第十九話
病院から退院した翌日。解離性同一性障害のことはあるが、当面の問題として服が無い・・・
そこで買い物に行く事になった。
なにせ今家にある自分の洋服と下着は男だった時のものばかり、女物なんて全く持っていないし、身長も体重一回り小さくなってしまいサイズが全く合わなくなってしまった。まあある一点を除いてだけど・・・その一点いや双峰だけは・・・見事に自己主張しているわけで・・・
学生服も、もちろん女性物を持っている訳もなく、当面の洋服や下着や学生服などを買い行くのだ。
取り敢えず母さんが入院中に目見当で買ってきてくれた下着を着け、これが最初のうちは丁度よかったのだが今は合って無くて結構苦しい。母さんにそれを言うと「あら、また育ったの?予想をはるかに超える成長だわ」なんて嬉しそうに言っていたけどこっちはキツイのを我慢してつけているのに・・・。その上に自分で持っている服の中で大きいけど、Tシャツを着てウエストがゆるゆるなハーフパンツをはいてウエストの紐をしっかりと締めてみた。
鏡で確認するとTシャツが思いのほか大きくてみた目ロングTシャツみたいに見える、肩幅もあっていないのでTシャツの首元がずれて鎖骨が見える・・・妙にセクシーに見えて自分の姿に鼓動を早くしてしまった。
「と、取り敢えず、これでいいだろう」
自分を納得させて部屋から出てリビングに向かった。
リビングには、父さんと母さんが揃ってソファーに座っていた。
「準備できたよ。」
そう声を掛けると、母さんが自分の姿をみて肩を落としていた。
「・・・もう少し女の子っぽい服はなかったの?」
力なさげに言ってきた。そうは言われても女の子が着るような服があるわけないじゃないか・・・元々服装なんて気にした事もないのに・・・
「そんな事言われても・・・どれも似たような物になっちゃうよ。他は男物ですよって感じの物しかないしこれが精一杯だよ。」
「まあ、仕方ないわね。それでいいわよ。どうせ今日だけのカッコだし、お母さんがしっかりコーディネートしてあげるわよ。」
最初は一人で行こうと思ったけど、何をどうしていいかわからない。特に下着はまったく未知の世界なので母さんについてきてもらい一緒に買い物をする事にしていたのだ。母さんはすっかり乗り気になっていた。そこに父さんがこちらに話しかけてきた。
「と、父さんも一緒に行こうかな?」
「えっ!父さんも行くの?」
父さんもくるなんて思ってなかったから驚いた。そんな反応を他所に母さんがピシャリと父さんを斬り捨てた。
「お父さんは駄目!!蒼の下着なんかも買うんだからそんなの見せられるわけないでしょ。お父さんは留守番よろしくね。」
父さんはがっくりとうな垂れてしまった。しかし父さんてこんな感じだったっけ?妙に優しいしやたらとスキンシップをしてくるし男の時とえらい違いだよ。父さんは男はこうあるべきとか女は守る物だとか俺に結構厳しかったのに・・・
結局、その後も父さんは母さんに頼み込んでいたけど一言、「駄目!!」と言われて留守番になった。
俺と母さんは寂しそうな父さんをおいて一緒に家をでた。
「蒼とこうして一緒に買い物できるなんて母さん嬉しいわ。」
「それは良かったよ。自分で何を買っていいかわからないからとりあえず母さんが選んでよ。」
「うーん、つれないわね。せっかくなんだから楽しく選ばなきゃね。ずっと息子だったから、蒼がいずれ誰かと結婚したらお嫁さんと一緒に買い物をするのを楽しみにしていたけど、こうも早く本当の娘と買い物をできる日がくるなんて幸せ。」
すっかり母さんは俺を娘として受け入れてしまっているようだった。それどころか男の時より嬉しそうにしている気がする。俺の戸惑いが阿保らしくなるくらいに・・・
「で?母さん。まずはどこに行けばいいのかな。」
「そうねぇ。まずは下着ね。女の子は、見えないところにもしっかりと気を使わないと駄目よ。身体にちゃんとフィットした物を選んで付けないと折角のボディラインが崩れたりして大変よ。これは若いうちからやらないと年取ってから苦労するからね。つけ方とかも後でちゃんと教えてあげるから覚えてね。」
うわぁ・・・いきなり下着からだって出来れば一番最後が良かったなぁ。自分でつける物だとわかっているけど・・・今まで見たくても見ることのできなかった女の子しか入れない所に入るかと思うと心臓の鼓動が早くなるのがわかった。そんな俺をよそに行く場所が決定した模様だった。
「いろいろ買うから、電車に乗ってショッピングモールに行きましょ。あそこならかわいい洋服のお店もあるし、下着の専門店もあるし、お腹が空いたら美味しい物食べましょ。」
一連の流れを決めた母さんに俺は覚悟を決めて母さんに任せる事にした。
「了解です。よろしくお願いします。」
「まーかせなさい!!しっかりとコーディネートしてあげるわよ。」
母さんに押され気味にショッピングモールに向かった。




