13-2:リアル世界(霧島・黒幕サイド)
(場所:大手町・金融中枢ビル 最深部)
(時間:愁ダイブと、ほぼ同時刻)
シン……と静まり返った、巨大なサーバールーム。
「システムダウン」を示す無数の赤いエラーランプだけが、不気味に点滅している。
そこに、あの黒いコートの男が、悠然と立っていた。
奴は、日本経済の“心臓”と呼ぶべき、物理サーバーラックの群れを、愛おしそうに見つめる。
「……仕上げだ」
男は、その“心臓”の一つに、そっ……と手をかざした。
ジュウウウウウウッ!!
黒い呪力が、まるで強酸のように、男の手からサーバーラックに侵食していく!
バチッ! バチチチチッ!
物理的な火花が散り、内部の精密機械が焼け焦げる、黒い煙が上がった。
デジタル(呪い)でシステム(OS)を殺し、物理でハード(心臓)を焼く。
完璧な「詰み」だ。
(場所:地下室・特殊事案対応室)
「……!」
ダイブしている愁の身体と、詠唱を続ける詩織を守るように立っていた霧島さんが、壁の大型モニターを睨みつけ、鋭く息を呑んだ。
そこには、大手町の、唯一かろうじて生き残っていた監視カメラの映像が、ノイズまじりで映し出されていた。
ザザッ……ピー……!
ノイズの向こう側に、黒い人影。
物理サーバーに手をかざす、あの黒幕の姿を、ハッキリと捉えていた。
「(舌打ち)――チッ! マズい!」
霧島さんの、本気で焦った声が、地下室に響く。
「あの野郎……! デジタル(呪い)でシステム(中枢)を弱らせて、物理で“心臓”を喰う気だ!」
(こ、こいつぁヤベェぞ!)
霧島さんは、ダイブして意識のない愁の身体に向かって、インカムを通して叫んだ!
(届くワケねえのに!)
「浅河! 愁!」
「ワクチン(コード変換)が、間に合わねえぞ!!」




