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錻の心臓  作者: 半半人
土田純の夜
4/12

二選一択

今日は図書館に来ていた。


理由は簡単だ。


休みで、図書館に知香ちゃんがいたからだ。丁度高校受験を控えているようで、友達と教えあっているようだ。

何もせず知香ちゃんだけを眺めていると不審に思われるので適当な本を選んで机に置いた。それが全く興味関心のない政治のものであった。現代はこういった本無数に発行され、たくさんの人がそれを読んでいると考えると時代の差を感じられずにはいられなかった。何も考えずに中高と過ごし、早々と就職した自分の知っている時代はもう古いのだ。

さっとページを捲るも、難しい単語や堅苦しい言い回しにうんざりして机の上に戻した。


そして知香ちゃんに視線を向けた。


目と口元が佐智子さんに似ているなぁ…。


ぼーと眺めている最中、謎の寒気が突然襲ってくる。それは、自分のしていることへの罪悪感や後悔ではない。


俺が彼女を眺めることで得られるメリット何だろう?


ただの疑問である。


実際に自分が現在進行形でしていることが犯罪として成立することは重々承知である。しかし、それを止めるつもりもなければ、罪悪感もない。冷静に物事を考えられているにも関わらず、行動が伴っていない。


まるで当然のことするかの様に



止められない。




精神的に異常か、と言われるとそうではない。だが、決して正常であるとも言えない。

自覚しているこの状態を簡単に、もっと簡単に言うと、「冷静に物事を判断している自分と、純粋な欲求を満たそうとする自分」がいるのではないか。それが、半々に表れているのではないか。

その欲求が性的なものではないことだけは確かだ。どちらかと言うと知香ちゃんより佐智子さんの方が好きだからだ。何故この行為が止められないかは分からないが、始めた理由は揺らいではいなかった。親友に似ていたのだ。初めて見た時、涙が出そうになった。というのも、その親友は都会に行き、それから海外で働いているという。ほぼ会えないと思っていただけに、佐智子さんとの出会いは強烈な衝撃を受けた。


おっと、知香ちゃんが動き出した。



追わなければ…。



◇◇◇◇◇


家に着き、肩に提げていたバックを降ろした。

疲れているせいか少し怠く感じたなぁ。


ソファに寝転がり、煙草に火を着けた。しばらく何もせず、煙草から立ち上る煙を眺めていた。


明日の勤務時間を確認しておこう。


バックに入っているシフト表を探した。が、中に見覚えのない物が入っている。綺麗な直方体の物体を手に取り、部屋の証明に照らされてその姿がはっきりと現れた。


札束だった。



だが、映画などで見る分厚いものではない。最低五十、最高二百万円ぐらいだろうか?


そこで我に帰る。

なんだこれは??明らかに不自然だ??何故バックの中に札束が入っている??自分は何に巻き込まれたんだ??


さっきとはうって変わって動揺していた。冷静になれ……冷静になれ…。


これは何かのアクシデントなのか?自分に対する警告なのか?一体誰が??


「俺が知香ちゃんを見ている時に…」


しかし誰が、何のために?警告をするぐらいなら警察に行けば良いじゃないか??


これは偶然か、必然か…。



そこで感じる罪悪感。いや、何かに巻き込まれたという焦りに近い。

知香ちゃんを見ている時に感じていなかったものを不思議にも抱いていた。


そして、この全ての疑問に対する答えも不思議と解っていた。



この百万円は隠すことは自分の罪を隠すことに等しい。絶対に明かされてはいけない。


巻き込まれた原因が分からないのなら、開き直って進むしかない。



何より


俺自身がこのスリルに少しの楽しさを感じていたのも答えの一つだ。






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