第二十話
ショッピングモールについて、すぐさまランジェリーショップに向かった。そこは予想以上のきらびやかな世界だった・・・
黒、白、赤はもちろんパステルカラーが色とりどり並んで、セクシーな物から可愛いフリフリな物までどんなタイプの物もそろっているようだった。男物といえば、トランクス、ボクサータイプぐらいでカラーもそれほど多くない。それに慣れていたのであまりの下着の数に圧倒されてしまった。
そんな俺をよそに母さんは店員さんを捕まえて連れてきた。
「店員さん、この子なんだけどサイズ測ってもらえるかしら。急に大きくなったからサイズがわからなくてお願いします。」
「わかりました。こちらにお越し下さい。」
そう言われて、店員さんの後をついて行き試着室まで行き、試着室の中でサイズを測られた。
「えーっと、今何歳?」
何でそんな事を聞かれたのかわからないけど、取り敢えず答えた。
「中学三年の十五歳です。」
「まだ、中学生か・・・羨ましいサイズよ。男の子の目線が大変でしょう。」
目線?何の事だろうか。意味もわからずキョトンとしていると店員さんが話してきた。
「目線・・・感じた事ないの?」
俺は素直に頷いた。実際女になってからずっと病院にいたから男の目線なんて気が付くこともなかった。
「そうなの?それじゃ周りの男の子達はホモの人ばかり?」
「えっ!?そんな事ないです!!」
翔太の顔が浮かび、やつは断じてホモではない。慌てて否定する。男なら翔太ならこの胸なら見るかな、自分だったらコソコソ見るかもしれない。取り繕うように言い訳をした。
「俺、ずっと入院してたからあんまり外出た事無くて男子とあまりあった事ないから・・・」
これで男の目線なんて気が付くこともなかった。とっさの嘘にしては上手く喋れたし理由にはなるだろう。納得してくれないとうちのクラスがホモって事になってしまう。とは言えそれでもいいか。大体この店員さんに俺の周りにいる男がホモって事になっても何の被害もないよな。
「そうなのね。じゃあんまり自覚ないかな。」
そういいながら俺の胸のサイズを測っていった。そして暗号文のような言葉を聞いた。
「アンダー65、トップ83でD65ですね」
何だその数字の羅列は?アンダー?トップ?謎の数字を聞いて呆気に取られていると店員さんが
「どうしたの?胸の大きさに驚いた?これだけ綺麗な胸はそうそう無いから自信持っていいわよ。」
店員さんはどうやら勘違いしているようだった。俺は胸の大きさと言うより数字が何を意味してるのかわからないので困っているのだけど・・・
「はい、ありがとうございます。」
取り敢えず、お礼を言って脱いだ物を着込んだ。
更衣室を出ると母さんが待ち構えていた。
「蒼!!ずいぶんと立派な物を持っているのね。母さん驚いたわよ。」
興奮しながら母さんが話してきたが、イマイチピンとこないので先ほどの暗号の意味を聞いて見ることにしてみた。
「ねぇ母さん。」
「なに?」
「店員さんにアンダー65、トップ83、D65って言われたんだけど、どう言う事?」
「蒼は・・・あなた測られたんでしょ。それでわからない?」
呆れたようにため息を吐きながら教えてくれた。
「蒼は、学校で身体測定はした事あるでしょ?」
「もちろんあるよ。測定の度に身長がほとんど伸びてなくてガッカリしていたけど・・・」
「まあ、身長は仕方ないとして胸囲を測ったりしたでしょ。」
確かに胸囲は測っていた。なので頷く。それを見た母さんは話を続けた。
「男子の場合は一カ所図るだけだけど、女子の場合は二カ所測るのよ。胸囲の一番細い部分をアンダー、一番太い部分をトップと言って、そしてアンダーとトップとの差が大きいほどカップが大きくなるのよ。蒼の場合は、Dカップだからその年齢と身体の細さからしたらとても大きい胸だと思うわよ。母さんは中学生の頃なんて卒業寸前でやっとBカップになったぐらいだからね。アンダー65は、一番細い部分が65センチでトップ83は一番太い部分が83センチそしてアンダーとトップ差でカップの大きさが決まるの。蒼の差だとD65と言ってDカップになったってことよ。」
母さんがまくしたてるように説明してくれた。胸一つとっても奥が深い。でも、母さんの説明のおかげて意味が理解できた。おまけに母さんの中学生の時の胸のサイズ情報を何気無く手に入れてしまった。まあ、何かの役にたつとは思えないけど・・・
それからは、母さんが俺の身体にブラジャーやらパンティやらを当てがいながら選んでいく。母さんが選んだのはパステル系のグリーンやらピンクやらブルーのカラフルな物を幾つが選びてに持っていた。
「サイズは合わせてあるけど、一応試着してみてフィットするか確認するから」
母さんに渡された物を見るのをためらいながら受け取り又試着室に入った。服を脱ぎながら男の俺が何でこんなことしてるんだろうかと気持ちが落ち込んできた。そんな気分を無視するかのごとく母さんがカーテン越しに話しかけてきた。
「どう?きてみた?」
俺は慌てて下着つけて答えた。
「着けてみたよ。」
「どんな感じ?取り敢えず中に入るわよ」
そういうと外から見られないように素早く母さんが試着室の中に入って来た。
「ちょ、ちょっと母さん!何入って来てるんだよ!」
「どうせ、蒼が自分で着けても正しくなんか着けられていないでしょ。私が整えてあげるから任せなさい。」
そういうと母さんは折角着けたブラジャーを外してしまった。
だいぶ慣れたとはいえ、やっぱり家族といえ、見られると恥ずかしい・・・
何されてれいるのだろうか・・・目まぐるしく動いて行く事にだんだん頭がついて行かなくなりそうだ・・・
そんな沈んだ気持ちをまったく無視をされて、母さんのブラジャーの付け方のレクチャーをたっぷりと聞かされ、着け方を覚えさせられた。
「取り敢えず着け方はこんな感じね。何回も練習して覚えるのよ。ちゃんとしないとすぐ形崩れて自分が後悔する事になるからね。」
「・・・わかったよ。ちゃんと練習します。」
どっと疲れを感じながら答えた。
その後は、何種類も試着して無事に普段用、学校用と何故か勝負下着用まで買う事になった。
「まあ、取り敢えずこれだけあれば当分は大丈夫だから、後はもし自分で欲しい物があったら母さんに言いなさい。買ってあげるからね。」
母さんはにこやかに俺に対して言ってきたけど、これだけあれば必要無いのではと思ってしまう。
「ありがとう。母さん。でもこれだけあれば大丈夫だよ。」
「そう?ならいいけど、欲しくなったらいつでも言いなさいよ。高級なのは買ってあげられないけど普通なのは大丈夫だからね。」
こうして大量の下着を買う事になった。その下着をレジに持って歩いていると何かを思い出したように母さんが立ち止まった。
「どうしたの母さん?」
「一つ忘れてた。生理用のパンツ買わないと。」
「せ、生理用?!」
言葉はもちろん知っている。それは自分には関係な物だと思っていた。だけど・・・そうだよ俺はもう女・・・
「まだ生理用っていらないでしょ?」
「なに言ってるのよ。普通はもうとっくに始まっているの。大体の子は小学生の内に始まる物なの。蒼の場合は突然その身体になったからいつ始まってもおかしくないのよ。だからいつ始まっていいように用意しておくのよ。わかった?」
そうか・・・いつ始まってもおかしくないのか、なんか怖いなぁ・・・次から次へと許容し難い事ばかりだな、耐えられるかな俺。
「うん・・・大丈夫かな?わかったけど怖いよ。俺耐えられるかな。」
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。女子はみんななる物だからね。すぐ慣れちゃうわよ。」
そう言うと店員さんに生理用のパンツ場所を聞いて何枚か地味な色の今しがたまで選んでいた物より明らかに布の量が多い物を持ってきた。これが生理用の・・・
生理なんてこない事を願うばかりだ。無理なんだろうけど・・・
「さあ、これで下着関係はオッケーね。もうこんな時間か、蒼そろそろお腹空かない?ご飯にしようか。」
下着を見て回る行為が思いのほか疲れた。だから取り敢えず一息つきたかった丁度良かった。
「そうだね。そうしようよ。」
そうしてフードコートに行って思い思いに好きな物を食べて一休みをした。




