第二十二話
今回の話から学校編です。
いよいよ明日の火曜日から学校に復帰する事になり、その前に学校の先生達に前もって俺の現状を知ってもらう為に新しい制服に身を包み学校を訪れた。
学校の校門前まできて放課後になろうとする時間、まだホームルームをしているのか静まりかえっている。
今日は、あえて一人できた。最初は母さんも一緒にくると言っていたが、今後の事も考えるとこれくらいの事ができないと学校生活が送れないと思い断ってきたけど、校門までくると緊張する。受け入れてもらえるのだろうか・・・
校門をくぐる前に大きく深呼吸をして気持ちを落ちつかせてから校門をくぐる。
すると校舎の方が騒がしくなってきた。どうやらホームルームが終わったようだった。
校舎からは部活に向かう生徒や帰宅する生徒が出てきた。その生徒たちとすれ違う・・・
校舎から出てきた生徒はこちらを見る。特に男子生徒がこちらをチラチラと見てくる。なにか変なところでもあるのだろうか?歩き方が変?それとも男が女子の制服を着ているように見えている?視線が怖い・・・不安になりながら、あえて気にしないようにして来賓用の入り口から校舎に入り職員室に向かった。
職員室の前まできて改めて深呼吸をして気持ちを落ち着かせてた。事前に父さんと母さんが俺が入院中に説明してくれていたらしいので、今日は顔を見せるのだけでいいのだが、受け入れてくれるだろうか・・・不安になりながら再度、深呼吸をして職員室の引き戸をスライドさせた。
職員室の中はまだ先生がまばらだった。恐る恐る近くにいた、ちょっときつい感じがして苦手なんだけど女性の加藤先生に声をかける。
「こんにちは・・・あの~住吉先生はいらっしゃいますか?」
そう聞くと普通の生徒と話すように答えてくれた。
「住吉先生なら、まだ戻ってきてないからホームルームが終わってないのかも。ちょっと待っていればくると思うわよ。」
「わかりました。またせてもらいます。」
そして住吉先生の机の前で立って待っていると、加藤先生が話しかけてきた。
「キミのその髪はずいぶん赤いよね。染めているの?染めているなら校則違反よ。」
そうだ髪の毛の事忘れていた・・・
母さんに相談しようと思っていたのに・・・どうしよう。いやまてよ。これは地毛なのだから文句言われる筋合いは無いはず、そう思い答えた。
「これは地毛です。染めてなんかいません。なんだったら生え際調べてみて下さい。」
「でもなうちの学校でそんな赤い髪の生徒はいないはずよ」
何だか疑り深いな。まぁ確かに今まではいなかったよな、つい二週間前に突然赤くなって俺もびっくりしたしね。
「あのぉ・・・俺の事聞いていませんか?」
父さんと母さんが事前に話をしているはずなのだけど、知らないのかな。なんだか心配になってきた。
「女子なのにずいぶん言葉使いが男子みたいね。自分を俺だなんで・・・もう少し女性らしい話し方できない?治した方がいいわよ。」
話が違う方向にいってしまった。
だいたい元々男の俺が女みたいな喋り方できるわけない。
「すいません。ずっとこの喋り方なので直せと言われても・・・」
自分でも自覚はしていた。この姿になっても喋り方は、男の時のまま変えていない。変えた方がいいのかと思ってはいたけど長年使っていた喋り方をなかなか変えることが出来ない。
「ずっとって・・・小さい時からってこと?」
「そうです。ところで俺のこと聞いていませんか?両親が報告にきているはずなんてますが・・・」
なんか心配になってきた。父さんと母さんはちゃんと説明してくれたのだろかうか・・・
「報告?ご両親が?」
加藤先生は少し考えていた。そこに職員室の出入り口の引き戸があいて、入ってきたのは俺のクラスの担任で水泳部の顧問の住吉先生だった。
とりあえず、考えている加藤先生は放置して久しぶりだったので兎に角笑顔を作って挨拶した。
「こんにちわ、住吉先生。無事に退院しました。明日からまたお世話になります。」
つかさず挨拶をするも呆気に取られている。しばらくそのままの姿勢で固まる住吉先生・・・
「あの・・・先生?」
声をかけると動き出した。
「も、も、もしかして、ふ、ふ、双葉なのか?」
お!わかってくれたらしい。ちょっと安心した。
「そうです。」
「聞いてはいたが、声も違うし、ほ、本当に双葉なのか?」
「そうです。こんな声でこんな姿ですが双葉蒼です。」
「ただ、女装しているとかじゃないんだよな?」
「当たり前です!!何が楽しくて俺が女装しなきゃいけないですか!!両親から話を聞いているはずでしょ?なんだったらここで脱いで女だって証拠見せましょうか?」
何だか入ってきてからの先生たちの対応にイライラしたせいもあり勢いに任せて制服に手をかけリボンを外し、ボタンに手をかけひとつ目のボタンを外し、ふたつ目のボタンに手をかけた時に止められた。
「ちょっと、住吉先生!!女子生徒に何やらしているんですか!!」
さっき俺の事を疑っていた加藤先生が止めにはいる。
「・・・あ」
俺の動作は加藤先生に止められ、固まっていた住吉先生が小さく声を漏らして動き始めた。
「わ、悪かった。疑ってすまん。頼むからそれ以上はやめてくれ。」
「わかってくれるならいいです。」
そしてボタンを閉めて改めて慣れないリボンを苦労しながらつけた。
「住吉先生どういう事です?双葉蒼は現在入院中のはずでは?それに彼は男子ですよ。」
加藤先生はどうも何も知らなかったようだった。そうかだから普通の女子生徒みたいに扱われたのか、と言う事は一応女子に見えるってことだ。ここでもちょっと安心した。
「加藤先生、今日これからの職員会議で説明します。その為に今日は双葉にこの時間にきてもらったのです。」
そう言う事かまだ他の先生達には説明していないのか。
「双葉。ちょっとこっちにきてくれ。」
「はい」
そう言うと、「詳しくはまた後で」と加藤先生に伝え、俺は住吉先生の後をついて職員室から校長室に移動した。
住吉先生がドアをノックした。中から「どうぞ」と返事がありドアを開けて中に入る。
いきなり校長室にきたので緊張する。ドアの前で立ち尽くしていると住吉先生に呼ばれた。
「双葉、そんなところに突っ立ってないで中入れ。」
呼ばれて返事をしつつ慌ててあたまを下げつつ中に入る。
「片桐校長、彼・・・あ!いや、彼女が双葉蒼です。」
そう言うと片桐校長はこちらをみた。
普段はあまり接点が無いからわからないけど、女性で校長しているぐらいだからおっかない人かと思っていたけど、優しくこちらを見ている。
「そう。あなたが双葉蒼さんなのね。いろいろ大変だったわね。困ったことがあったらなんでも遠慮なく言って頂戴。この後他の先生達に説明しますが、今まで通りとは行かないとは思いますが、困らないように協力してもらうようにお願いします。安心して学校はあなたの味方よ。」
安心した。校長先生は、俺を理解してくれているようだった。これなら少なくとも先生達には拒絶されないですみそうだ。
「ありがとうございます。」
素直に感謝の言葉が出た。それを聞いて校長先生は優しく頷いていた。
「住吉先生、職員会議を始めて頂戴。始まって少ししたら私と双葉さんと説明に行きます。」
そう言うと住吉先生は「わかりました。先に会議始めています。」と言って校長室を出て行った。
出て行くのを確認すると校長先生が話しかけてきた。
「さて、幾つか質問させてね。」
何だろうと思いながら頷いた。
「その前に、これだけは頭に入れて置いてね。双葉さんが学校にくる様になれば最初の内は少なからず他の生徒は混乱するはずです。我が学校にそういった生徒はいないと思いますが、もしかしたらいじめに発展することもあるかもしれません。だからこそ双葉さんの努力や覚悟必要になります。」
真剣な表情で語りかける校長先生を見つめ唾を飲み込む。努力と覚悟・・・どんな努力?どんな覚悟?これからの生活はやっぱり大変なのだろうか・・・身体が緊張する。
そんな俺を見ながら校長先生は話を続けた。
「双葉さんは女子として生活をして行かなければならないのは当然ですが、今後体育などの着替えなどはどうしますか?」
「え・・・」
着替え・・・身体は女になったとはいえ男としての感覚がなくなったわけでもない。
女子と混じって着替えるなんて出来るのか・・・
「どうしていいかわかりませんか?そんなに難しく考えないでも大丈夫ですよ。方法は二つ、女子と同じ様に一緒に着替えるか、双葉さんだけ別なところで着替えるかです。私としては早く慣れて欲しいと思いますから一緒に着替えて欲しいと思っています。最初は嫌がる生徒もいるかもしれませんが、双葉さんの姿をみれば納得するはずです。どこをどう見ても完璧な女性ですからね。言葉使いはちょっと問題かもしれませんけどね。」
校長先生の言っていることはわかるけど、自分が一緒着替えるのは恥ずかしい。でもこれが努力と覚悟なのかな。みんなとは早く馴染む為にも一人でコソコソしていたらダメだよな。
「言葉はなかなか直らないかもしれないですが気をつけます。着替えなどは女子と一緒にお願いします。最初は恥ずかしいかもしれませんが早くクラスのみんなといままでと同じ様になりたいので、頑張ります。」
校長先生はそれを聞いて安心した様に頷き、優しい笑顔を作ってくれた。
「双葉さんの気持ちわかりました。その気持ちを忘れないでね。学校としても普通の女子として扱う様にします。でも、慣れないことやわからないこともあると思います。そんな時は遠慮なく、私でもいいですし、女性の身体の事についてなら保険医の神保先生に相談しなさい。話はしてあります。」
そういえば、入院前にそんな話をしていたな。わからない事も多いからそんな時は相談出来るのはありがたい。
「わかりました。何かあったら相談します。」
「双葉さんがそう言ってくれて良かったわ。頑張りなさい。気持ちをしっかり持てばすぐにいつもの生活になれるからね。」
協力的で何だか怖いくらいだ。とはいえ、まずは生活に慣れてその先の事はまた後で考えよう。今はどうなるかわからないし問題が起きてから悩む事にしよう。
「そうだ。質問もう少しいいかしら、今の身体は医師の検査受けたのよね?」
「退院の前に沢山の医者にくまなく検査せれました。」
検査の時を思い出して思わず眉間にシワがよってしまった。
「何かいやな事でもあったの?」
「いやな事というより、検査がとても恥ずかしくて辛かったんです。」
「そうだったのね。大変だったわね。検査の結果はなんて?」
「間違いなく、女性だそうです。子供を生む事も可能と言われました。」
「そうなのね。では生理とかは?」
「まだきていません。母にはいつ来てもおかしくないからと準備はさせられています。」
「これからいろいろ大変だわね。いっぺんに受け入れようとせず、ゆっくり受け入れて行けばいいから辛い時は遠慮なく相談しなさいね。特に生理は個人差があります。きつい時など動けなくなる人もいますので遠慮はいらないわよ。」
俺は「はい」と答え、それ納得したのか校長先生は頷き「先生達に紹介するから職員室の方に行きましょう。」と俺を促し校長室を出た。




