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第11章:地下遺跡の“共闘”と大手町の“本命”4

11-7:時間稼ぎ


「チッ……!」


瓦礫の上から、黒幕の、本気で苛立いらだった舌打ちが響いた。


詩織が放った青白い光のデータは、もう見えない。


だが、あの「送信アップロード」が完了したことは、敵にも分かっている。


「……余計なことを。小娘ルーキーの分際で」


黒幕の男の声は、さっきまでの余裕が消え、底冷えのする「怒り」に変わっていた。


「だが、状況は変わらん。データ(ワクチン)が間に合う前に、大手町は落ちる」


「そして、お前たちは、その“朗報”を聞くことなく、ここで死ぬ」


男が、両腕をゆっくりと掲げる。


さっきまでの、指先で怨霊を操るような「遊び」じゃない。


本気だ。


「この江戸ちかに眠る、全ての“恨み”をくれてやる。――潰れろ、旧世代」


ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!


空気が、鳴った。


いや、この地下遺跡の空間そのものが、悲鳴を上げている。


「なっ……!?」


俺(玄)は、目の前の光景に絶句した。


「呪いの溜め池」が、沸騰ふっとうなんてもんじゃない。


爆発した。


怨霊うらみが、黒い津波となって、俺たちに襲い掛かってきたんだ。


一体一体が「人型」を保っていたさっきまでとは違う。


何百、何千という怨念が、泥流のように一つに混ざり合い、この地下空間すべてを飲み込もうとしている。


(こ、こいつぁ……!)


(冗談じゃねえぞ、オイ!)


この一撃(津波)を喰らえば、俺はともかく、背後で倒れている詩織と亜美は、ひとたまりもねえ。


怨念の泥に飲み込まれて、骨も残らねえぞ!


(玄さん!)


俺(愁)の意識が、身体のうちから叫んだ。


(このままじゃ、二人あいつらが死ぬ!)


(分かってらァ!)


俺(玄)は、荒ぶる霊力を無理やり押さえつけ、俺(愁)の意識に呼びかけた。


(小僧! テメェも見てるだけじゃねえ! 詩織の嬢ちゃんが命懸けで送ったデータだ!)


霧島むこうがワクチンを完成させるまで、何としてでも時間を稼ぐ!)


(息を合わせろ! 俺たちの“本当の力”を、あの外道げどうに見せてやるぞ!)


「……ああ、当たり前だ!」


俺は、俺(玄)の呼びかけに、意識こえで応えた。


「あの二人あみとしおりを……俺の仲間を、死なせるわけにはいかねえんだよ!」


――カチッ。


二つの意識が、完全に「同調」した。


まるで、バラバラだった歯車が、一つの意志で噛み合ったかのように。


「「オオオオオオオオオッ!!」」


ドォォォォンッ!!


俺の身体からだから、蒼い霊気が、これまでの比じゃない規模で爆発した。


それは、江戸の鬼神「玄」の荒々しい力と、現代の呪術師「愁」の精密な霊力が、完璧に融合した「第三の炎」だった。


「(詩織に詠唱の)時間稼ぎだと? ふざけるな!」


瓦礫の上から、黒幕が嘲笑する。


「お前たちが稼げるのは、せいぜい『死ぬまでの時間』だけだ!」


黒い津波が、俺たちに殺到する。


あと、数メートル。


「させるかァ!!」


俺(愁と玄)は、意識のない亜美と詩織の前に、仁王立ちになった。


両腕を、津波に向かって突き出す。


蒼炎そうえんの――“防壁ウォール”!!」


ゴウッ!


俺が突き出した両腕から、融合した蒼い炎が、巨大な「壁」となって現出げんしゅつした。


ズズズズズズズズズズ…………ッ!!


黒い怨念の津波が、蒼い炎の壁に激突する。


怨霊たちの断末魔の叫びと、俺の霊力がぶつかり合い、地下遺跡全体が激しく揺れた。


「グッ……! ヌゥウウ……!」


(クソッ、重い……! 重すぎるぞ、この物量!)


怨念の津波は、一瞬たりとも止まらない。


まるで、ダムの決壊だ。


俺の蒼い防壁ダムが、今にも押し破られそうに、ミシミシと音を立てている。


「ハハハ! どうした、鬼神! それで終わりか!」


黒幕の高笑いが響く。


「その小娘(巫女)が送ったデータなど、もう手遅れだと言っている!」


(うるせえ……!)


(手遅れかどうかは、オレたちが決める……!)


「玄さん!」


(おうよ!)


俺たちは、意識を同調させたまま、さらに霊力を引き絞る。


「“まもり”だけじゃ、ジリ貧だ!」


「攻めに転じるぞ!」


「“蒼炎連弾そうえんれんだん”!!」


俺は、防壁を維持したまま、片腕を怨念の津波(本体)に向かって突き出した。


ドッドッドッドッドッ!!


蒼い炎の弾丸(砲弾)が、防壁を突き抜け、津波の「向こう側」……怨霊を吐き出している「呪いの溜め池」の“中心核コア”に向かって、連続で叩き込まれる!


『ギイイイイイイイイ!?』


怨念の集合体が、悲鳴を上げた。


津波の勢いが、ほんの一瞬、弱まる。


「(ハァ、ハァ……!) これでどうだ!」


「……やるな。だが、小細工だ」


黒幕が、再び腕を振るう。


一瞬弱まった津波が、さっきよりも黒く、濃密のうみつになって、俺の防壁に再び襲い掛かってきた。


「グッ……! キリがねえ……!」


(マズイ、こいつの霊力が持たねえ!)


(いや、玄さんこそ! 完全に同調してる今、俺の霊力キャパが、玄さんの出力パワーの足枷になってる!)


このままじゃ、大手町あっちがワクチンを作る前に、俺たち(こっち)が全滅ゲームオーバーだ。


絶望的な物量つなみを前に、俺の防壁が、ついにヒビ割れ始めた、その時だった。


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