12-9:ダイブ開始
「……フン。言われるまでもない」
霧島さんは、そう言うと、運転手に「急げ」とだけ命じた。
装甲バンが、急ブレーキをかける。
到着したのは、見慣えのある、だだっ広い地下空間。
第6章(だい6しょう)で、俺が「テスト」を受けた、あの「特殊事案対応室」の地下サーバー室だ。
「急げ! 詩織、“隔離結界”を! 愁、“霊的デバイス”を装着しろ!」
霧島さん(きりしま)の号令が飛ぶ。
「(ハァ、ハァ……)“天元の清浄、地の結を固め”……!」
詩織が、最後の霊力を振り絞り、無機質なサーバーラックの一角に、青白い防護結界を張っていく。
俺は、その結界の中心に置かれた、むき出しのサーバーに、何本ものケーブル(霊的デバイス)が繋がった、ヘルメットのようなものを手に取る。
「(プログラマーに)仮想サーバー! 起動!」
『(インカム)ひぃ! ボス! “江戸OS”、解放します!』
(やるしか、ねえ……!)
俺は、亜美の、震える「手」を、もう一度、強く、握った。
そして、ヘルメット(デバイス)を、被る。
「(霧島)――ダイブ開始!」
「(詩織)――詠唱、開始!」
(玄)
(――おう)
「「“仕事”開始だ!!」」
「う、おおおぉぉぉぉぉっ――!」
俺の意識は、光も音もない「データ」の奔流に飲み込まれ、敵の「呪術データ」が渦巻く、電脳世界へと、ダイブした――!
(……一方、その頃)
東京・大手町。
金融システムの中枢ビル。
システムダウンと、ATM停止の「混乱」に乗じて、
警備システムが「霊的」に麻痺した最深部サーバールームに、
一つの人影が、侵入していた。
「……フン。ワクチン(データ)を解析する? 遅い」
あの、黒幕の男だ。
「“呪い(ウイルス)”は、もう、十分に“育った”」
男は、日本経済の“心臓”である「物理サーバー」の前に立つと、その手に、黒い呪力を溜め込み始める。
「――ここからは、“物理”で、仕上げさせてもらう」
俺たち(おれたち)が「デジタル」で戦おうとしている、その裏で。
黒幕は、「物理的な、最後の“破壊”」を、行おうとしていた。




