた。しかし、長物の反動の強さはよく猟友会の人から煩く聞かされたものだ。白状すればそんなものをど素人が使って良いとは思えない。


「鍵のかかってる場所の周りを吹き飛ばすイメージだ。銃口を少し引いて、しっかり踏ん張ればなんとかなるから、さぁさぁ早く! 誰か来ちまう!」


 曲の展開を優先し僕の懸念を無視するように催促する男だったが、自分はやらないとばかりに周囲に目を光らせている。仕方ない。何事も経験だ。


 スリングを肩から下ろし、細かい装飾のグリップを握りしめる。フォアエンドに手を添え、銃床には肩をこれでもかと密着させた。




 ゆっくり引き金を引く。ハンマーが連動して倒れていき、あとどれだけで撃つかのカウントダウンのように僕を強ばらせる。








「あくしろ!」


「っ!」


 男がにわかに怒鳴って人差し指が跳ねた。

 上半身が浮き上がるような気がした。



 半秒遅れて足が出て、倒れるのだけは阻止してくれた。開けた空を呆然と見上げた僕は、耳鳴りと視界のゆがみが同調していることに気付く。


「……おっ、グッジョブ。一発で開けるとかやるなぁ」


 遠い場所で喋っているような男の声に状態を戻すと、確かに取っ手の部分だけが千切れたように取り残され、扉は奥へ開いていた。




 先に入った男の後を頭を叩きながら追うと、また目の眩みそうな臭いに包まれた。村長のそれと同じ類いだが、血生臭さよりも排泄物の方の臭いがきつい。


「安心しろ、見た目は敵だが中身は味方だ」


 中に光は全くなく、柱にある燭台に男が火を付けて回っていた。広さと家具の種類からして食事場とか酒場とかの印象を覚える。元々は憩いの場だったのだろうが、今じゃ家畜小屋も良いところだ。


「で、音楽の主も姿は見えないが味方だ」


 扉を少しだけ閉めた後、男は体中に巻き付けた剣付きのベルトを外し始めた。


「先ずは拘束を解かないとか……あんたも手伝ってくれ」


 ガラガラと外したベルトをほっぽり出しながら男が回って手枷や猿轡を外していく。僕も倣って解き始めるが、全員の怯えっぷりが尋常じゃない。逃げる元気のある奴は後ずさるし、無い奴も力なく身をよじらせてくる。

 短剣で外せる――――つまりは縄で縛られていたのは女性と子供だけで、僅かに残されている男性は簡易的な金属製の手錠が填められていた。背中に回されていないのが救いだ。皇国軍は楽観主義的といえるのだろうか?


「クッソ、手錠か…………なぁ、付けたままで戦えるか?」


 男が一人に話しかけるが、反抗的な眼差しを向けてくるだけで何も答えようとしない。


「なぁおい、答えてくれって…………駄目かメガロ?」


「なっ……!?」


 男の言葉に目を凝らしてみると、傷やら汚れやら暗いやらで見にくいものの、面影は確かにあの時の、僕とイリアとを迎え入れた男のものだった。


「何で知ってる……」


「六年前、来訪者。それで思い出しといてくれ。今はんなことどうでもいいだろ? 重要なことでもあるまいし」


 戦えるか、野垂れ死ぬか。その二択を男はメガロに押しつける。


「……多勢に無勢だ。残った男手はここにしかいない」


「別にここの奴らだけが戦力じゃないから安心しな。ここにあいつが残ってるか? 真っ黒な死体でも拝んだか?」


「…………間違いは無いらしいな。どうしてなんだ?」


「ちょっとな。遅れて悪いとは思ってるが、今要るのはそんなのじゃないだろ? おい……見えない誰かさんよ、例のブツをくれ。マガジンは詰めた分だけでいい」


 残りの縄を切って回っていたところに声が掛かり、静かなピアノの旋律が薄紅の空間を浮遊していく。腰に差し込んでいた銃を全部彼の周りに置くと、「さすが」とだけ呟いて一つを手に取った。


「確か使ったことがあったよな? ブランクはあると思うが」


「……分かった。やるよ」


「あぁ待て待て。別に表立ってやる必要はねぇ。ここの全員が万全の調子じゃ無いだろ? ここに誰かが来るまでは休んで、勝負すんのは近くに味方が押し込んできたときだけさ。

 ……気が進まないと思うが、女もチビッコも剣ぐらいは持っておいた方がいいぞ。死ぬよか突っ込んでみればチャンスはあるし、皇国の奴は案外臆病だからビビらせりゃあ楽勝だ」


 ベルトに数珠つなぎになった柄から次々と刀を抜き、それぞれの前に置いていく。誰も進んで手に取ろうとはしないし、目には不安や戸惑いが見られる。強いて言えば、子供は武器の格好良さに少しだけ気が晴れたようにも見えるだろうか。


 変な話だが、何も知らない子供の方がタフな場合がある。未来に希望が云々とか、そういう話は小耳にしたことがあるし、変に凝り固まった大人よりかは現状を受け入れるのも容易なのだろう。


 しかし戦闘になんか参加させたくない奴らが戦意を持っても、とは思うし、せめて子供達の健気な姿でも見て空元気でも振り絞って貰いたいものだ。








 一通り武器が行き届き、取り敢えずは戦闘態勢も整ったと言えるのだろうか。烏合の衆すら達していない有様だが、女性と子供は肉体的には無傷に近い。


 ほぼ裸体だからこそ分かるのだが、女性だろうと細身だろうと小柄だろうと、人間の男性並み以上の筋肉は有るようだ。ほどほどに長い体毛があっても筋肉の付き方がそれとなく理解できる程なのだから、一回り小さい子供と腕相撲しても勝てそうにない。


「さて、音楽も良いところさんだ。見えない誰かさんには囮をやって貰おうじゃ無いか」


 男が全員の同意を求めるように腕を広げるが、唯一の人の姿は受け入れづらいようだ。


 しかし敵意というものは明らかに減っていて、少なくない信頼が芽生えているように見受けられる。さっきの会話といい、この男の真実は霧の中へと全速力で逃避行を続けている。


「今ここは訳分からん事態で大騒ぎ、外から来てる騎士団でも大騒ぎ。内側と外側の大騒ぎが合わさればこっちの勝ちは決まったもんだ。俺達が加勢するのはその時。見えない誰かのために祈って待とうじゃねぇか」


 異論はある。が、届くはずが無い。

 詰まるところ、今の僕には拒否権というものが消失しているのだ。一体何処の全体主義国家だろうか――――――――いいや、日本の社会全体がこれか。なら割り切ればいい話だ。


 そもそもここにいて僕が出来る事なんて無い。元々の役目だって内部の混乱だ。お守りをするのは信用ならないこいつでも出来るだろう。


「んじゃ、頑張ってきてくださいな」


 扉に向かう僕に男が付いてくる。先ほど刃先の突き出た壁に四本目を刺してきたところだ。

 結託してないというカムフラージュのためだが、痛々しそうな顔と服装になっていた――――痴情のもつれでも起こした女たらしに見えなくもない。


「外にはもう臆病者が待ち伏せてるだろうから、取り敢えず突っ走れ。全員の気を引くつもりで大いに走り回れ、いいな?」


 何様のつもりだと思うだけ思って、僕は走り出す準備をした。









「おい! その音楽の源が唯一の侵入者だ! 全員で引っ捕らえろォ!」


 飛び出したのと同時に男が必死の声色で叫ぶ。


「そいつがこの騒ぎの元凶だ! 撃てぇ! 追えぇ!」


 発砲音と、絶妙に外れた弾頭の沈む音。それから一瞬で数倍に膨れあがった銃声とときの声は完全に僕の背後をマークしたらしい。


 ピアノの旋律に全員が乗っかるように走っている。目的地は決めていなかったが、どこに向かおうかはある程度考えている。

 これまでの経験からして、疲れはしても走り続けられるだろう。そう推測した上で出来ることは今やっている通り、強制的に追わせて疲れさせることや誘導すること。


 この二つを考慮して、僕の頭は一つの案を決めていた――――と言い繕うよりも、「一つしか決める余裕が無かった」と白状する方が良いか。走りながら考え事なんて出来たものじゃない。継続できるだけで疲労感は普通に溜まっていく。それだけは後ろの兵士達と変わらないところだ。


 こんなに走る羽目になるのは持久走以来だろうか? 短距離走だったら怪しいところだったが、長距離ならまだ自信がある。左太腿の傷跡も今だけは引きつる感覚を無視して走ることが出来るのも嬉しい。




 会議の時の予定進入路を思い出して、今居る場所との距離を測ってみる。村の地図は全てが頭に入ったわけじゃないが、経験から道の場所だけはしっかりと記憶するようにしていた。

 今走っているのは村の北東あたり、反時計回りだから方向は……西に向かって。騎士団が村の中に入ってくるのは南東だから、このまま村の外周近くを一周するだけでいいはずだ。大音量の音楽が流れれば全員が気付くだろうし、これだけ大騒ぎすれば言わずとも把握できるだろう。



 相変わらず足下は危なっかしく鉛が食い込んでくるし、たまに耳元を通っていくのがまた背筋を寒くさせる。

 ……しかし、よくよく考えてみれば、クラシック音楽を垂れ流す高校生を軍人が揃いも揃って追いかけているだけ。何のコメディだ。














 村長の家に戻ってきた。記憶が確かなら村の南側あたりに到着したことになる。


 飛び出してきたときとそこまで違いはないようだ。入り口の前に二人の死体、前の開けた場所に数人の死体、開いた扉の中にたくさんの死体。あの男と暴れ始めたのを発端とすれば、これで一周した計算になる。


 ここまでに僕ら以外が要因の死体は見なかった。村の中にいた連中はとっくに片付けていたみたいで、数を減らしてきている追っかけは壁の外の野次馬らしかった。


 数が減ったと言ったものの、疲れ果ててリタイアしたというわけでもなかった。息も絶え絶えの怒鳴り声から包囲しようと躍起なのは聞こえていたし、目の前に立ち塞がれそうになったのは一度だけではなかった。僕が武装していることを知らなかったおかげで突破は容易だったが、撃つか撃たれるかの瀬戸際は心臓への負担が尋常じゃない。




 それにしても、未だに騎士団の、ミリアス達の姿が見えない。

 村の外側に続く通路が限定的で、北側の入り口と出て行った隠し通路と、他に一カ所ぐらいしかなかった気がする。そのもう一つは何処かをど忘れしていたし、どちらにせよ表に出るにはあの壁の場所まで行く必要がある。


 そろそろ息が上がってきた。足の感覚も鈍い。短距離のペースで持久走なんてやれたもんじゃないと実践して分かったし、プロはこの速度を維持できるのだから恐ろしいものだ。



「あっ」


 足下を掬われた感覚。もう片方の足は大きく前へ踏み出しているが、崩れたバランスに対しては荷が重すぎる。


 もう咄嗟としか言いようのない行動だった。思考をすっ飛ばした確証のない行動。


 左腕のみでどうにか受け身らしいことをして、右手はホルスターへと伸ばす。転がるように身を捻る間にどうにか抜き取ると、後は運試しだと反応の無くなるまで引き金を何度も引き続ける。つもりだったが。




 一発目を発射したときには、奥の二人から上に向かって血飛沫が飛んでいるように見えた。二発目には、兵士に誰かが斬り掛かっていることを確信した。



 三発目を撃つ人差し指が止まり、それでも順調に兵士はなぎ倒されていった。

 その背後から出てきたのは、たったの一人だけだった。すべての輪郭が闇に溶け込んだように曖昧で、しかし僅かにある光源でもその瞳だけは煌めきを得ていた。


「…………カズマサ、いや……」


 ミリアスが周囲を一通り確認した後、何かを考え込んだ表情で僕の元へと歩いてくる。近づくほどに詳細が明らかになって、彼の体は返り血でほどほどに汚れているのが分かった。彼の得物はすでに鋼の美しさを人の血で上塗りされている。


「……アサナギなのか?」


 立ち上がることすら忘れて見つめていたことに気付く。火照った体を起こして彼と正対してから、一度彼の肩を叩いた。


「そうか……その音楽は…………いや、後にしよう」


 ミリアスが手振りをすると、四人ほどが村の影から姿を現した。同類の死体の中から、ランプや松明の届かない屋根の上から、隠れることにおいてこれ以上無いところからぬっと出てくるものだから、驚きや関心を通り越して困惑さえ浮かんでくる。


「外側はリアの分隊が掃討を始めてる。お前を追っていた奴ら以外はもう片付けたが……他にいる様子はあったか?」


 二度叩く。が、一つ思い出してもう二度叩いた。


「どっちだ。いるのか?」


 一度叩いて、腕を軽く引っ張った。敵かどうかと言うより、懸念事項と言うべきだが。


「……一人は俺に付いてくれ、他は各自の判断で降伏を勧告し、望む奴は捕虜にするように言い回せ」


 簡潔に指示すると、集まったときの素早さで三人が散開していった。残った一人は彼の背中を護るように位置付いた。


「アサナギ、頼む」


 もう走りたくはなかったが、歩いて案内するのはふさわしくないと腹をくくった。






 小走りになって初めて気がついたが、戦場の音は壁の外に移動していた。途切れ途切れの銃声に、僅かな金属のかち合う音。それ以上に響くのは犠牲者の悲鳴で、一体どちらが優勢なのかはここでは何も分からない。予測は出来るが、その証拠は何処にもない。


 内側はそんな音響に比べ平和になっていて、動くものは僕が狙いを定めるまでにもう一人のクロスボウで仕留められてしまうようになった。普通の弓を元にしているような大きさで、弦のしなる音はそれだけで首も飛ばせそうなエネルギーを持ってることを声高に自慢していた。


 その動くものだが、全員もれなく逃げてきた兵士である。どの顔も疲弊と畏怖で凝り固まっていたし、思考停止していたのか、武器を抜きもせずにこっちに突っ込んで来たのも居たぐらいだ。


「待て」


 彼らには近くの物陰に何かが見えたのだろう、構えたクロスボウを遮るようにミリアスが腕を伸ばす。


「……敵か、味方か?」


 そこから声がする。もう一人の騎士が足を擦らして背中を見せた。全周囲を警戒するつもりらしい。


「この村の敵の敵だ」


 ミリアスが唱えると、幾人かの影がゆらゆらと湧き出てくる。傷ついた姿、汚れていない剣を持った村人達。合わせるようにラプソディーは最後の盛り上がりに突入する。



 最後の大団円のような盛り上がり。傍にいる人からして英雄の凱旋か、救世主の到来か。

 村人達の顔は喜びの一色に染まっていた。ようやく安堵できると、そう言いたげな全員の顔にもミリアスは表情を緩ませはしなかった。


「その男は」


 獣の中に紛れる人間。それを見逃すほどには手厚くはないところなのだろう。


「……まぁ、だろうな」


 男が肩をすくめた。武装は拳銃一つのみらしい。


「でも、あんた…………いいのか?」


「ああ、元からそうするつもりだったからな。サプライズって奴さ」


 歩み寄る男に騎士がクロスボウを向けるが、ミリアスがまた押しとどめた。


「どうせなら、いちばんの英雄さんに頼みたい。今回のMVPだ」


 そう言って手にしたものを僕へと差し出す。曲もあと十数秒だ。



「恩返しは十分だ。また明日、タイミングの合ったときにでも」



 奪うように受け取ると、薬室を確認してからハンマーを倒す。



「じゃあ、お疲れさん」



 死ぬことを終わりと考えていないような顔に、最後の一音に合わせて――――――――


 撃ち抜いた。

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