13-6:リアル世界(地下室)
(場所:地下室・特殊事案対応室)
バチチチチッ!
霧島さんが睨みつける大型モニター。
そこには、ノイズまじりに映る、大手町のサーバールーム。
そして、赤く発光し、今にも爆発しそうな「物理サーバー」の姿が、映し出されていた。
『ボス! ダメです! 物理サーバーが臨界点を突破! 冷却システム、制御不能!』
インカムから、プログラマーの絶望的な悲鳴が響く。
「……チッ」
霧島さんは、奥歯をギリリと噛み締めた。
詩織は、トランス状態で「ワクチン」の“翻訳”を続けている。
愁の“肉体”は、ダイブしたまま、ピクリとも動かない。
「――万事休す(ばんじきゅうす)か……!」
霧島さんが、この作戦の「失敗」を認めかけた、
その、瞬間だった。
「……あ」
声は、地下室の隅からした。
装甲バンのシートに座らせていた、高円寺 亜美だ。
彼女は、この絶望的な戦いを、ただ、震えながら見守っているだけだった。
いや、
見守っていた“だけ”じゃ、なかった。
「あ……あ……」
亜美は、ガタガタと、全身を痙攣させたように震えながら、モニターを指差した。
その「目」は、モニターに映る「黒煙を上げるサーバー(=黒幕が苦しめているモノ)」に、釘付けになっていた。
(第12章で「回線」が開きっぱなしになった亜美)
そうだ。
彼女には、俺たちとは“違う”モノが「見え」、「聞こえて」いた。
「やめてっ……!」
亜美が、叫んだ。
「その“音”……! 聞こえる……!」
彼女が聞いていたのは、サーバーが発する物理的な高周波ノイズじゃない。
あの「呪いのOS」を通じて、ネットワーク全域に垂れ流される、「悪意」と「恐怖」の断末魔!
「みんなの“悲しい声”が……!」
「『助けて』って……! 『苦しい』って……!」
「やめてよぉぉぉぉっ!」
それは、何の力もない、ただの少女の「叫び」だった。
呪術じゃない。
霊力も込められていない。
ただ、純粋に「やめて」と願う、「拒絶の祈り」!
だが!
その「祈り(さけび)」は、
彼女の、開きっぱなしになった「回線(ルート)」を通って!
ビュウウウウウウウッ!!
ネットワーク(霊的回線)を、“逆流”した!!
黒く淀んだ「呪い」の濁流に対し、
一本の、純粋な「光」の矢が、
凄まじい速度で、その“発生源”に向かって、突き進んでいったのだ!




