優しさが辛い時
続きまーす!!
「わかっているんですよ? 香月様のあの言葉が本気じゃない事も、香月様が他の人とは違うという事も、わかっているんです」
良が静かな声でベッドに入っている僕に言う。
「そのしゃべり方、やめろ。なんだか、嫌だ」
良は少し微笑んで、口調を変える。
「香月とはもっと小さいときからずっと一緒だし、他の人と変わらず接してくれた。一人の人間として、金持ち、庶民関係なく。それは本当に感謝してるんだ。しても仕切れないくらいに」
良は僕のベッドにそっと座って、きつく拳を握る。
「それでも、周りからの目は変わらないし、オレの事を悪く言う人たちも絶えない。少しずつ減ってはいるし、言われたときにかばってくれる人もいる。それでも、香月のあのときの言葉には少し心が痛んで・・・悪かったな。子供みたいに拗ねちゃって」
また、僕は良に謝らせている。
いつもそうだ。
いくら僕が悪くても、自分に関する事だったら、良は注意をしない。
自分が悪かったんだとやってもいないのに罪を認める。
昔、僕が誤って母上の大事にしていた花瓶を割ってしまったとき、僕はとっさに
「僕じゃない! 良が割ったんだ」
と言った。
皆僕の言葉を信じた。
良は一週間食事抜きになって、拷問部屋で一週間を過ごした。
あの後、あの部屋で何をされたのかと聞いても教えてくれなかったのを思い出す。
後から聞いた話、良はあそこで処女をなくしてしまったらしい。
人づてに聞いた話なので、本当の事かはわからない。
聞く機会なんてなかったし、どこかで知りたくもないと思っていた。
そのときも良は、ぼろぼろで出て来たくせに、香月様は悪くないと言い張った。
僕がどんなに謝っても、笑って謝る必要はないというのだ。
良は決して僕を責めない。悪く言わない。
わがままを言えばたしなめられるし、悪戯をすればしかられた。
ご飯を残せば説教されたし、稽古をさぼればさとされた。
でも、いざというとき、僕が世間的に不利になるときは、絶対に僕をかばってくれた。
自分が悪くなくたって、すべての責任をかぶり、責めを受けて、必ず僕のもとに帰って来た。
「僕の台詞だ・・・本当にごめん。良」
「香月が謝る必要なんてないだろう?」
ほら、またお前はそんな顔をして否定する。
結局良は、僕に本当の苦しみなんて与えてくれないんだ。
その優しさが時に辛い。
良はいったいどこまで出てくるのか?!