13-3:電脳世界(玄の“仕事”)
「ここが……“江戸OS”……!」
俺が呆然と呟く、この「燃える江戸」。
その地獄絵図が、俺という「異物」を認識し、一斉に牙を剥いた。
『『『ギシャアアアアアアアッ!!』』』
魑魅魍魎の群れが、怨霊武者の大群が、データの津波となって、俺(玄)に襲い掛かってくる!
(クソッ、キリがねえ!)
俺が咄嗟に蒼い霊力で“壁”を作ろうとした、その瞬間。
(――ケッ! 邪魔だ、小僧!)
既に主導権を握っていた玄さんが、俺の意識を、強引に“後部座席”に押しやった。
(やっと“身体”が馴染んできたぜ)
(玄さん!)
(よく見とけ。ここは「精神」の世界だ。お前の脆弱な“肉体”という“枷”がねえ!)
(!)
次の瞬間。
俺の「精神体」の主導権は、完全に玄に切り替わった。
ドンッ!
俺(玄)は、地面を蹴った。
(速ええ……!?)
俺は、自分の身体の“動き”に、心底ビビった。
現実の俺の肉体じゃ、絶対に出せない速度と、キレだ。
まるで、物理法則を無視したかのように、魑魅魍魎の群れに突っ込んでいく!
(当たり前だ! 霊体ってのは、こうやって“仕事”すんだよ!)
目の前には、十体の怨霊武者(データ)が、鎖のように連携して壁を作っている。
(見えるぜ。“呪い”の“繋がり(チェイン)”がよ!)
俺(玄)は、その壁に突っ込むと見せかけ、その「隙間」を、蒼い霊刃となって“すり抜けた”。
シュバッ!
振り向かない。
ただ、手に宿した「刃」を、一閃させただけ。
『ギ……? ギギ……?』
十体の怨霊武者が、一斉に、時間差で、バグまみれのノイズになって崩れ落ちた。
奴らの「呪いの連鎖(=プログラム連携)」そのものを、“斬った”んだ。
『グオオオオオ!!』
奥から、一際デカい、五メートルはあろうかという鬼が、怨念の塊を投げてくる。
(図体がデカけりゃ、“核”もデカい!)
俺(玄)は、突進! 投げられた怨念(データ)を、最小限の動きで避けながら、その懐に潜り込む!
(そこだァ!)
ズドンッ!
怨念が渦巻く、胸の“中心”。
その“怨念の核”一点だけを、蒼い霊気を集中させた「貫手」で、“突いた”。
『ギ……イイイイイイイイ!?』
鬼は、声にならない悲鳴を上げ、その巨体を維持できず、まるで不良データが消去されるように、足元から「0(ゼロ)」と「1(イチ)」に戻っていく。
これが、玄さんの“仕事”だ。
魑魅魍魎を、次々と「仕事」していく。
(ケッ! 歯応えがねえ! 所詮は“写し”か!)
(すげえ……! これが、鬼神の、本物の「殺し」……!)
俺が、その圧倒的な“技術”に呆然としていると、
俺(玄)は、残りの魑魅魍魎の群れを睨みつけながら、吐き捨てた。
(だが、小僧! 埒が明かねえ!)
(え……!?)
(どんだけ斬っても、キリがねえぞ!)
そうだ。
一体「デリート」しても、燃え盛る町の奥から、次の「バグ(敵)」が無限に湧いてくる。
(霧島の言ってた“ワクチン”とやら、どうなってやがる!)
(詩織の“通訳”は……!)
現実の“時限爆弾”が、すぐそこまで迫っていることを、俺たちは、まだ気づいていなかった。




