第六話
なんて夢見るんだ・・・翔太とキスする夢なんて・・・
あまりに現実離れした夢に自分でも呆れてしまう。
変な夢を見たせいか汗だくだった。シャワーでも浴びたいと思った時に異変に気がついた。
自分が見知らぬ場所にいた。周りを白いカーテンに囲まれ天井は真っ白で腕には点滴が繋がっていた。
「ここは・・・」
記憶がはっきりとしない。俺は何でこんなところにいるんだっけ?
ぼやけた頭で考えた。考えると頭が痛い。あたかも思い出すのを否定するように・・・
起き上がろうと思ったが身体が言う事を聞かない。
頭と身体が切り離されたように自分の身体でないみたいだった。
仕方が無いので点滴の落ちるのをぼーっと眺めていた。
そして段々と記憶がはっきりとしてきた。
そうだ!!俺は熱を出して病院に向かっている最中に眠ってしまったんだった。
そうかここは、病院のベッドの上か・・・
よくよくみれば俺の頭の上には名前の書いてある札がついていた。
その名前は何故か、「双葉 蒼」と書いてあるところの「蒼」にバツがつけられその横に「葵」と書いてあった。
誰かのイタズラか?誰だくだらない事するのは・・・
そう思いながら目線をズラすとその脇にはボタンの様なものがあった。
これは・・・かの有名なナースコールのボタンじゃないか。
これを押すと美しい看護師さんがきてくれる夢のボタン!
そしてさっきまで全く動かなかった身体が少しづつ腕が動いた。
ボタンに手が届き、ちょっと押していいとかとためらいながらも結局押してしまった。
しばらくすると慌てた様子の看護師さんが入ってきた。
入ってきた看護師さんは綺麗な人だった。いつもなら胸も大きくて見惚れてしまい
興奮しそうなぐらいの人なのに、なぜか意識ではどストライクだと思えるのに
本能ではなにも感じなかった。
風邪のせいかと思っていたら「双葉さん・・・」と恐る恐るといった感じで、
看護師さんが声をかけてきた。
「双葉蒼くんだよね?」
そして再度確認するように聞いてきた。
何で名前を確認2度もするのか不思議だったけど・・・
「はい。」
そう答えると驚いたように話しかけてきた。
「意識が戻ったのですね。良かったぁ。今、先生呼んできますから待っていてください。」
そう言って看護師さんは出て行ってしまった。
昨日の夜にここに運ばれて目を醒ましただけなのにそんなに慌てなくても・・・
しかし、昨日の今日なのに父さんも母さんもいないのか病院から連れて帰ったのかな?
父さんは仕事あるし母さんも家の事があるから仕方ないか。
ちょっと寂しい気持ちなりながら、ほとんど動かない身体の方が気になった。
何でこんなにも身体が動かないだろう?風邪のせい?わからないまま天井を見つめていた。