10-7:本当(ほんとう)の“敵(てき)”
「クソッ!」
俺は、目の前で苦しそうに呪詛をチャージする亜美と、彼女を“処分”すると言った霧島の言葉の間で、動けずにいた。
(どっちだ!? 俺は、どうすりゃいいんだ!?)
「――愁さん、退がって!」
俺の葛藤を見た詩織が、決断した。
彼女は、亜美(あmi)本体への攻撃を選ばない。
狙うは、亜美とサーバーを繋ぐ、目に見えない呪いの回線!
「断て、諸々(もろもろ)の穢れ! 祓え給え!」
詩織が、残った霊力を振り絞り、新たな祝詞を唱え始めた。
亜美を、呪いのシステムから切り離そうとしているんだ!
その、瞬間だった。
パチ、パチ、パチ……。
儀式場の奥。
サーバーラックが並ぶ、一番深い闇の中から、乾いた拍手の音が響いた。
「――そこまでだ、巫女」
冷たく、それでいて、どこか楽しそうな男の声。
俺も詩織も、玄までもが、ハッと息を呑み、声の主を探す。
「そいつ(亜美)はもう、“用済み”だ」
闇が、揺らめいた。
そこには、いつから立っていたのか。
黒い神主服のような、だが、どこか歪で禍々(まがまが)しい装束をまとった男が、立っていた。
(……こいつが、土御門の!)
男が、パチン、と指を鳴らす。
すると、あれだけ強力な呪詛を放とうとしていた亜美の体から、ふっと力が抜け、彼女はそのまま床に崩れ落ちた。
意識を失っただけらしい。
「亜美!」
俺が駆け寄ろうとするのを、男の視線が射抜いた。
「ハッ。まさか、ここまでお揃いとはな」
男は、俺たち(Bチーム)と、それからAチームが突入してきた(であろう)正面玄関の方向を、愉快そうに見比べた。
「“鬼神”(玄)に、公儀の犬(霧島)、そして玄夜の巫女まで」
男は、俺たち全員を敵に回しながら、一切臆することなく、腕を広げた。
「――わざわざ出向いてやったぞ。江戸の“やり残し”を、片付けにな」




