第七話
しばらくして、俺がいつも定期検査の時に担当していた。年の頃は50に届いているだろう恰幅よくいつも笑顔でいる先生が病室に入ってきた。いつもの笑顔でいるけどどことなくぎごちない感じを漂わせながら・・・
「蒼くん。意識ははっきりとしているかい?」
ぎごちない笑顔のまま優しく問いかけてきた先生にゆっくりと答えた。
「まだ頭が痛いです。それに身体がいう事をきかないです・・・」
そこまでしゃべって異変に気がついた。
俺のもともとの声は声変わり前の少年の様な声だったのに俺の声が女性の様なソプラノの響きの声になっていた。
「先生・・・声が変なんですけど・・・」
まるで別人の様な声に驚きつつ先生にきいた。先生は沈痛な面持ちで・・・それには答えずに・・・
「頭が痛むか後で頭痛薬を用意させるよ。身体が言う事を聞かないのは申し訳ないが筋肉弛緩薬投与しているからだ。その点滴がそうだ。」
何で俺が筋肉弛緩薬なんて投与されなければいけないのか、先生はいつもの様子と違うし謎だらけだった。
「何で?筋肉弛緩薬を?」
何を聞いていいのかわからずとりあえず目先の事を聞いてみた。
「覚えて無いのか?」
「何をです?」
「とりあえず、順を追って説明しよう。」
そう言うと先生は椅子に座り、看護師さんは心配そうにこちらを見ている。もしかして重大な病気でもみつかったのか・・・俺の中にどうしようもなく不安が広がった。
「変な事を聞くが一応確認だから、答えて欲しい。君はあおいくんか?それともあおいちゃんか?」
くん?ちゃん?どういう事・・・聞かれてた意味がわからなかった。
「どういう事です?俺は俺ですけど・・・」
それを聞いた先生はちょっとホッとしたように答えた。
「俺か・・・となれば蒼くんだな。わかった・・・それならいい。」
俺は蒼だ。他の何者でもないのだけど変な事を聞くのが不思議だった。
「蒼くんはどこまでの事を覚えているかの教えて欲しい。」
そう言われて昨日の事を思い出しながら答えた。
「両親が車でこちらの病院に向かっている途中で眠ってしまい。そこからさっき目が覚めるまで寝ていたようて全く記憶がありません。」
やっぱり自分の声にすごい違和感がある。早く治ってくれないかなぁ。しかしたった一晩寝ていただけなのに何でそんなことをきくんだろう?
「覚えていないようだね。蒼くんが病院に運ばれてきたのが10日前で・・・」
「10日前?!昨日運ばれてきたんですよ。」
あまりに日にちがたっている事を告げられ先生の話の途中に割って入ってしまった。しかし先生は落ち着いて話を続けた。
「いや、蒼くんが運ばれてきたのは10日前だよ。」
「10日前って・・・今までずっと寝ていた・・・意識なくしていた。ってことですか?」
「記憶がないなら仕方ないがちょっと違うかな・・・」
「しかたがかない?」
「その事については後でな。」
とても言い辛そうに答えて先生は続きを話した。
「10日前に運ばれてきた時はすでに意識は無かった。そこから蒼くんの熱が上がり続けて一時42度まで熱が上がり危険な状態が2日程続き、蒼くんの心臓は停止した。」
「・・・えっ」
あまりの事に驚くしかできなかった。俺一度死んだのか・・・
「驚くのは当たり前の事だよ。でも、直ぐに蘇生措置を行ってじきに再び心臓は動き出した。その後3日間の間に3回心臓は停止した。どれも直ぐに蘇生措置を行って直ぐに回復したから、言語や肉体の運動機能に後遺症は無い様だから安心していいよ。ただ別な問題かあるだけどね。」
「別な問題って・・・?」
再びとても言い辛そうに眉をしかめながら先生が続き話始めた。
「蒼くんは覚えていないなら、少々ショックな話をしなければならないけどいいかな?」
そう言われてためらってしまった寝ていた間に何が起きたのだろう・・・怖いけど何があったのか知りたい。そう決めて
「・・・教えて下さい。」