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蒼と葵  作者: よしくん
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第十三話

「だれだおまえは・・・」


聞こえた声の主に対して語りかける。しかし先ほどの時と同じでまったく気配がない。

突然自分があらぬ方向に喋ったものだから看護師さんは驚いたようだった。


「え・・・どうしたの?誰のこと?」


看護師さんは驚いたようにまわりを見回した。


「看護師さんはきこえませんでしたか?『わたしの身体なんだからね』と聞こえたんです。」


看護師さんは目を何度かまばたきさせて、不思議そうに答えた。


「わたしには何も聞こえなかったよ。気のせいじゃないかな?」


確かに聞こえたはずだけど・・・

看護師さんには聞こえなかったみたいだった。という事はやっぱり幻聴なのかもしれない。


「まだ、身体が回復してないから情緒不安定になってるのかもね。兎に角、まずは身体をちゃんと回復させてからよ。そうしないと学校行くどころか、退院すらできないわよ。」


そうだよな。まずは身体を元気にしないと何もできないから、落ちてしまった体力を戻さないと。と軽く決意を固めた時にふと大事な事を忘れているような気がしてきた・・・なんだっけ?悩んでいる俺の考えを中断するように看護師さんが話しかけてきた。


「そうだ。蒼くんお腹好かない?一応昼食があるんだけど食べるなら持ってくるよ。しばらく何も食べて無いからあんまり豪勢な食事じゃないけどね。」


「何だかお腹が空いてなんでもいいから食べたいです。」


「わかったわ。ちょっと待っててね今持ってくるから。」


そう言って看護師さんは部屋を出て行った。それからしばらくして看護師さんが食事を持って戻ってきた。


「お待たせ。急に食事取ると身体が受け付けないから、お粥になるけど、慌てないて時間をかけて食べてね。順調に行けば明日の夜ぐらいから普通の食事になるみたいだから我慢してね。」


そう言うと看護師さんがベッドの上にテーブルを出してくれてその上に食事をおいてくれた。

それは本当にお粥だった・・・

ちょっと寂しい食事だけど兎に角今は何かお腹に入れたい。


「いただきます。」


「どうぞ。慌てないで時間かけるの忘れないでね。」


そしてスプーンを手に取りお粥をすくって口に運ぶ。それが意外にも美味しかった。自覚はないけど10日ぶりの食事だからなのかもしれない。ゆっくりとそれをたいらげ、満腹とはいかなかったけど空腹感はなくなった。


「ご馳走様でした。」


俺はスプーンを置き、看護師さんに向かって言うと看護師さんは「お粗末様です」と返してくれて続けて聞いてきた。


「何か困ったことある?わからない事はなんでも聞いてね。」


そう言われて、急に尿意が襲ってきた。トイレに行きたいのだけど・・・ちょっと恥ずかしいが女の子の正しいやり方がわからない。男が大きい方をする時と一緒でいいのだろうか・・・恥ずかしさに顔が赤くなる。ここで漏らす訳にも行かないので恥ずかしさを我慢して看護師さんに聞いてみた。


「早急の問題といいますか・・・トイレに行きたいのですが、女の子ってどうやってするのかわからないんです。」


「わたしも男の人のしているところをを見たこたないから違いはわからないけど、普通に男の人が座ってするのと同じだと思うよ。そうね。終わった後にウォシュレットのビデを使って洗浄してからトイレットペーパーで優しく拭き取れは大丈夫よ。それから、大便の時はお尻の方から拭かないとダメよ。前から拭くと大事な所が不衛生になるからね。」


「わかりました。ありがとうございます。」


意外にもトイレ一つでもいろいろと守らないといけない事があるんだな。忘れないようにしないと・・・


「あと、女の子は男の子違ってトイレは長く我慢できないから注意してね。男の子の時みたいに我慢すると漏らしたりするかもしれないからね。」


うわぁ、そうなんだトイレは小まめに行くようにしようっと。漏らしたりしたら恥ずかしいから・・・


「気を付けます。早速トイレに行ってきます。」


ゆっくりと起き上がりベッドから脚を下ろして身体を両足で支えて立ったが足にうまく力が入らず、ふらついてしまった。つかさず看護師さんが身体を支えてくれて


「まだ、歩くのは危ないかな。車椅子を持ってくるからちょっと待っててね。」


そうして持ってきてくれた車椅子に座り自力で行こうと思っていたけど、「遠慮しないの」と看護師さんが後ろから押してくれた。


あまり力が入らない足に苦労しながら下着を下げて便座に座った。ふと下着に目が行くと下着が女物だった。


「な、なんで女物???」自分が女物を履いているとも気がつかずびっくりした。


でも、冷静になれば自分は今は女性なのだから当たり前か・・・そして人生で始めて座ったまま用をたした。

今まで存在していて今は無くなってしまったものの付け根のあたりから出てくる様子は何とも不思議な感じだった。恥ずかしくて直視する事ができなかったけど・・・


スッキリした自分はウォシュレットのビデで洗浄して、これが思いのほか気持ち良かったのには驚いた。ちょっと癖になりそうかも・・・そして恐る恐る濡れた場所をトイレットペーパーで拭いて下着を履き直して個室を出てまた車椅子に座りトイレを出た。


「どうだった?始めてのトイレは?問題なかった?」


「ちょっと不思議な感覚でしたけど、大丈夫でした。まだ、恥ずかしいけど・・・」


「大丈夫よ。毎日の事だからすぐ慣れるわよ」


「確かにそうですね。」


そう答えながら思った。こんな恥ずかしさはじきに慣れてしまうのだろう。そして女になって行くのかな・・・

ちょっとの悲しさと今後の不安を感じながら病室に戻った。

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