10/12
意気込んだけど
開館と同時に、昨日と同じ席に座り周囲を見渡した。
特に変化はないし、というか、これが普通だ。
これで全ての謎が解けるとは思っていないが、この百万円からは逃れられるだろう。
適当な本を二、三冊持って来た。これで隣に人が来るまで待とう。気長にな。
高鳴る鼓動が外に漏れているのではないかと思った。
そして、その時は訪れた。
隣に一冊の本を携えた男が着席した。
見た目からして三十代かな?持ってきた本は「政治の構造」という中々に似合った組み合わせのものだった。
少し様子を見て、百万円を…。
は!?
隣に座った男は読書もせず、ただただ向こう側を見ていた。
隙だらけである。
悪いけど、これはお返しいたします!
男が机に置いたバックの隙間から百万円をねじ込んだ。
そして、その場をこっそりと後にした。