第三十一話
ふと目覚めた・・・
布団の中だった。
ここは?いやこの見慣れた天井は自分の部屋か・・・あれ?今までなにをしていた?
意識がはっきりとしない頭で記憶をたどる。
”俺”は、一体いつ布団に入ったのだろうか?それ以前に寝る前は何をしていた?
曖昧な記憶を探るように眠る前の事を思い出そうとした。それとともに眠気が徐々に遠のき覚醒してきた。
確か翔太とお昼を食べたよなその後・・・
なんだったかな、そうだ花咲さんに呼ばれて音楽室に行った。そこでクラスの女子全員から女になっているか確認させてくれとお願いされて恥ずかしいからと花咲さんが代表して確認することになって二人きりになって、その後緊張しながら服を脱いで・・・
あれ?それ以降が思い出せない。服を脱いだ後・・・やはりそれ以降の記憶がない。もしかして突然気を失い倒れたりしたのだろうか?それで運ばれて自分のベッドに寝かされたのか?一体どうしたのか、記憶喪失か、わからないことだらけだ。兎に角まず落ち着こう。
俺は大きく深呼吸を数回行い、気持ちを落ち着かせる。そして声に出して確認してみた。
「まず俺は誰だ?双葉蒼だ。突然男から女に変わってしまった元男子の中学三年生だ。」
「住まいは・・・」と住所や電話番号、学校名、生年月日、両親の名前、生年月日など思い当たる事を声に出して確認していったが全てちゃんと憶えていた。大きな記憶喪失とかではないみたいだ。昨日の事が欠落しているだけだ。少し安心してデジタル時計を確認すると朝の六時ちょっと過ぎた時間だった。
朝六時って事は、昨日の昼休みから今まで十八時間程度の記憶が無くなっているようだ。これって女に変わってしまった事が影響してるのか・・・病院の先生が言っていた解離性同一性障害ってやつの影響かもしれない。
この時間ならもう両親も起きているだろうから俺は昨日の状況を両親に確認する為に、制服に着替えて一階のリビングに向かった。リビングに行くと父親は、新聞を読んでいた。
「父さん母さんおはよう。」
「おはよう。今日は父さんなのか?俺としてはパパの方がいいんだけどな」
父さんがなんかへんなことを行っている。パパ?なんで俺がそんなふうに父さんを呼ばないといけないんだ。
「そうね。昨日みたいにパパママがいいわね。」
母さんまで何を言っているんだ。俺はそんな風に両親を呼んだりしてない。疑問に思いながら
「昨日みたいって、俺がパパママと言っていたってこと?」
「そうよ。自分が言ったのに覚えてないの?本格的に女の子に目覚めたと思っていたけど違うの?」
「違うも何も俺、昨日の昼頃から今まで何してたか覚えて無いだよ。確かに昼頃までは覚えているんだけど・・・」
「それは寝ぼけているのか?」
父さんが首を傾げながら言ってきた。反論しようと声を出そうとしたたら
「はいはい、兎に角まずは顔を洗って髪を整えてきなさい。女の子が朝やることはまずはそれよ。それが終わったら話しましょ。はい、行ってらっしゃい。」
そう言われて、軽く背中を押されて洗面所に追いやられた・・・
そして戻ってくると父さんと母さんが病み上がりで久しぶりの学校だったから疲れて意識が朦朧としてたんだろうって事になった。いろいろ頭の中にもやもやが残ったままではあるがそれ以上その話はおしまいと言うことにされてしまった。無理に話を戻してもしょうがないと思い直して朝食を食べて、母さんの手の込んだお弁当を持って学校に向かうことにした。
 




