12-4:アナログな“苛立ち”
「いやぁぁぁぁッ!」
亜美の悲鳴が、装甲バンの狭い車内にこだまする。
(クソッ……! クソッ!)
俺は、何一つできない自分に、強く拳を握りしめた。
その時だ。
(――テヤンデェ! もどかしいッ!!)
脳内から、いつもの威勢のいい声が、今日は、本気で苛立ったトーンで響き渡った。
玄さんだ。
(訳の分からん“OS”だの! “こんぱいる”だの!)
俺が「OSが江戸」という情報に絶望していた時、俺は、別の理由でキレていた。
(何が「システム」だ! 何が「ネットワーク」だ! チマチマしやがって!)
(江戸ならあんなビル(大手町の中枢)に乗り込んで、黒幕の首を獲れば、ソレで済んだ話だ!)
玄さんの怒りが、俺の脳を直接揺さぶる。
彼の思考が、俺に流れ込んでくる。
――悪党のアジトに単身乗り込み、悪代官の首を、その刃で一刀両断にする、かつての「鬼神」の姿。
(だが、どうだ!)
玄さんの苛立ちは、頂点に達していた。
(あの黒幕の首を獲ったところで、このパニック(呪い)は止まらねえンだろうが!)
(“システム(しすてむ)”なんぞ、ワシの刃じゃ斬れねえ!)
(……!)
俺は、ハッとした。
そうだ。
これこそが、俺たちが直面している、最大の問題点。
(玄さん……)
俺は、心の中で(あるいは、うめき声として)、玄さんに返した。
「今は、相手が“システム”なんだよ……!」
「首を獲っても、もう呪い(プログラム)は止まらないんだ……!」
江戸最強の暗殺術。
それは、ネットワーク(デジタル)で増殖する「現代呪術」と、最悪なまでに相性が悪かった。
最強の「戦力」であるはずの玄さんが、敵の「土俵」そのもののせいで、完全に“詰んで”いる。
そして、俺の隣では、その「システム」が垂れ流す“悪意”に、亜美が苦しみ続けている。
俺たちは、どうしようもない「壁」の前に、立たされていた。




