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錻の心臓  作者: 半半人
土田純の
11/12

少し、笑える

ポケットにフォーク、バックに百万円を入れ先日の図書館へ向かった。


俺に警告をする奴が昨日と同じくいるかは分からない。だが、いる確率は高いはずだ。誰かがコンタクトをしてくるまで黙って待つしかない。


先日と同じように政治・経済の本を適当に持って来て、俺はここにいるぞとアピールする。周囲を見回し、それらしい人物がいるかを予想した。


すると、一人の中年男性が向かいの席に腰を下ろした。


「あんたか?」

「はてさて、なんのことやら」


飄々としたその様子は明らかに凡人が身に付けているものではなかった。


「何を目的にここに来たんだ?」

「人を探してるんですよ。ちょっと、面倒な。いや、大分ですかね」


名刺を差し出され、ぎょっとした。

名刺には三倉(かず)。所属、警察と記されていた。


まさか、俺のストーカーの方がバレたのか?


「さっきから挙動がおかしいと思ったので声を掛けさせてもらいました」

「……」


違う!いや、それとは違うだ!ストーカーは確かに認める。だが、今持っている百万円を見られるのは明らかにまずい。ややこしいことになる。


どっちもそうだ。百万円を指摘されるのも、ストーカーを指摘されるのも。どっちも破滅に繋がる。


誰にも迷惑をかけてはいないだろ?百万円は巻き込まれただけだし。


どうか見逃してくれないだろうか…。


右のポケットに入ったフォークに手を伸ばし、強く握り締めた。

そして、その些細な挙動に目をつけ、


「何か。隠してます?」


先手を打たれた。


この隠しているは、暗に罪と右手の先の物に何があるのかを指し示している。


「ちょっと、そっちの方。調べてもいいですかね?」


抵抗するだけ無駄と悟り、


真剣な顔で



ポケットの中身を机に置いた。




「…はは。これは、食らってやるということですかな?」

「いいえ、ただの護身用です」

「いえいえ。冗談です。どうやら、ただの勘違いのようでした。すいません」


三倉和は二回ほどお辞儀をし、その場から去っていった。




何故だか、色々と考えていた自分が馬鹿らしくなり、歩いて家に帰ることにした。道中で煙草をふかしながらぼーとした。


このフォークも百万円もどうでもいいや。



フォークをその辺の田んぼへ。百万円は近くを流れるドブ川に投げ捨てた。



あーあ。本当に馬鹿馬鹿しいや。



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