第十二話
「10日間で女性化したと先生は言っていたけど、それは間違いじゃないけど表面的には三日前に突然女性化したのよ。表現するならあたかもサナギから美しい蝶に生まれ変わるように・・・」
「・・・どういうこと?」
イマイチ意味がわからなかった。俺がどういうことか考え込んでいると・・・
「遠回し過ぎたかな?簡単に言うと蒼くんは脱皮したのよ。」
「脱皮?あの蟹とかザリガニどか蛇とかが成長するためにする脱皮ですか?」
「そうよ。信じられないかもしれないけどそれが真実。」
てっきり徐々に女性化したと思っていたけど、脱皮して女性化とは、予想を上回る変化の仕方をしたのだと改めて驚いた。
「先生はさっき説明してくれたのはこの10日間での蒼くんの命の状態と行動だけでしょ。どうやって女性化したのか説明してなかったでしょ」
「確かにそうでした。」
「意識が戻った時にあまり立て続けてショックを与えても良くないから女性になった事実だけを伝えたのよ。」
「そうだったんですか。」
そう言って事細かに状況を説明してくれた。
「順序だてて説明すると、蒼くんが運ばれてきてすぐに疑われたのが女性化が始まったのではないかということ。それでMRIやエコー検索、触診などの検査を行ったの。最初の検査ではまだ大きな変化はなかった。ただ蒼くんの髪の毛を含めて体毛が全て抜け落ちてしまったの。」
「禿げちゃったですか・・・また生えてきて良かったぁ・・・」
いまはしっかりとした髪の毛があり、禿げてなくて安心した。女の子になって禿げてちゃ悲しいもんな・・・
「抜け落ちてからしばらくすると今度は皮膚が血の気が引いた様に白っぽくなってきたの。それで再度MRIやエコー検索などしたら驚くことに皮膚のした真皮のさらに下に皮膚組織が新たにできていたの。それも全身にね。ちょうど蒼くんが蒼くんの着ぐるみを着ているような状態かな。それに合わせるかのように骨格が身体の中で小さくなっていったの。今の蒼くんは身長は運ばれてきた時より10センチ近く低くなってるし体重に関しては極度に低くなってるから。」
確かにこの身体をみれば体重は減っていることはわかる。身長も低くなってるとは・・・だからなんか感覚が違ったのは・・・
「で、これは先生の予測なんだけど、蒼くんの身体の表面に男の部分が押し出されて、その中で女性の身体に再構成されたのでないかと、その再構成の為に大量の熱を作り発熱したんじゃないかと思っているみたいよ。」
という事は俺は男を脱ぎ捨てて女になったって事なのか。何とも潔いい身体だ。自分の身体なのに感心してしまった。
「それと、蒼くんの身体は、今とても骨とかがもろくなってるから走ったり跳ねたりしてはだめよ。」
「どういう事です?体重が落ちたからですか?」
「それが一番の原因だと思うけど、再構成の際に骨のサイズが変わったりして作り直したばかりだからまだ完全に骨が出来上がってないのよ。骨の密度がお年寄りみたいになっていて今は骨がもろい状態だから気を付けてね。」
「・・・そうなんですか。わかりました。気を付けます。」
まったく不思議な身体だ。男から女になっただけでもびっくりなのに身体の中でも大きな変化があったなんて、なんかまったくの別人の身体に入り込んでしまったように感じだ。
そう思った時だった。
『わたしの身体なんだからね。』
また声が聞こえた。




